「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#028 両生類系パーソナル

VW ニューシロッコ 試乗インプレッション(2009.10)
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~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 ゴルフよりややリッチな仕立てのスポーティ・パーソナルカー。昔のシロッコもコラードも同じような立ち位置だった。最新の技術で環境や燃費も意識しつつ走りも納得できるスタイリッシュなクルマがほしい、そんな思いを抱いていた貴方には必見の一台。



 概観

 アマガエル色だからか、前世はよっぽどアマガエルだったんじゃないかというくらい両生類系のルックス。もう一回り小さければさらに愛らしさも増しただろうが個人的には好意的。おおいに個性的で同時に処理や仕上げも美しい。ワーゲンらしくどこか野性的。そこがまたいい。ただ、このデザインの基本的なアイデアはEG系シビックあたりと同じ。




 フロントの処理が、他の部分の大胆さや美しさに対してちょっと平凡かな。いっそのこともっとキュートな愛されキャラを目指しても良かったのに、と思う。




 リアの処理は一見シンプルだが丁寧な面構成で美しく仕上がっている。キャビンが絞り込まれているせいもあるがリアフェンダーはかなり大胆に張り出していて、それはドアミラーに映り込む。おかげで車幅感覚が掴みやすいというメリットも。





インテリア

 ダッシュボードはゴルフ6とも近い意匠でこのクルマの性格からするとややビジネスライクか。かつてのコラードは全くの専用デザインが与えられていた。違和感があるとするなら、そのダッシュボードが高くそびえ立っていて、感覚的に閉塞感が漂うこと。絶対的に狭くはないし、むしろ広いのだが。スポーティカーらしく低く座り下のほうまで見える視界が望ましい。ただし、おおむね仕上げは丁寧で質感も高い。




 2.0TSIのインテリアは標準で革張り。カラーは試乗車の黒系の他に注文色の”トリュフ”がある。これは茶系のシックな色合い。ただし組み合わせは車体色が白か黒の場合に限られる。革はしなやかで身体に良く馴染み、また同時にワーゲンのシートらしく剛性が高くガッシリ支えられることに変わりはない。革の表面処理やステッチの入り方などにも経験が生きており、滑ったり突っ張ったりする印象をうまく回避している。一日の長を感じる部分だ。




 細かくステッチが入っていると、後々革がダラシなく伸びなくていいです。




 後席は完全な+2のスペースで、概観デザインからもわかるように横方向は絞り込まれているから広さは望めないものの、収まってしまえばひじの置き場もしっかりとあるし大人でもなんとか乗り込むことは出来る。比較するとRX-8よりは狭い。



エンジン/トランスミッション

 2リッター直噴ターボTSIエンジンは現代のガソリンエンジン技術として最新モードにあるが、そこから得られる印象は意外なほどクラシック。モーターのようにビュンビュン回るというより、絶対的には静かながら、ブルブルゴーゴーとエンジンらしい鼓動を感じさせ、また低回転から図太い力を発揮する。トルクが”ボールド”。2リッターとは思えないほどの余裕。ワーゲンの常で刺激的でもなんでもないが、なぜか懐かしく親しみを感じるエンジン。それもまた魅力。DSGは市街地で普通に走る限り2000rpm前後をキープし静かに粛々と行くが、3000~5000rpm付近の途切れない蜜のような力強さもまた光る。




 市街地ばかりを30分走った試乗中の平均燃費はメーター表示で9~10km/Lだった。


 ツインクラッチ式トランスミッションのDSGは2.0に6速、1.4には7速が組み合わされる。違いはクラッチが湿式か乾式かということであり、2.0は高トルク対応の観点から放熱性を考慮され、オイルが充填された湿式で6速とされている。


 同方式では他にも追随する製品が現われているが、依然としてレスポンス、スムースネス、スケジュールの自然さ含め、DSGの総合点は高い。自動変速モードから手動でパドル操作をしたのち、自動変速モードに再復帰するタイミングが絶妙。時に交差点手前でチク、チクとパドルでギアを落とし交差点を回る、そして直線で自動変速に復帰、自動シフトアップ・・・このリズムがイージーかつ軽快。


 タイムロスを減らしレスポンスも稼げるDCT(DSG)。スムーズで快適でいながら効率、能率的であり、なんといってもスポーティな走りにも向いているという適性の広さも魅力だ。



足回り

 全長に対して全幅が広く縦横比のバランスがいい。市街地、あるいはバイパス道路を行く限りコーナーリングも安定している。ステアリングはクイックでこそないがダイレクトな印象がいかにもワーゲン。トバせることに違いないだろうし充分にスポーティだが、そのバランス感覚は、例えばBMWのそれとは違う。懐が深く、また裾野の広い信頼感とともに行く。BMWはもっと走りに対する間口が狭くどちらかというとマニアック。ま、平たく言うとFFかFRかの違い、でもある。




 全長は短いがクルマの動きには角が取れていてイライラさせられるところがない。それは音や振動の処理や伝わり方についても同様。凹凸に対しては、確かにゴツゴツとカタいが車体は例によってガッシリとしていて受け止める側も余裕たっぷり。重厚。絶対的にフラットでないが路面の状況から動くべくして動いている、納得できる乗り心地。いつもどおりのワーゲンだ。



まとめ

 この種のクルマにとって厳しい時代だが、最新のゴルフと基礎を同じくして魅力的なパーソナルカーを仕立ててきた。ワーゲンらしく合理的に過ぎる部分もなくはないが、個性的でちょっと野性味もあるスタイル、扱いやすいエンジン、スムースかつ効率的、同時にレスポンシブなトランスミッション、信頼感の高いハンドリングなど、歴代ワーゲンのスポーツモデルが持っていた魅力をそのままに体現している。






 今のクルマはみな一様にビジネスライクだったりファミリーライクだったりする。それはたしかに使いやすかったり安心感につながったりもするだろう。しかし自分をどう見せるか、演出できるか、ということに少しでも興味がある人にはシロッコをお奨めしたい。ちょっと風変わりな服や靴を選んで時に人を驚かせるような、そんな満足感や楽しさが得られるはずだ。




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。









前田恵祐


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