「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#162 すべてが噛み合った出色の出来


 日産エクストレイル ハイブリッド 4WD 試乗インプレッション(2015.5)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 じつは日産、SUVのタマは飽和状態で似たようなサイズ、似たような価格に、例えばジューク、デュアリス、そしてエクストレイルと3つも抱えていた。というより、取り揃えていた。しかしそのうちのデュアリスは国内販売がなくなりエクストレイルと統合される形となった。商品というのはニーズが広がる時期を経て成熟期を迎え、やがて収束していく。エクストレイルはその過程に今まさにあるのだと思わされた。現代の自動車商品とは常にそうした変化変遷を辿っている。必ずしも首尾一貫一つのスタンスを貫くばかりではやっていけない、ということか。



 エクステリア



 いわゆるヘビーデューティー系のゴツいデザインからやや洗練された都会的なものに。従前のファンにとってはモノたりないところだろう。私は好意的。




 日産にほかにムラーノというさらに大きなサイズのSUVもあるわけで、それとの兼ね合いも大いに視野に入っている。そしてムラーノはあまり収益を挙げていないから、このクルマがムラーノの領域も多少はカバーしなければならない。ま、社内事情。




 名前から入る先入観を外せないとやれおとなしすぎるだのと苦情を言う人もあろうが、これ単体で見れば、なに、じつにもって落ち着いた雰囲気の大人っぽいデザイン。



 運転環境



 ハンドルは手動のチルト&テレスコピック調整。エアコンのボタン&ダイアルの操作性も簡潔。シフトレバーはストレート式でシンプルだし、その他操作系も整理されていてなかなかよろしい。エクストレイルというクルマは元来ヘビーデューティーカーだが、それならパーキングブレーキはせめてコンソール設置のレバー式の方が諸々使い勝手が良いはずも、これは足踏み式の二度踏み解除。つまりヘビーユースはあまり想定していないことがわかってしまう。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。




 Aピラー方向の図。最近私のブログがAピラーのフロントガラスへの角度が不良で映り込みが煩わしいといった論調を採るようになったせいか(?)、そのあたりの処理がうまいクルマが増えてきた。エクストレイルはややピラー下方が映り込むがそれは最小。ダッシュボードの映り込みも上手く対処している。着座位置を上手く調整すればボンネットも視野に収められる。




 後方目視視界に関しては、ややデザインの割りを食っている印象。



 インテリア・ラゲッジ



 ダッシュボードのデザインは最近の流行りからやや離れていて、しかしそれは古いというわけではなく、我が我がと主張してくるようなウルサイ造形とは一線を画し、綺麗な処理を施しながら目に優しく融和感のあるもので、これは乗員の心理に優しく作用するだろう。最近の日産のデザインはこういうところが大人。




 運転席はサイズも十分でサポートかけ心地ともに充足感あり。ラチェット式高さ調整もあり。ヘッドレストのサイズ、調整幅ともに十分だし、クルマとの一体感を持たせながら振動や突き上げの減衰もこのシート自体が十分に担っている。こういう地味なところをちゃんとやってあるのが好ましい。上出来。

・前席頭上空間/こぶし1つ半




 運転席で得た印象は後席にもそのまま適用できる。サイズ、着座感とも充足感あり。これなら長距離にも抵抗はないだろう。ヘッドレストの調整幅も十分、手を抜いていない。スペース的にも、オザナリだった先代までとは違って、ちゃんと客席としての空間になっており、視界もよく、ファミリーカーにも好適。じつにメデタイ。

・後席頭上空間/こぶし1つ半
・後席膝前空間/こぶし1つ半




 ガソリン車には7人乗り仕様もあるがこのハイブリッドはバッテリー搭載のためそれは不可能なうえ、ややラゲッジルームはかさ上げされている。ま、でもこれだけあれば十分でしょう。昔のハイブリッドカーに比べたら隔世の感。これからも技術革新は進み、デメリットは少なくなっていくはず。




 エンジン・トランスミッション



 既存のMR20DDエンジンにモーターを組み合わせたシステム。以前から感じていたことだが、日産のハイブリッドの走りは気持ちがいい。これもエンジン走行とEV走行の境目がほんとうにわからない。走行中、気が付くと頻繁にエンジンが止まっているし、しかもアウトプットがじつにスムーズ、なめらかで、どこかの某ハイブリッドのように加速中にギクギクしない。爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ。それくらい洗練度が高く、それは机上のシミュレーションに頼らない、走行実験による感性評価を重んじている結果だと思う。あるいはコンピュータシミュレーションでこれをやっているのだとしたら、なおさらスゴい。いずれにせよ、やっぱりこういうところは「さすが日産だねえ」と感心させられる。「技術の日産」にノウハウあり。





 しかもそれでいて、市街地走行100%の試乗中の燃費はメーター読みで18.6Km/Lを記録する。1630kgの車両重量や4WDシステムを抱えた駆動系のロスを考えればこれは十分に満足すべき成果。こいつなかなかヤる。




