「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#031 フランスパンが似合うクルマ

ルノー・カングー 試乗インプレッション(2009.10)

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~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 見た目は貨物車。でもユースフルで使い心地も優れるファミリーカー。貨物車とファミリーカーの良いところを程好く折半。明るい雰囲気と朗らかなキャラクターからは現地フランスの生活観が垣間見られる。どんな理屈よりも輸入車でもっとも大事な”国際交流”のポイントだ。



 概観

 従来型よりおおむねふたまわり大きくなっているが、後述する室内も比例して広くなっておりその点では合格。ベースはかつてのルーテシアからセニックにかわっているという。大きいのにキュートで明るい表情や雰囲気。また明るく広い室内を連想させる大きなグラスエリア。ノッポだが鈍臭くなく軽快に仕上げられているところもいい。




 明るく優しい雰囲気。睨み付け他を寄せ付けない、の、反対。ひまわりの色が似合う。




 食パンマン系?



インテリア

 昨今外寸が大きくなったクルマの全般に言える”肉厚”の増加→故に室内の広さは前とあまり変わらない・・・という傾向にあらず、新型カングーの室内は外寸拡大に比例して充分に広められている。本来こうでなければならない。




 アイポイントが高く、窓の下端が低く開放感たっぷり。背中を起こしてアップライトに坐り、広く見渡し、明るい視野に気持ちも明るくなる。ダッシュボードはセニックとも共通性があるようで、ハンドルのやや寝気味の角度やシフトレバーとの位置関係なども似通っている。座ってハンドルを握る、シフトを操作する、といった部分の感覚がセニック。




 セニックとの共通性、それはまたシートのかけ心地にも言えること。ぎっしりとアンコが詰まってしっかり支えながら、ふわりと乗員を包み込む優しさ。不快な振動や突き上げから乗員を隔絶し疲労やストレスを与えない。本当に素晴らしい。





 ピラーが太いのは現代のクルマの常としてもうまく湾曲させ視線のジャマにならないように避けて通っている。こういうところもうまくつくってある。




 後席も広くなり、シートは以前よりしっかりとしたものになった。先代は意外と後ろのシートが手薄だった。といって今回のものも畳み込むことを考慮しているからバックレストの高さやクッションの厚みは不足気味。使い勝手と折半、しかしその妥協点は高まった。




 前席の天井トレー。




 二列目天井はこうなっている。





 間仕切りの位置は現在中段。最上段に置いてトノカバーにもなる。
 使わないときは後席背面部分に仕舞い込める。



エンジン/トランスミッション

 1.6リッター4気筒16バルブ、ふつうのエンジン。1460kgの車重に対して必要充分だが、国内ではもう少し余裕がほしい。できれば2リッターを。税金も変わらない。ただしこのエンジンは素直でよく回るから、珍しく設定のある5段マニュアルでなら軽快に走りそうだ。




 試乗車のトランスミッションは例の学習機能付き4段オートマチック。この分野でフランス車はあきらかに不得手。たしかに以前より複雑な仕事ができているのかもしれないが、その動作はややイビツ。ニガテな電子制御を無理してやるくらいなら最初から何もついていない普通のオートマで充分という気もする。というか、ツインクラッチならきっと「もっと楽しい」。


 筆者はこのクルマのエンジン、トランスミッションが純粋なルノーであることに拘らない。日産から供給を受けてもいいと思うのだが、いかがでしょうか。出来のいいCVTないしは4段ATにムラーノの2.5リッター4気筒のゆったりした余裕の走り。このクルマに合うと思います。



足回り

 重心は高いがロールセンターを乗員に近づけてある(ロール仮想軸位置を高めてある)ため、傾くには傾くがグラッと急には来ない。だからオットット、ではなく、しなやかさ、柔らかさの方を素直に享受できる。これは以前からのルノーと同じ。そうそうこれこれ、な部分。疲れない。


 といってハンドルの反応がニブイかというとそうではなく、むしろ操作に対して忠実であるし路面からの情報もこの種のクルマとしては充分にある。ドライバーの転舵入力に対してリニアに向きを変え、リニアにロールが発生していく。その後のクルマの動きが予測しやすい、しかもその経過が人間の感性に近いから安心感もあり、故にシャープでこそないがトバしてもストレスがない。巧みな設え、手練である。


 剛性感がありながら路面へのタッチがやわらかく、足回りの動きが優しい。それでいて路面をしっかり掴んでくれるというしたたかさも同居する。フラットでまろやかな乗り心地は乗る者を静かな気持ちにさせてくれる。ドライバーには冷静さを与え、パッセンジャーには癒しともいえる安心感を与える。長旅向き。



まとめ

 乗用車としてははっきりとノロいが、そんなことはどうでもいい。人や荷物を満足に運び長旅にも適する。それは長時間であり、長期間でもある。いうなればロバやラクダのようなものだ。「ノロい」というただ一点だけを見れば明らかな手落ちだが、しかしこの鉄の塊をしてロバやラクダと言い換えさせてしまう事実は、実はとてもスゴいことなんではないかな。


 この大きささえ受け入れられればたいへん魅力的な実用車、そして頼もしいファミリーカーになるはず。広いスペースによる使い勝手だけでなく、ベースとなったセニックからそのまま引き継いだしっとりとした走り、乗り味は絶大な魅力。貨物車のようないでたちだがその乗り味は完全に乗用車、しかも上等な部類のもの。やや手薄なエンジン/トランスミッションはこの際目をつむろう。


 付け加えるなら、この素晴らしい出来と持ち味のフランス車は229万8千円(※)というバーゲンプライスなのである。



※価格:4速オートマチック車の車両本体価格で2009年9月時点のもの














前田恵祐


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