「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

最大級の不確定要素


CVTの耐久信頼性(2013.3)
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 実際の経験として、2000年に新車でおろした私の実家が乗っていた二代目フィアット・プントELXスピードギアは4年、5万キロほど走行したところでCVTベルトが破断。走行不能になった。修理代は60万円の見積もり。プントのCVTは富士重工製だが、なんと部品は一度イタリアに運ばれてから再度日本に輸入せねばならず、しかもフィアットジャパンはその時点で国内在庫を持っていなかった。実家のプントは二代目に変わってすぐにデリバリーされたクルマで、距離も他人様よりは伸ばしていたほうだった。担当ディーラーとしても初めてのCVTトラブルだったようである。しかし、それにしても国内在庫なしとは(!)


 CVTベルト破断の問題は、実はプントを買う前から知っていた。しかし「今度は大丈夫」と言われて買った。こいつが間違いだった。今度は大丈夫といわれても、その製品はまだ相応の距離、時間を経て信頼性をチェックされたものではない。メーカーがいかに何十万キロと走行テストをしたところで、それは開発期間中に大急ぎで行なっているだけのこと。クルマと言うのは短時間で距離を伸ばしても故障は発生しにくい。むしろ短時間に距離を稼いで信頼性の裏づけを取ろうとするその行為はクルマにとっては常に稼動していて潤滑が行き渡り故障が発生しにくい情況であるとも言える。


「今度は大丈夫」を信用してはならない。肝に銘じた。


 国産車でもCVTが本格的に普及し始めて10年といったところだろうか。むろんその前からCVT車は存在していたが、ドライバビリティが低かったことと価格が高かったことから普及には遠く及ばずにいた。ところがこの10年、ユーザーの心は「燃費」に大きく傾いた。そこでやはりというかCVTの登壇とあいなったわけだ。


 ここ10年の国産車のCVTは以前ほどトラブルの話は聞かない。わかりやすいところではトヨタがオーパや初代プレミオ/アリオンの2リッターから。日産だと二代目キューブのエクストロニックCVTあたりから。ちょうどそれらは車齢10年である。10年は持つという確信を得たからトヨタは採用してきたのだろうし、日産もトヨタと同じような事情と視ている。日本の二大メーカーがいかにして採用してくるかは、新技術の信頼性を推し量る上での一つの目安だ。しかし中古車屋によっては売り物件の説明欄に「安心の4速AT」などと書いている。まだまだ全幅の信頼というわけにはいかないか。


 アウディはちょうど10年前頃、A4の二代目にCVTを用いたが、これはすぐに引っ込めた。その直後にDSGというより信頼度の高くドライバビリティにもすぐれた代物を発明したからというのもあるだろう。DSGをはじめとするDCT群にトラブルの話はあまり聞かないが、アルファのセレスピードは壊れると分解できずにアッシー交換となるらしい。ま、イタ車はそれ以外の部分も信用できないところが多々あるにはある。ただ、フィアットの同様の機構、デュアロジックは分解修理が利くらしい。


 CVTを壊さない為には、といわれても実は困る。CVTはドライバーの意思に関わらず機械が勝手にプーリー比を変えてしまうため、トランスミッションへの負荷をドライバーがコントロールすることが難しい。また、コンディションを推し量るにも、異音が出ているかいないか、そして出ていたらそれは時既に遅しである。CVTもまた分解修理が困難なトランスミッションで、壊れたらまるごと交換が原則。だから修理代が高い。そしてその修理代が発生する頃にはメーカー保証も切れ、そのクルマの残存価値もそれなりに低くなっているから、そのクルマを潰すかどうかの選択になる。ある日突然。非情な話だ。ところが、いたぶるように乱暴に扱ったCVTでも同一車種ながら個体によっては耐えて壊れない代物があるのも事実。故にCVTの耐久信頼性とはきわめて大きな不確定要素なのだ。


 私が新車のリポートでもCVTより多段ATを推す理由がわかってもらえただろうか。しかしその多段ATとて10年なり10万キロなりを走ってみないとわからない。クルマはいつか走れなくなる。それが10年後か5年後かの違いはきわめて大きい。





前田恵祐


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