 足廻り



 基本的にハンドルは軽めでインフォメーションもそこそこなのは現代のトレンドとも言えるところだが、転舵以降のリニアさやなめらかさ、その時のロール運動の発生とその速度のチェックなど、じつによく調整され、振動騒音の減衰も行き届いている。誰もが驚くようなものではないが、一言で言うとナチュラルで素直、違和感なく気持ちよくドライブできる。目立った特徴はないが、このストレスのなさ、静かさ、スムーズさは長距離ドライブの疲労軽減に大きくモノをいう。運転していてイヤにならない。


 またルノー系のプラットフォームの恩恵もあってか、車体やフレームといったクルマとしての骨格や土台をきっちり強靭に作りこんでおいて、その上でブッシュに頼ることなくバネやダンパー系をキレイに作動させることでフラットな乗り心地を得ているあたりも、ごまかしのない真摯な態度でこのクルマが仕立てられているひとつの証左となろう。ただし、タイアはやや燃費寄りチョイスになっているようだから、微振動、微小突起の処理にご不満な向きには多少燃費に目をつむって快適性重視のものに替えてしまうのも一興。さらによくなること請け合い。




 結論

 クルマとしては、久々に日産の矜持を見せつけられたような、じつに正しい姿勢をもって丁寧に手間を惜しまずに作り上げられたいいクルマだ。デザインも個人的にはいいと思うし、運転環境、シート、内装の作りやデザイン、ハイブリッドシステム、足廻りに至るまで、ビシッと意思統一の図られた清々しい仕上がり。ここまで死角のない日産車は最近ではちょっと珍しい。営業・企画と設計・開発、そしてなによりそこに「実験」が噛み合うと、日産はじつは敵がいない。ただ、それらを取りまとめ、調整できる管理職が弱いだけ、という気がする・・・






・・・で、なぜこのクルマに「エクストレイル」の名を与えなければならなかったのか。はっきりいって、このクルマは従前のガサツなエクストレイルではもはやない。あれがよかった人にとってはモノ足りないだろうし、逆に出来の良い乗用車として色眼鏡なしにこのクルマを認識できている人にとっては、あの防水シートなんかには妙に違和感を感じたりしているのではないか。このへんのやや迷いのあるオペレーションが今の日産の、というか、日産は昔からそういうワケのわからないオペレーションを行なうのだけれど、とにかくその辺がやや足を引っ張っている。


 このクルマの出来、この内容なら内装をもっと贅沢に、本革内装を奢ったり、カラーバリエーションももっと明るく贅沢な印象のものを与えたり、変にゴツイ金属調の化粧パネルではなく木目の方がしっくりくるんじゃないか、と思わせるような、そういう仕上がりと資質を持ったクルマだ。


 例えばハリアーなんかよりずっと真面目で仕上がりも洗練されており、またハイブリッドもこちらのほうがはるかに出来がいい。ハリアーにぶつけてKO勝ちできるようなタマになっているのに、そう扱えていない、あくまでも従前の「エクストレイル」的なものに未練があるように思えて、そうしたあたりがビミョーにザンネン。でも、おおいににおすすめできる良い出来のクルマです。オプションの布シートで乗りましょう。ま、防水シートもこのクルマでなら本革っぽく見えてそれはそれで悪くない気もするけれど。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 9
デザイン >>> 8
エンジン・トランスミッション >>> 10
音・振動の処理 >>> 9
走りの調律度 >>> 9
運転環境と室内空間 >>> 9
ヒトへの優しさ度 >>> 8
卓見度 >>> 7
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 7





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 試乗データ

試乗日:2015年5月28日
試乗車:日産・エクストレイル 20Xハイブリッド エマージェンシーブレーキパッケージ
車輌本体価格:3,011,040円(OP含まず)
型式:DAA-HNT32
エンジン:1997cc直列4気筒DOHC直噴(MR20DD)+交流同期電動機(RM31)
トランスミッション:エクストロニックCVT
駆動方式:4WD
全長×全幅×全高:4640×1820×1715mm
ホイールベース:2705mm
車輌重量:1630kg
最小回転半径:5.6m
タイア:前後225/65R17
JC08モード燃費:20.0km/L
燃料タンク容量:60L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:4ヒンジドア+テールゲートのSUV
ボディ色:ブリリアントホワイトパール/特別塗装色/3P/#QAB
内装色/素材:ブラック/防水シート(セルクロス/フレーザークロス/パートナー)
装着されていたオプション:
     特別塗装色(43,200円)
     メモリータイプナビゲーションシステム(MP314D-W)(210,158円)
     バックビューモニター(36,823円)
     ETCユニット(26,050円)
     デュアルカーペット(33,331円)






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 メーカーサイト


http://www2.nissan.co.jp/X-TRAIL/





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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに「正解」を示しているつもりは全くありません。

製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。









前田恵祐
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