「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

【書評】2015年版 間違いだらけのクルマ選び



 永年にわたり同じタイトルの書を出し続けるというのは大変なことだと思う。同じテーマ、同じ題材、けれどこの本は刻々と進化し続ける自動車という商品を取り上げ、論評をし続けた。ま、視点は一定ではなかった気がしないでもないが、「初代」筆者の経験則と豊かな知識、あるいは趣味嗜好の世界観がふんだんに散りばめられた、私はそれだけでも立派な本だと思って、少なくとも2006年までは毎年買い続けた。


 人間とは年老い、衰える動物である。迫る年波はいかなる名著者をもってしても抗しきれまい。年と共にその地位を譲った、例えば「初代」著者と同様の自動車ジャーナリストは他に、新車情報最後期の試乗VTRを段階的に若手のジャーナリストに託した三本和彦氏がいる。その反面、生涯ジャーナリスト、生涯現役を貫き、例えばニュルでテスト中にぶつかって亡くなったポール・フレール氏のような生き方、やりかたもあったと言える。


 その意味で、この本書のここ10年は迫る年波との戦いと言えた。


 とはいえ、クルマに試乗はできなくてもクルマを論ずることはできる。乗って書く、というのは一つの証左でしかなく、クルマは乗った印象のみならず、作られ方、売られ方、買われ方など様々な視点論点が存在するし、あるいは乗った印象すら、ベテランになると乗らずとも語ることができるようになる。そう考えるまでもなく、ここ10年の本書を読めば「初代」著者の気迫と、鋭い分析眼がまったく衰えることがなかったところを知ることができたはずだ。


 しかし。


 実働部隊、「もう一人の」著者たる試乗担当の若手ジャーナリスト。お名前を島下さんとかおっしゃいましたか? 私はよく存じ上げないのですが・・・


 「間違いだらけのクルマ選び」という、「初代」著者の生き方、著者的な言い方をするなら「スタイル」でビシッと貫かれていたところに、あれはいったいどういう人選だったのだろうという疑問が消えない。


 年老いた「初代」著者がそれを受容したということ自体ちょっとオドロキなのだが、しかしよくよく考えてみればこうした形での出版は、恐らくではあるが「初代」著者の「ご奉公」だったのではないか。出版元の草思社は一時経営が危うくなり会社を畳み掛けた時期もあった。即ち、この本で身を立てたという実感の強い「初代」著者は、その恩人たる出版元にこうした形でも貢献することが恩返しなのである、と考えたのではないだろうか。そう仮定すれば、多少ならずも「ブレ」が生じることに目を瞑ってでもこの本、このタイトルを、「初代」著者が存続させた理由には成り得ているようにも思える。


 彼は苦労人だから、このような名声を残して世を去ることができて、きっと幸いだったと感じている、私はそう思う。だから「もう一人の」著者が書く原稿が薄っぺらでただのハッタリにしか見えないことや、「初代」の含蓄に遠く及びようもないことについて、ここで論う必要はないだろう。少なくとも2015年版までに関しては。しかしこれからもこの本を存続させ、「もう一人の」著者によって原稿が書かれるというのならその限りではない。




 どうですか皆さん。私はとても悔しい。



 思いを同じくしてくださったなら、どうか出版社に投稿してください。苦労人の後を継ぐのは苦労人でないと、駄目だと思いませんか? 本人からのアピールだけではどうも説得力が薄いみたいなんですよね。私の名を書き添えて、ひとつ、よろしく(笑)
















前田恵祐


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