「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

その後の明暗を分かつ



 こうも長いこと新車ディーラー試乗をおこなっていると見えてくるものがある。それはクルマの善し悪しを判断する力であるし、同時に、営業マンの善し悪しもある。
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 クルマの営業というのは、客を口車に乗せる名人だとか、手ごわい人格だとか思われていた時代は過去のもので、いまや「つぶしの利く」人材を揃えているところが多い。とはいえ全般的に人材の入れ替わりは早いようで、つまるところすぐに辞めるヤツが多い職種であるところは不変のようだ。一年前に配属になった営業が既に辞めているなんてことはざらだ。


 それにはやはり営業成績至上主義がいまだにまかり通っているからに他ならない。しかし営業成績というのは上げようと思って上げられるものではない。客はその「数値主義」の片鱗さえ察知すれば即座に心を閉ざしてしまう。「買わされる」のは誰にとってもイヤなことだ。


 一方、売れる営業マンと売れない営業マンというのは歴然としている。売れるヤツはとことん売れて客の側からその営業を指名してくる。売れないヤツはとことん売れなくて、追っては逃げられの繰り返しに疲弊して、やがて辞めてしまう。


 売れている営業はとにかく余裕に満ち溢れている。月半ばでとうに営業目標は到達しているからあとはもう貯金生活のようなもの。だから押し売りはしないでいい。しかし売れないヤツはとにかく客を捕まえることに汗みどろになるし、その汗みどろなところを見た客はドン引きである。これではいつまでたっても売れることはない。その差はいったい何なのかと考えると、やはり人としての人徳とか、人望によっていることは間違いないだろう。売れている営業との別れ際は、なべて気持ちよい。「去る者追わず」が徹底している。それで十分やっていけるだけの余力がある。そして気持ちのよい応対の営業の元にはまた必ずといっていいほど客が帰ってくる。


 売れている営業から引き出せるものとは、なにも成績がよいからそのぶん値引き幅が大きくなるとか、そういう目先の利益だけではないことを知っておくべきだ。売れている、即ち場数を踏んでいる人というのは、その数だけの顧客の「買い方」を見ている。クルマを買うスタイルやストーリーは数多あり、それが経験として叩き込まれている。ということは、顧客に応じたさまざまな提案をするだけの知的財産を持っていることを意味していて、それだけで彼らの発する言葉に耳を傾ける値打ちは大いにあると思う。


 余裕に満ちた接遇により、客は心を許すだろう。心開かれ、懐に入り込めればこそ得られる情報もあるだろうし、時にもたらされる対応困難な相談にものり、それを解決することだってあるだろう。その繰りかえしがさらに彼への信頼を強めることになる。その信頼、信用が紹介というかたちで評判が広まる。原則として評判のよい人と出会う時に人は前向きな出会いになると確信して相対する。そしてそこでまた新たな評判を生むことにもなる。デキる営業は、自然と人脈を広げるものだ。


 売れる、デキる、キレる営業は必ずといっていいくらい中古車に精通し、他社銘柄にも精通しているのが共通のポイントだ。相手の弱点と自らの強みを知るだけでなく、今はどうか知らないが、他社のクルマがほしいとなれば、そのメーカーの営業を紹介することさえあったという。もちろん金額条件は「目一杯で頼むよ」と言い添える。そんな時代があったのも確かだ。やはり売れる営業は人脈が幅広い。


 そんな営業との付き合いがあれば、たまには「あの営業の話しでも聞きに行くか」とディーラーに点検に入れる回数も増えるであろうし、となれば新車やリコールの情報も適切に降りてくる。当然、整備手帳にはディーラーの押印が頻繁に残り、それは行く行く中古車としての値打ちを高めることにもつながる。ちなみに点検やオイル交換で入庫したときに顔を出さない営業は駄目だし、せめて留守にしているならフォローコールをその夜にでもかけてくるくらいでなければ駄目だ。


 今まで何十人もの営業の顔を見てきたが、そのうち「この人なら」と思える営業との出会いはほんの一握りだ。そして、営業マンとしてある一定の「レベル」に達するには少なくとも五年は苦労して修行せねばならない世界だとも思う。しかも、私の知る限り、せっかくのノウハウを若手に継承するということもなされていない業界だ。となればここに書いたキレ者営業と出会える確率はきわめて低いということになる。ディーラーのカウンターに仁王立ちして「デキるヤツを出せ!」と言っても、きっと意味が通らないだろう。足で稼ぐしかない。


 私が口酸っぱく「ディーラーに赴くべし」と書いているのは、じつはそんな辺りにある。おおいに「冷やかし」をやったらいい。その中から、「どうぞ、いつでもおいしいコーヒーをいれてお待ちしていますよ」と余裕の表情で受け答えする営業が現れるやもしれぬ。そして、いずれその営業からクルマを買うというのも、買い方としては一興だと思う。










前田恵祐



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