「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

Monthly Talk 201205

01 May 2012

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 僕のゴールド免許剥奪事件のことを書こう。


 僕が師匠と仰いでいる人の本に、「ぶつけたらもうそれはうまい運転とはいえない」とか、「ボクはウン十万キロ、無事故無違反だ」なんて書いてあったものだから、当然僕もそれを目標にはした。


 僕はそれまで約10年間、20万キロくらいを走り、ゴールドカードを手にし、ちょっと有頂天になっていたかもしれない。記念にアルマーニのカードケースを買ってゴールドカードを収めていたくらいだ。いや、ブルーになった今でもそのアルマーニのケースは現役である。


 そんなふうだったから、ちょっと慢心だったやもしれない。というか、その交差点はいつも何度も右折進入している場所だった。


 僕は朝夕二回風呂に入る。これは一人暮らしを始めてから10年以上続けている。でないとただでさえも男の一人暮らしは「ニオイ」に満ち溢れてしまうからね。そういうのをできるだけ根っこから絶とう、というポリシーである。そう、セルシオと同じ源流主義なんである。しかしその日は、その日に限ってはそのポリシーに背いた。休みの日は寝坊をしたい。そして床屋の予約は開店早々の10時半だったわけである。


 オッ立った寝癖のまま当時の愛車、アウトビアンキY10の、まるでキャブ車のようにかかりづらいインジェクションエンジンに火をいれ、入りづらい1stギアに入れると、予約時間まであと15分、寝癖を残したままワンオフマフラーをボルボル言わせながら走って10分ほどの床屋を目指す。


 床屋の裏にはコインパーキングがあって、そこがいつもの定位置なわけである。そこに入っていくのには、くだんの交差点を右折で入っていくことになるわけだが、なんとか時間にも間に合いそうな5分前、その交差点で直進車をやり過ごし、無造作にクラッチをつなぐと、あろうことかブラジル生まれの1.3リッターエンジンはいきなりエンストを見舞って寄越すのである。このY10、熱が入ってからの再始動はさらにかかりにくい。


 カャャャャャャャ・・・グスン。カャャャャャャャャャャャャャャャ・・・・


 バッテリーが上がっちまうんじゃないかってくらいセルを回し、ようやく息を吹き返すエンジン。後ろのマークIIは黙って待っていてくれた。僕は恥ずかしさを紛らわすように、若い頃のシューマッハのピットアウトよろしくやたら大袈裟にエンジンを吹かして、そしていよいよ右折。コインパーキングは空いていた。しめしめ予定通り。寝癖のことは東北弁のマスターにイジられるやもしれぬが、時間には間に合ったぞ。しかしランチアテーマにも通じる操作感のインナードアノブを引き上げると、そこにはニヤニヤしたオッサンが立っていた。


 いや、オッサンというより、なんか敬礼のようなことをしている風にも見えた。


 「いやぁ~お兄さん、見ちゃったからさぁオレとしても」


 なら見なかったことにすればいいものを、どうやらそうはさせないぞという雰囲気はかもし出していた。笑顔の裏の鉄壁さとでもいうか。あの警官特有のイヤラシイあれである。最初はマフラーの音が喧しすぎる、という整備不良かとおもったが、どうやらそうではないらしい。


 「見ちゃったからさ」って・・・


 まさか・・・


 そのまさかでナンと・・・


 過去何度も右折侵入していたその交差点は、実は右折禁止だったのだ。


 ウッソォ~ン。


 「じゃあ標識見に行こうよ」


 行くと、ホントに真っ直ぐしか行けませんよ、の標識だ。電柱の影に隠れ気味な気もしたが、もはや打つ手なしと悟る。立派な現行犯。


 「いやぁ~見ちゃったもんだからさぁ、しょうがないんだよねー」


 といいながら実に嬉しそうな警官。聞けば「違法駐輪」の取り締まりをしていたところに、僕のY10の爆音が近づいてきて、なかなかエンジンがかからないようだったからわざわざ見に来たら、そこにエンジンがかかって右折していった僕を発見した、ということらしい。ホントかね。右折する前に声かけられなかったのかいな。違反を未然に防ぐのも警官の・・・は、まぁ仕舞っておくことにしよう。そこは僕にもね、アルマーニに収めたゴールドカードゆえの慢心も、そりゃあっただろうし、朝風呂の慣習を破ったのも悪かったんだろうし・・・などと納得することとし、生まれて初めての違反切符を頂戴ツカマツルこととなった。


 堂々、アルマーニに収まった黄金様の「初」提示、「初」お出ましである。


 その当時、ゴールドに更新されて2年目。だから次の更新ではゴールド奪還は成らず、そのさらに5年後。つまり、来年には、何事も無ければ黄金様は僕のアルマーニのケースの中に再び収まるはずである。そう、何事も無い。それ以降僕の身に、切符とか違反事故警察沙汰のたぐいは、まったくない。もしかすると、クルマで出かける前には必ず風呂に入るようにしているのが効いているのかも知れない。フケも寝癖もない、クサくもない状態でクルマに乗るのがやっぱりベストなんだと僕は思う。頭が痒いとステアリングフィールに神経が集中できない、かも知れない。


 そして、やっぱり免許の色はブルーの方がいい、ような気がする。ゴールド、黄金様はどうも気持ちが慢心になってしまって、それと裏腹の失う怖さ「保身」みたいなものがあってちょっとイヤだ。ブルーのほうが安全運転に対して謙虚になれる、ような気がする。慢心よりも謙虚の方がずっと健全だ・・・


 ちなみにその日、予約にはなんとか間に合った床屋で、東北弁のマスターから寝癖についてのイジりはなかったものの、おもてで執り行われていたボクの捕り物劇の一部始終はシカと目撃していたらしく、上機嫌のうちに左右もみ上げの高さを間違えてくれた。










前田恵祐


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