「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

Monthly Talk 201112

01 Dec 2011

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 僕の通勤は皆と逆方向である。田舎に向かって出勤し、街に向かって帰宅する。おかげで賃金は大幅に低い。しかし往きも帰りも、電車は着席乗車できるというのがたいへんなメリットである。このメリットのために多少は給料が安くてもいい、と思わせるほどだ。


 帰りの電車、錆暮れた商店街がある小汚い駅から一人のオンナが乗車してきた。僕の向かい側の席に座ると、どうにもこちらをジロジロ見ている。ジロジロというよりは、かなり、アツい視線系(どういう系統だ)の眼差しを見て取れた。しかし僕は徹底して目線をそらした。目を合わせてはいけない、直感的にそう思えた。そこで、いやいや、顔にハナクソがついているだけかもしれないゾ、と考え直してしまうあたりがボクの悪いクセ。


 そもそも、このオンナの攻勢を回避するには既に伏線がある。それは車輌に乗り込んできたときから感じていた。化粧は地味。髪型も黒髪でストレート。ファッションも黒系のコートでこれも地味。しかしどうもへんだ。肌の荒れ方がちょっと気になった。地味な化粧のわりにはリップのグロスだけが効きすぎているのもヘンといえばヘンだ。


 そこで右京ファン(無論片山ではない)のボクは以下の仮説を立てました、シャキーン!!


1、地味な化粧はこれからさらに化粧をしなおすから
2、地味なファッションは、これから散々派手なファッションに身を包む予定だから
3、肌荒れは不規則な生活と恐らくや過剰な飲酒と喫煙によるもの


 ええ。
 彼女は、明らかに水商売を思わせる出で立ち。
 しかもこれから出勤といったところでしょう...(人差し指を立てる仕草)。


 少し考えれば、誰にでもわかることですね~ぇ、カンベ君。


 それにしても執拗だった。2駅、3駅と過ぎようと、こちらから目を離さない。最近の電車のありがたいのは、ドア上のモニターがこういうときの目のやり場になってくれるということだ。携帯と電車のモニターの行ったり来たり。スマホがあってもよかったな、と思わないでもない。しかし徹底抗戦。こうなったら意地でも目を合わせてなんかやるもんか。


 そんなセナのブロックより頑固な防戦の甲斐あってか、その攻防にも終焉の時が近づいた。なんと、オンナの隣に実に無防備な、これまたサエねえ水色のジャンバーなんかを着込んだサエねえアラフォーくらいのオトコが腰掛けたのだ。オンナは、ここぞ!とばかりにシナリ坐りでオトコに擦り寄る。さらにこのオンナの徹底しているところは、オトコが着用しているイヤホンを外させてまで自分の会話にエンロールさせようとしたことだ。ああ、捕まってしまった。第三京浜で面パトが獲物を仕留めたときくらい、じつに機敏であった。


 そして遂にオンナは口を開く。


「ねぇ~んおにぃさぁんこれぇこのストラップぅどこで買ったんですかぁ~ん」


 アニメ声というんだろうか、しかし電車の中であそこまで露骨に誘う女も珍しい。ストラップのことなんかどうだっていいってことくらいわかんないオトコは真面目に「●●のダイソーでぇ・・・」と応えてしまう。ダメだ。これはもう逃げられない(笑)。


「あたしィおんなじストラップぅもらったのになくしちゃったんですぅ買わなきゃってぇ」


 最初は警戒し硬かったオトコの表情は次第に綻んで行き、遂には頬が微かに紅潮している。もぉ~ダメだ。舟をこいで助けにも行けない。このピラニアオンナに骨の髄まで食いつぶされ、そして帷子川にポイと棄てられちまうであろう、嗚呼水色ジャンバー男よ・・・


 途中で急行に乗り換える予定を変更して、この二人の成り行きを観察することにした。今ここでチャンネルを変えるならあまりに無粋である。放送時間を延長してお送りする気分だ。


 してその延長戦。10回裏、ノーアウトでランナー1塁2塁。暫しオンナのペースで会話が進む。ラッシュとは逆の閑散とした車内にオンナのツクリ声が響き渡る。ところがそのうちオトコの方の声が混ざる比率が高くなってくるのだ。顔を上げればけっこうニコやか。イイ感じに出来上がってる。そして、ツカミはOK、機は熟したと悟ったか、オンナは「予定通り」に自分の店の話をし始めるとさらに会話は盛り上がり、最後には二人、腕組みルンルンで電車を降りて行ってしまう。ジャンバー男、耳がたらこ色。


 オンナは今夜の同伴出勤相手をせしめた。プロの仕事を見せつけられた。


 携帯にストラップなんか付けとくもんじゃない、シミジミ思う。ピラニアオンナのいい餌食。これ、飲み屋の子だけじゃなくて、例えば、因縁深き”ねずみ講”も同じような寄って来かたを絶対にするよね。似ている。あと宗教ね。まったく油断も隙もあったもんじゃない。しかしそんなプロ?の色仕掛けに最初からピピッと反応して攻防に競り勝ち、他人が喰いモノにされる姿を傍観できたボクは、こう言っちゃナンだが自分をチョット褒めてあげたくなった(笑)。ていうか、俺に気づかれてる時点でプロじゃないな。水色ジャンバー男のワキが臭・・・いや甘すぎるってこった。


 街にはまたぞろクリスマスムードが漂い始め、つまりボクのようないいトシの独身野郎にはどうにも人恋しい季節がやってきたわけである。しかしそんなココロの隙間につけ入る犯罪の魔の手が街のそこここにヒシメくのがこの季節でもある(警視庁24時的)。こんな安い色仕掛けにコロリと乗せられ、騙されてはいけない。オンナが勤める飲み屋がボッタクリだったらどうすんだ。オレにはそんなカネは無い。ま、その一点があの攻防に勝った勝因だったかもしれない。


 とはいえ、「時にはコロリと騙されちまったほうが実は幸せなんじゃないか」と思うことがないこともない、ということを白状して、今年最後のマンスリートーク、相も変わらずいつものくだらねえ小話、お付き合いいただいていることに感謝申し上げ、そろそろ筆をおかせていただきます。



PS:
ボクのケータイにストラップは元より付いてません...
あ、そうそう、T嬢の携帯メモリーはこの前削除しました...










前田恵祐


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