「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#053 しぶとく生きる、フラグシップ

ホンダ レジェンド EURO L 試乗インプレッション(2010.8)
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~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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エクステリア

 今こうしてみると、最初は醜顔に見えたマスクもなにやら年輪や含蓄を感じさせる顔つきに見える。高級車はエレガンスを追い求めなければならないと思っていたが、こういう表現の仕方もあるのかな、と、モデル末期になって気がつくのは何もこのクルマにはじまったことではない、カーデザインの妙。初期のデザインより整理されていながらより押し出しの強いものになっている後期型である。




 少し引いたアングルでみると全体のイメージは顔ほどに強くなく、クリーンでオーソドックスなラインをもって描かれていることがわかる。




 前はああだが、テールのデザインはアッサリ。このコントラストも大事なのだろう。しかしアッサリでいて充分に高級感もある。シンプルだがうまい。ヘタにイジり倒すよりこちらのほうが正解。



視界・扱いやすさ

 運転席からボンネットの視認はほぼできないが、ボンネット自体は短めで前すぼまりなため狭いところに入っていくのもおっくうではない。視界も開けており包まれ感よりも開放感のほうを優先しているのはホンダ車の常。むろん運転のしやすさを助けている。しかし横置きエンジンの4WDだけあって小回りは効かないようだ。




 メーターの瞬読性は高く、コントラストも適切で色使いも美しい。余計な装飾もなく機能的。ホンダ車のメーターは一目でそれとわかる。クルマのメーターパネルはこうありたい。 



インテリア・ラゲッジ



 独創的なダッシュボードには天童木工製本木目パネルがあしらわれ、レジェンド独自の空間を作り出している。シンプルだが贅沢な位置にモニターを配したり、コンソール部分のエアコン、オーディオの操作系も良く考えられていて使いやすい。意外と常識派。




 革シートの張りはちょっとルーズでアメリカ的だがこれもまた他の国産車には見られない個性だろう。ゆったりとリラックスしてドライブできる。高級車にはこうした細やかな部分の感覚にこだわって独自性を追求することも大事。試乗車のインテリアカラーはブラックだが、他グレードに用意される明るいウォームグレーなど各部の美しい造形が引き立ち、同時に絶妙な調色はとてもシックで大人っぽいから、私ならそちらを選ぶだろう。




 後席のスペースもほどほど。しかしショーファーカーではない。歴代レジェンドは一貫してドライバーズカー。




 トランクはややサスペンション類の張り出しが大きめに見えるが、凝ったサスペンションや駆動系との引き換えである。トランクの広さが最重要というユーザーは最初からこのクルマを買いには来ないだろう。別に有力な候補がある。しかしこのクルマがほしい、という人はこのクルマをめがけて買いに来る。そういうタイプのクルマだ。



エンジン・トランスミッション

 V6、3.7リッターエンジンはJの頭文字。記憶が正しければ初代オデッセイのV6モデルから積まれている。拡大を繰り返しまた熟成されたこのエンジン。確かに洗練されていて振動も少なく静かだが、最新の雑味淀みを一切感じさせないロボットのようなエンジンと違って、どこかエンジンの脈打つ鼓動が伝わってくるような懐かしさもある。そしてそれなりにアクセルを深く踏み込めばたっぷりとしたトルクを贅沢に使って、しかも耳に心地よいサウンドを伴いフワリと加速に移っていく。思い出したのは、ランチア・テージスに積まれたアルファV6のフィーリング。あれと同じように、なかなかいいアジ、いいダシが出ている。




 トランスミッションは5段ATで、セレクタは前進「D」のほか「S」のみの選択肢。マニュアルシフトはパドルで行う。ホンダ式だがこれはこれで簡潔であり好ましい。6段以上の多段ATが必要だろうかと思えるほどエンジンはトルクフルだから、燃費のことを考えなければ5段の現状で充分。それでも走行条件が燃費に厳しい試乗車の平均燃費計でも6.2km/Lを示していたから、重さや排気量を考えると実用燃費はそう悪くはなさそう。


 しかし本当に3.7リッターという排気量が必要だったのだろうか。従来の3.5でも充分であったしその排気量を維持して改良すればそれはそれでいいものに仕上がるとは想像できる。つまりこれは事実上の「増税」。他社においても同様の現象が見て取れる。



足廻り

 試乗グレードはEURO L。専用セッティングのサスペンションと18インチタイアを備えており第一印象からしてはっきりと硬いが、大径タイアを充分に履きこなしているのは当然として、高級車に相応しくない騒音や振動はしっかり抑え込んでいる。スポーティな高級車と呼べる範疇。デビュー当初に試乗した17インチ仕様はもうすこししなやかだったと記憶している。




 今改めて感心したのはハンドルの操舵感で、キックバックはそれなりにあるものの、手のひらに伝わってくる情報が繊細でとても洗練されており、なかなか上品な印象に仕上がっていた。ゴリゴリと路面とタイアのせめぎあいを伝えてくるBMW的な味付けがお好きな日本車にあって珍しい。恐らくや設計陣のこだわり。現行アコードなどとも明らかに異なる上質感。


 左右駆動力配分によるヨーコントロール機能を用いたSH-AWDは、少なくとも通常領域において癖の無さと確かなハンドリングとトラクションが両得されているところが相変わらずの出来で、やはり単なるスタンバイ式とは異なり常に4輪に駆動力配分がおこなわれていることのありがたみを感じさせる。ハンドルを切った状態での加速時におけるトラクションの確かさ、同時に得られるなめらかさ、あるいは車体全体をグッと沈めながら力強く前へ押し出す様子はこのクルマならではの魅力だ。



結論

 貴方の会社にも一人くらい、いるでしょう?一見ぶっきらぼうで口数少なく、近寄りがたい空気を出している。でも話してみれば意外に良識派で自分をしっかり持っている。世間や流行に安易に迎合したり流されたりせず、誰かや何かに依存するところもない、いわゆる一匹狼。レジェンドの魅力とはそんなところにある。


 レジェンドはレジェンドのわが道を行っているところが見ていて嬉しい。このクルマでしか得られないものが確実にあり、しかも数が少ないことで持ち主にとってはその希少性も高い満足の要因になりえる。高級車には、わかる人にだけわかる、というある種の敷居も必要。レジェンドはまさしくその要素を高いレベルで満たしていると思う。






 伝説というほどではないにしろ、25年という歴史は確かに刻まれて今ここにある。無くしてしまうならまったく惜しい存在だ。



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5段階評価:★★★★





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試乗データ

試乗日:2010年7月29日
試乗車:ホンダ・レジェンド EURO L (6,350,000円 車両本体価格)
型式:DBA-KB2
駆動方式:4WD
全長×全幅×全高:4985×1845×1455mm
ホイールベース:2800mm
最小回転半径:5.8m
車両重量:1840kg
トランスミッション:5段AT(パドルシフト付)
ボディタイプ:4ドアセダン
ボディ色:クリスタルブラック・パール
内装色:ブラック(レザー)/黒本木目トリム
装着されていたオプション:フロアマット(45,360円)



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メーカーサイト
http://www.honda.co.jp/LEGEND/


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐


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