「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#020 スカイラインの贅沢仕様

日産・スカイライン クロスオーバー 試乗インプレッション(2009.8)

.

~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 昔は峠をバリバリ走っていたスカイラインはいつしか大人になってナイスミドルになった。そのスカイラインに新種、クロスオーバーが追加された。北米で既に数年前からインフィニティEXとして売られていたものである。



 概観



 SUVのように床が高いがそれは乗用車との中間的な高さで、名前が示すとおりクロスオーバー。オフロードを踏破するというより鷹揚なフォルムに上品な設えを旨とし、個人的な解釈では、これは1940年代や50年代あたりのクラシックカーの現代的解釈なのではないかなと思う。




 クラシックでありながらモダンであり、スポーティでありながらエレガンスである。まるで腕のいいアレンジャーの手にかかったフュージョンミュージックのよう。日産は以前からこうしたアレンジセンスに長けている。このクルマを見てかつてのY32セドリック・グロリアやY32シーマを思い起こさせた。目に見えるカタチはちがう、アレンジセンスにおいての話しだ。



インテリア

 機能主義でやや無機質だったセダン・クーペに対して、基本的に同じような構成を持ちながらデザインテイストをよりクラシックな方向に振って明らかに高級車のインテリアとしてきた。シートの形状も異なる。適度な硬さをもつがもう一歩腰と尻をがっしりと支えて欲しい。




 前席後席とも特筆すべきはヒップポイントの絶妙なことで、これは乗り降りするのにきわめて自然で、ラクなのである。サイドシルが”バリアフリー”ならなお言うことはない。身体を必要以上に屈める必要は無くまた持ち上げる必要も無い。つまり年齢を重ねたドライバーや同乗者に優しいということになる。また着座姿勢もアップライトで、アイポイントは前車のルーフ越しにさらに前を見通せる適度な高さ。足は自然に床に落とせてこれまたストレスが少ない。後述する運転感覚ともあいまって、長旅にも適する。やはりオーナー像は車の長旅が可能なくらいの時間と蓄えと年輪を重ねた人であろう。




 アナログ時計も堂に入っている。このハンドルがまたいい。MOMOのように握りやすい。




 後席は広大なほど広くは無い。しかし実質それでも充分だ。荷室にはゴルフバッグ3つまでとの説明を受けた。やはりフル乗車より少人数での、どちらかというと個人的な使い方を想定しているようだ。




 カーゴスペースはこんな具合。



エンジン/トランスミッション

 フェアレディZやスカイラインでも採用されているエンジンとトランスミッションであり、今回初めて新しい7段オートマチックを試すことになった。ちなみに試乗車はFR版である。


 VQ37がスムーズで静か、回せば充分機敏であることはこれまでにも確認していて、その印象に変わりはない。他メーカーの完成度は高いが味気ない、新しいV6を知ると、94年デビューのこのエンジンも長いなと感じさせる。当時は味気ないと思ったものだが、今乗ると微かに空気を吸って燃やして排気してのリズムというか、鼓動を感じ取ることも出来るし、それでいて古くなってもいない、絶妙な立ち位置だと思う。




 ただし、3.7リッターも必要なのかどうかは議論を挟むべきところだろう。このクラス(車体の大きさ)なら十二分に軽量化した上で、3リッターくらいで成立させたい。節税だってしたいじゃないか。ましてや世界はダウンサイズの嵐だ。


 新しいオートマチックは例によってジャトコ製で7段。細かく区切って各ギア同士のステップ比を小さくし、つまり同じ高さをより多い段数の階段で上がっていく感覚である。都度エンジンのおいしいところを選んで走れて機敏にも立ち回れるが、一つのギアでエンジンの伸びを楽しむことがしにくいことと、欲しい加減速を得るのにシフト操作が複数回必要で、”一撃”にできないのがやや不便。



足回り

 重心が高くなったクルマ特有の緩慢さやSUV特有の悪路を考慮した緩いコンプライアンスによる締りのなさなどとは完全に無縁。むろんセダンやクーペのように完全に引き締まったものではないが、長いサスペンションストロークを感じさせる鷹揚な身のこなしに、スカイラインの名に恥じぬ正確なステアリングと遅すぎないステアリングギアレシオなど、この点においても絶妙のバランスと完成度を得ている。




 セダンやクーペより短い全長とホイールベースがこのクルマに適度な機敏さも与えていると思う。車体剛性も高いと感じられ、振動や騒音の抑制も効果的だし、乗り物として不自然さやストレスがない。これは運転環境やエンジン/トランスミッションなどと併せてこのクルマの全体の印象をつかさどっている。見事な調律。それは高級乗用車そのものだ。


 スポーティサルーンとして完成度の高い走りを得ているセダン・クーペだが、こうした派生車種においても、キャラクターに変化はあるにせよ完成度の高さはそのままであり、生来の資質の高さを裏付けている。



まとめ

 歳を取ってゆったりとクルマの旅を楽しみたい、子供も手を離れプライベートタイムを満喫したいという大人のためのクルマだ。設えや使い勝手、運転感覚などから来るトータルの印象や円熟した味わいは他では得がたく、長年の運転歴を持つベテランドライバーこそ、その意味や値打ちを深く理解できるだろう。




 またフュージョンミュージックのように様々な要素を含みながらその取りまとめのセンスに優れている様、あるいは豊かな味わいなどからして、上述のごとく筆者はY32セドグロやシーマ、レパードJフェリーなどを思い起こした。あの頃の日産の高級乗用車のような明快な個性、しっかりとした主張をこのクルマに見て取ることが出来る。あの頃の日産車が帰ってきたように思えた。


 ところがこのクラスの顧客は保守的で、こうした「新種」に抵抗を覚えるかもしれない。日産もそれを見越していて、だからこそ通じやすいスカイラインの名を残したのだろうし、販売目標もいたって弱気だ。しかし、こうした個性的なクルマはわかる人にだけわかればそれでいい。これ敢えて選んだ人にとってもそのほうが自慢の種になるのではないだろうか。


 既存の車種に満足できないというなら、一度試乗してみる値打ちはあると申し上げておこう。



--------------------------------------------------
 









ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


.

拍手[1回]