「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#159 なんとなくヨーロッパ


 トヨタ・オーリス 120T 試乗インプレッション (2015.4)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 オーリスは、いうなればたくさん売るアテのないトヨタ車だ。そもそもトヨタの客層でこういうクルマを好んで買う人はあまりいないと思われる。これにたとえばコミコミ300万払うならもう少し頑張ってゴルフのコンフォートラインとかプジョー308あたりまで足を伸ばしてしまいたい、というような客層に向けてこのクルマは仕立てられている、と思われる。その実、以前乗った1.8リッターのスポーツモデルRSはまるでヨーロッパ車のような走りの調律を見せていた。今回追加された小排気量省燃費型ターボエンジンの実力はいかに。



 エクステリア



 顔つきはふつうのトヨタ車になった。ヨーロッパ車コンプレックスはやめにして、マークXとかエスティマあたりと類似系。基本的なプロポーションやアイデアは10年以上前のアクセラあたりからまったく進歩なし。ルーフ全体がガラスで覆われているがこれもどこかで見たようなアイデア。とりあえず、ヨーロッパのライバルがやっていることは取り入れました、と。




 旧型アクセラとどこが違うんだ。




 妙ちくりんなゲイ男のコマーシャルはやめた。それすら無くなってしまって、いったい何が売りなのか、何を言いたいのかわからない、いつものトヨタ車に成り下がった。



 運転環境



 ハンドルは手動のチルト&テレスコピック調整。左右独立のエアコン調整はコンパクトにまとめられたボタン操作。このグレードには前席シートヒーター付き。シフトレバーはブーツ付きだが一般的なゲート式。駐車ブレーキはコンソールから生える一般的なレバー式。メーターの数字が放射状に配置され並んでいたのがこれも普通の配置に直って良かった。運転席にはラチェット式ヒップポイント調整(背もたれ連動)あり。パワーウインドウは全席ワンタッチ。




 Aピラーは白くて下側が余計に写り込んでいる。せめて黒く塗ってください。ダッシュボードはあまり写り込まない。サイドミラーはせっかく大きいのに外側上端が斜め切りにされてしまっていて残念無念。




 Dピラーがゴツく、リアウインドウ小さく、サイドウインドウも有効な視界を得られない。現代の日本車として標準的。



 インテリア・ラゲッジ



 今時珍しい、衝立のようにそそり立つダッシュボードはやや圧迫感がある。オーナメントはこのグレードでは木目調。目的は高級感?やや支離滅裂なセンス。




 この運転席シートはトヨタ車としては、あるいはこのクラスとしてはサイズがたっぷりとしていて、身体を優しく、おおらかに支えてくれてなかなかよろしい。この点は相変わらずヨーロッパ車志向。しかし試乗車は走行500キロと満たないのにスエード的な素材のサイドサポート部分に早くも劣化、スレの痕跡が。トヨタ車ユーザーにはあまり見慣れないタイプのシートということなのだろう。ちなみに初代マークXもトヨタの普通乗用車としては異例にサイドサポートが深く、中古車を見るとヤレていないものを見つけることは難しい。

・前席頭上空間/こぶし1つ(ルーフサンシェードを閉じて)




 後席のシートサイズは十分だが、座面はやや平板。背もたれもサイズはいいがヘッドレストは伸ばすと後頭部から遠ざかる。そして伸ばしたヘッドレストに後頭部が接触すると同時に天井に頭頂部がつかえる。塩梅よろしくない。ま、パノラマルーフレスならまた違うのだろう。足元だけは十分以上に広くてちょっとアンバランス。

・後席頭上空間/頭頂部天井に接触
・後席膝前空間/こぶし2つ




 ラゲッジスペースも、このサイズのクルマとしては標準的。もはや驚かない。



 エンジン・トランスミッション



 1.2リッター4気筒、D4にしてミラーサイクル、可変バルブタイミングも備えたターボエンジン。説明では1.8リッターNAエンジン程度の出力との由。同じオーリスの180Sグレードとの比較では馬力で27馬力落ち、トルクで1.3Kgf・m勝る。特別驚くようなところはなく、言われなければ、あるいは言われてもわからないターボエンジン。ちなみにCVTとのマッチングは、基本的に悪くはないがこの個体の初期不良なのか、右左折時などのノロノロ運転をスムーズにコントロールできず、クルマがガクガクする。何とかしたほうがいい。あるいは、ホンモノ志向で行くならここはひとつDCTでしょう。無理だろうけど。




 エアコン作動状態。走行パターンはほぼ100%市街地走行で渋滞はなし。この燃費表示の画像は、停車して少々アイドリングした後の状態だったので10.7Km/Lを示しているが、実際の走行中の平均値は11Km/L中盤から後半あたりを示していた。指定燃料はハイオク。




