「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

エンジンがイイというだけで・・・GF-RA3型ホンダ・オデッセイ


「こんど、オデッセイにしようと思うんだよね」


 結婚し子供も出来た知人の期待感にあふれた表情に対して僕はというとまったくこの話しに乗り気でなかった。ミニバンという車型にまったく期待感が持てなかったからだ。その理由は、多座席を得た代わりに動力性能や運動性能、また走る楽しみのようなものを失っていると思われたからだった・・・


http://www.favcars.com/honda-odyssey-prestige-ra5-1997-99-images-21627


 つまりミニバンは僕らクルマ好き、運転好きが大事なことだと思っている俊敏な走りのたぐいを我慢しなければならない乗り物だと認識されていたし、してもいた。同様の理由からミニバンに否定的な自動車メディアも当時は多く、ミニバンを毛嫌いする風潮もないではなかった。ま、今でもキライという人は少なくない。しかし乗ったこともないのに「キライ」になってしまうのが世の風潮、あるいは「風評被害」のようなもので、もしかすると初代オデッセイなどはそれを覆そうと頑張っていたということなのかもしれない。あるいはメイワクなハナシだったのかもしれない。


 初期型はボディもしっかりしていないし、音・振動の処理もあまりうまくいっていない、またエンジンもホンダに期待するほど元気なわけではないといった評判が出来上がっていた。それはそうかもしれない、ホンダにとって作り慣れていない車型なのだからそういうこともあるだろう、と考えることはできた。だからやっぱりネガティブな先入観を排してこのクルマに接することはできなかったわけである。知人が買うと言ったときにも、あまりおすすめしたい気分でなかった。でも多くの人はオデッセイを買ったし、その知人もやはり買った。それはきっとこのクルマが今までの価値観から離れ、新しい生活感や世界観を見せようとしていたからなのだと思って僕は納得した。


 いくらか時間が経過して、知人のもとに納車された初代オデッセイの後期型を運転させてもらう機会が訪れた。むろんそんなに期待はしていない。新しいカタチのこのクルマとはどんなものであるか、知っておきたい、それくらいの気分だった。


 しかし先入観というものが、いかに感性を鈍らせ新しい出会いの可能性を削ぎ落としてしまうのかを実感することに、大して時間は必要としなかった。


 何よりエンジンがイイ。2.3リッターVTECとなっていた後期型のそれは、低速から豊かに発生するトルクがドライバーに心理的余裕をもたらし、もっというなら絶大なリラックス効果を与えるだけでなく、少しでも深くスロットルを踏み込めばストレスなくスムーズかつシャープに回転を上昇させ、高い回転域でも充分なパワーとパンチ、また心地よいサウンドまでもを提供するという見事な仕立て。


 一言で言うと運転が「楽しい」。


 それにはエンジンの特性をよく理解し、またドライバーの心理をキャッチする才能にも秀でた4段オートマチックの存在も小さくない。エンジン・トランスミッション、トータルの完成度が抜群に高く、これにもたいへん感心させられた。さらには車体のしっかり感、足廻りの確かさなど、全てにおいて期待値以上だった。それはもしかすると、平成9年に行なわれたマイナーチェンジでの改良が大きくモノを言っているのかもしれないと思ったが、それにしても、当初の先入観からすれば劇的に運転が「楽しい」と感じられる、このオデッセイ=ミニバンという乗り物への印象が、音を立てるように、そしてかなりの短時間で一変する出来事だった。


 中でも大きな存在感を放っていたのは、やはりエンジンだった。エンジンがイイというだけでこんなに楽しいとは。車型はミニバンであることに違いはない。シートは3列あり、7人乗車できる。根っからの実用車であることに変わりはない。しかしホンダには従来のスポーツカー的なそれとは確実に異質ながら、運転を楽しいと思わせるミニバンを作る、その感性と技術があるということを示していた良い例だったと思う。その中心にあったのが出来のよいエンジンだったのである。そこはいかにもホンダらしい。


 1992年9月イタリア・モンツァ。第二期F1活動を休止するホンダに対してアイルトン・セナが涙ながらに別れを惜しんだ、その意味がわかったような気がした。トチギ・ワコー・トーキョー、なのである。ホンダはエンジンで人をシアワセにする才能を持った会社である。そのことが僕の中に明確に植え付けられることとなった、初代オデッセイというクルマとの出会いだった(後期型限定。前期型は別モノです)。




2016.9.11
前田恵祐

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