「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

Monthly Talk/01 Nov 2014



 僕の世代は、というか、少なくとも僕は、学校での基礎教育でカテゴライズの強要を受けてきたと思っています。それは社会的な居場所に当てはめ、乱れ、迷うことのなきようにという思想のもとに施されたものだと思っています。けれど、人間と言うのはそもそも個体差の激しいもので、機械的に、あるいは事務的に、カテゴリーに当てはめられる、押し込まれることには向いていない。だからそこで、取ってつけたように「個性を伸ばそう」という不慣れな教育をみなさんやっていました、先生方。


 それぞれ子供の光る部分、長けている部分を褒めて伸ばそう、ということですね。これは一見、個体差の激しい人間と言う動物に則した育て方かもしれないけれど、じつはそうじゃない。人間は個体差が激しい以前に、輝いたり、長けたりする部分を「誰もが」持っているというわけではないのです。子供ながらに、「その褒め方はちょっとムリがあるだろう(苦笑)」と思ったりもしました。しかし先生方はそうやって、「光る、輝く、長けた」部分を必死に探そうとしてくれました。


 だから、自分でもそれを探そうとしてしまう。「自分探し」・・・それが僕ら世代です。


 基本的に、個性が伸びて「モノ」になる人というのはほんの一握りでしょう。その他大多数はほぼ「凡人」といっていい。そして残念なことに、少なくとも僕ら世代の学校教育では「平凡な人間をまっとうする」ことにひとまず充足し、肯定するということを忘れ去っていた基礎教育だったと感じています。


 確かに否定はされていなかったけれど、平凡は決して褒めてもらえなかった。「それでいいんだ」、「人並みに達していればそれで充分生きて行ける」という、じつは様々な困難の待ち構える人生を生きて行くうえで一番大事なこの感覚に乏しい。だからハラが据わっていないともいえる。「平凡」に充足できないから常に何かを探そうとしているし、現状を肯定できもしない。なにに充足を感じればいいかの基準さえないわけです。これじゃあみんなうつ病になってしまうよね。


 個性だけで生きていくのは難しい。人としての「基本性能」を満たした上での輝く個性ではないだろうか。まっとうな人としての要件、すなわちそれは、生活するに必要なだけの給与を過不足なく得ることや、他人や家族と円満な人間関係を築けること、そしてそれらに充足し肯定できることなどを満たして、その上で初めて個性を見つけたり身に着けたり、語ったりができるようになる、その資格を得るのだと思う。人としての土台、礎の上に個性は成り立つ、という話しですね。


 もうひとつ言うと、社会に出ると確実に個性は潰されます。学校を出て社会人になっても、そこに用意されているのは従前と大差のないサラリーマン社会であって、あくまでもそのワクの中に収まることが出来るかどうかという一点にかかっている。個性を伸ばせ、探せ、といっても、そいつを生かせるだけの受け皿は、社会全体として用意されてはいない。というか、そのうち不景気になってきてしまってそんなことしている場合じゃねえ、という印象もありつつ。


 今さら昔の恩師を非難するつもりは毛頭ないけれど、でも、教育の現場というのは常に揺れているものなのであって、また、教員を含めた人間自身が決してブレのない生き物ではないのだと言う、それは逆説的な証左だということはできるのではないだろうか。けれど、揺れ動くなかで、人としてまっとうであることに充足する、という基本が抑えられていないと、あらゆる施策や試策もただただ人心をかき乱すだけの無意味なものとなってしまう。まあ、なってしまった、と言おうか。


 「個性」などという得体の知れないものに踊らされて、現代人はモノの善し悪しの分別がつかなくなってきている。人として超えてはならない一線というものがある。それはその時々にガイドラインがあるのではなく、人としての基礎的な教育や土台となる価値観が嗅覚を働かせ、ブレーキをかけさせる。そのセンサーがちゃんと働いていればトラブルにはならないわけです。でも今はいつでも、どこでもトラブルの嵐ではないですか。みんな気が立っているよね。


 世の中、どうもおかしなことになっている。それを今書いてきた学校教育と世代の問題「だけ」に片付けるのは間違いかもしれないけれど、僕は「個性」などというマヤカシを遍く凡人に当てはめようとしたことが諸悪の根源だったのだと思っています。僕はそのマヤカシに惑わされたし翻弄もされながらここまで来た。ある意味この年齢にしてようやくそれに気がつけたと言う面もある。そいつはじつにメデタイ、と思う。それに、本当に個性のある人というのは最初から考えも突き抜けちゃっているから、やっぱり、僕なんかとも住む世界がまったく違うんだよね。








前田恵祐



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