 足廻り



 前期型RS・Sパッケージの、こと走りにおいてはまるでヨーロッパ車、それもフランス車のように足が綺麗に伸び縮みし、車体上屋はフラットでしなやかな身のこなし、その上で剛性のあるステアリングが正確なハンドリングを実現していた。が・・・この後期120Tはその記憶をもとに乗り込むとガックリさせてくれること請け合いである。ハンドルはかろうじてしっかりとした手応えとインフォメーションを伝えるが、アシはいつものトヨタ、即ち、バネ強く突っ張ってダンパーの動きもただ渋いだけ。そのせいで微小突起や振動の処理にも影響が出てゴロゴロゴトゴトとなにやら落ち着かない。たぶん燃費を重視したセッティングなんだろう、と好意的に受け取っておくが、前期型オーリスRS・Sパッケージが見せた輝きは、現行モデルの、このグレードでは見ることができないと言っておく。




 結論

 で、私は気に入らない。前期型RS・Sパッケージの走りはまさしくヨーロッパ車のそれで、当時とても褒めたことは記憶にあるが、今改めてこの後期型120Tグレードに接してみて、「ヨーロッパ車がライバルです」と公言してはばからないトヨタの売り込み、売り文句は、この状態ではまったくの口先だけであり、あるいはトヨタ自動車はヨーロッパ車を「この程度のもの」と思ってクルマ作りに臨んでいるのだとしたら甚だ腹立たしくなってくる。ヨーロッパのこのクラスのライバル、たとえばゴルフ、たとえばプジョー308あたりがどこまで真面目に細部まで妥協なく作り込まれているかを、このクルマを見る限りトヨタ自動車は認識するに及んでいないと私は断定したいし、なにやら姿かたちだけヨーロッパ的なものを取り入れて、その実中身や細部の作り込みは日本におけるトヨタ基準、それでヨシ、あるいはそれで客は納得するだろうと見立てているトヨタ自動車の姿勢はいかがなものかと強く思う。実際に店にはワーゲンやプジョー、ルノーなどに乗り、それらと比較する客が来るという。そうした客に対し、「ランニングコストがお安く済みますよ」程度のアピールしか、このクルマ本体ができないのだとしたら、そいつはじつに不幸な事であり、時間を割いて商談に来てくれた客に対して失礼だ。ヨーロッパはクルマ作りの先輩だ。もっと謙虚に彼らのクルマ作りを学んだほうがいい。具体的にはデザインやパッケージングはともかく、エンジン・トランスミッション、足廻りの躾け、調律はもっとちゃんとやったほうがいい。ヨーロッパ志向の客はとくにそこを見ているから・・・






・・・あるいは見方を変えるとオーリスは、トヨタにおける実験的なクルマ、あるいはそんなに売れなくてもいいクルマで、実験材料にしてもあまり痛手が出にくいクルマ、ということなのだろう。だからハイブリッドではなく、小排気量省燃費型ターボエンジンの搭載に及んだろうし、トヨタの主力ハイブリッドでないヨーロッパ志向の省燃費商品が、国内でいかに受容性があるかのテストケースと考えることはできる。しかしそうだとしても、もっと真面目にやらないと、たとえばせっかく興味をもったヨーロッパ志向の客をガッカリさせるだけで終わるし、それでは「テストケース」の目的とデータ収集も満足に達成できないのではないか。そうした観点からも、なにやら「なんとなくヨーロッパ」という作り手の煮え切らない「気分」にモヤモヤさせられるし、そんなあたりに大企業の「奢り」のようなものが透けて見えてくる残念なクルマだ。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 6
デザイン >>> 6
エンジン・トランスミッション >>> 6
音・振動の処理 >>> 6
走りの調律度 >>> 6
運転環境と室内空間 >>> 6
ヒトへの優しさ度 >>> 6
卓見度 >>> 6
完成度 >>> 5
バリューフォーマネー >>> 5





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 試乗データ

試乗日:2015年4月23日
試乗車:トヨタ・オーリス 120T
車輌本体価格:2,590,037円(OP含まず)
型式:DBA-NRE185H
エンジン:1196cc直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ(8NR-FTS)
トランスミッション:Super CVT-i
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4330×1760×1480mm
ホイールベース:2600mm
車輌重量:1310kg
最小回転半径:5.2m
タイア:前後195/65R15 91H(ミシュラン)
JC08モード燃費:19.4km/L
燃料タンク容量:50L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:シトラスマイカメタリック<6W2>
内装色/素材:ブラック/本革(パーフォレーション)+ウルトラスエード+合成皮革
装着されていたオプション:
     パノラマルーフ(電動ルーフシェード)(108,000円)
     バックモニター(27,000円)
     T-Connectナビ9インチモデル「NSZT-Y64T」(265,580円)
     ITS対応DSRCユニット(ナビ連動VICS)(48,600円)
     サイドバイザー(ベーシック)(16,200円)
     フロアマット(デラックスタイプ)(21,600円)






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 メーカーサイト

http://toyota.jp/auris/




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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。









前田恵祐
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