「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#119 エレガンスでレトロなイタリアのエコカー


クライスラー・イプシロン・ゴールド ~ 試乗インプレッション(2013.5)
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~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 思い返せばランチアとはじつに悲運のブランドである。いにしえはモータースポーツで栄え、乗用車では革新的な技術と気品に満ちた仕立てで一定のプレステージがあった。しかし時代が進むにつれ、行きつ戻りつをくりかえしフィアットの傘の下で落ち着いたかと思いきや90年代に入っても常に身売り話の絶えないブランドだった。その姿はいかにも、凋落した貴族を思わせ悲哀を漂わせている。結局今はアメリカのクライスラーと手を組み、かくしてイプシロンはクライスラーにリバッジされ日本にも右ハンドルで入ってくることになった。



エクステリア



 イプシロンは常にイタリアンモダンの先端である。それはY10の時代から変わらない。美しい曲線、しなやかなライン、陰影で魅せる造形美はこのクルマでなければ得られないものだ。




 Cピラー付近のグラフィックスがとくに美しい。




 リアゲートガラス付近はデルタのデザインに近い。



視界・扱いやすさ



 高く着座し見下ろすポジション。センターメーターはもはや見慣れた光景でもう一歩なにかアイデアが欲しい。繊細でやや女性的なイメージ、または女性が身につけるアクセサリーのようなイメージで統一されている。そのため日本男児にはちょっと腰が引けるところがある。シートリフター、チルトステアリングあり。パワーウインドウは全席ワンタッチ。




 Aピラーは存在感アリ。




 斜め後方視界はやはりデザインの弊害アリ。



インテリア・ラゲッジ



 アップライトに座らせる前席。サイズはこのクラスとしては充分でリラックスできる。腰と尻のサポートのバランスが良く、身を委ねるに不足なし。かつてのイプシロンのように内外装トリムの選択肢はあまりない。

前席頭上空間/こぶし1つ




 後席は、例えばフィアット500より前後左右の余裕はあるように思うが、やはりここもデザインの弊害で天井は低い。筆者が着座すると首をすくめないと収まらない。4枚ドアはあるがパーソナルカーとして使うべし。

後席頭上空間/余裕なし
後席膝前空間/手のひら1枚





 ラゲッジルームはご覧の通り。



エンジン・トランスミッション



 0.9リッター2気筒ターボ、ツインエアはじつにトルクフル。シングルクラッチ2ペダルのデュアルファンクションはいつもの通り、オートで走ると1速から2速に変わるタイミングで「カックン」と来るが、不思議とマニュアルで操作するとこれを感じない。マニュアル操作に対するレスポンスも以前よりずっと素早くなっているし、2気筒をブンブン言わせて軽快にリズミカルにドライブを楽しむ、というのがいちばんこのクルマらしい走り方のようだ。




 2速の守備範囲が広いのは、2速がややハイギアードなのと、エンジンが得意としている領域にドンピシャ合わさっているから。街中で3速はクルージングギア。むろん4速も使えるが2、3を行ったりきたりさせながら行くのがイージーかつ楽しい使い方だろう。



足廻り



 ハンドルのセンターは相変わらず正確で切り始めからの応答はドライバーの意思に忠実。おっとり切ればおっとり動くし、シャープに切ればシャープに動く。そしてハンドルの舵角とロールの発生とその速度の調律が極めて繊細なレベルで行なわれており、じつにデリケートな印象の操舵感覚をもたらす。これはいかにもランチアの味付けで、「ああ、バッジは変わっても、ランチアはランチアなんだな」と胸をなでおろした。乗り心地もあくまでフラット。凹凸を乗り上げてもアシがキチッと吸収し、乗員には極力ショックを与えない。いたって快適なクルマだ。



結論

 ランチアはランチアであった。クライスラーでジープと一緒に並んで売られているが、こいつにはまごうかたなきランチアの血が流れている。そういえばその昔、オートザム・キャロルとテーマ8.32が並んでいたこともあったっけ。ランチアというのはそういうブランドなのだ。歴史は繰り返すというわけか。しかし正規輸入の右ハンドルで、便宜上クライスラーだが、ランチア・イプシロンに今乗れることを喜ぶべきだ。




 ツインエアはバタバタブンブンと懐かしい音を発し、いかにもエンジンらしいエンジン。それを軽快なタッチの2ペダルシフトを漕いで街中や山道を駆け抜けるのはじつに楽しい。イプシロンは燃費も良く、立派なエコカーだ。エコカーというと洗練されて涼しげで静か、という印象を持つが、このクルマ、このエンジンはどこか懐かしさを感じさせる。エコカーでも楽しい。こういうものをこしらえて来るイタリア人の発想に触れるとやっぱり捨てたもんじゃないなと思う。



10項目採点評価

基本ポリシー >>> 8
スタイル/インテリア >>> 9
エンジン/トランスミッション >>> 9
NVH >>> 9
ドライバビリティ >>> 9
スペース >>> 6
気配り度 >>> 7
先見性 >>> 9
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 7



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試乗データ

試乗日:2013年5月8日
試乗車:クライスラー・イプシロン・ゴールド(車両本体価格:2,350,000円)
型式:ABA-84609
エンジン:312A2
トランスミッション:5段オートマチック(2ペダル/乾式シングルクラッチ)
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3835×1675×1520mm
ホイールベース:2390mm
最小回転半径:-
車両重量:1090kg
タイア:185/55R15
JC08モード:19.3Km/L
ボディタイプ:5ドアステーションワゴン
ボディ色:スノーホワイト
内装色:ロマンチックゴールド/ファブリック



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メーカーサイト

http://www.chrysler.co.jp/ypsilon/




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。




前田恵祐



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