「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

#163 晴れオトコ、晴れオンナへ


 マツダ ロードスター S SpecialPackage 6段MT 試乗インプレッション(2015.6)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 ロードスターの、まだ売り出してもいないのにやたらとメディア露出で事前宣伝するという手法はじつにあざとくて気に入らなかった。新しいクルマは少しならずもベールに包まれていたほうが、出た時の喜びが素直に大きくなると思うのだがいかがだろうか。しかし、結論から言ってしまうと、それが失策になっていないのは、ロードスターの人徳のようなものが絶大であり揺らぎなきものになりおおせているからなのである。



 エクステリア



 ロングノーズがさらに強調され、低く直立に(比較的)近い風防、後ろ足付近が筋肉質に力強い造形になっているあたり、いかにも旧来の、オーソドックスなFRオープンスポーツの文法通り。フロントエンドがやや説明的で、もっと明快に明るい表情だとさらにロードスターらしかったのになあ、とも思うが、ひと目でロードスターとわかるアイコン性は持っていると思う。




 フロントエンドは横から見るとなだらかなラインで下っているのがわかる。歩行者との衝突時のダメージ軽減形状。全体的に旧NCより引き締まっていてスマートに見えるのがいい。




 テールのデザインは大胆でかつ目を引くユニークなもの。前側もこれくらいの感じでやってくれたらいいのに。



 運転環境



 ハンドルは手動のチルト。パーキングブレーキは運転手側にあって扱い勝手がよろしい。シフトレバーとハンドルの位置関係、ペダル配置なども理想的。このへんはさすがに作り慣れている。それと、NCではやや意図的にユルめの空間にしてあったが、これは適度にタイトな印象があって、かと言って狭すぎず身体とクルマの寸法的な一体感がよろしい。エアコンはこのグレードだとオートでダイアル操作、パワーウインドウは両席ワンタッチ。ナビやBoseサウンドを備えるが、後述のとおり、それはなくてもいいや、と思わせるだけのものはある。




 Aピラーはフロントスクリーンに対する角度もよく、黒く塗ってあり、写り込みは気にならない。ただ、ちょっとだけダッシュボードの表面にツヤがありすぎてこれが映り込むのが気になった。敢えて高くされたフェンダーの峰は運転席から常に視野に収められ、これは走行ラインを決めるのに大いに役立つし、狭い道の取り回しに極めて有効なのはいうまでもない。Aピラーの位置、またサイドミラーの位置、ともにやや後ろ寄りな気がする。ま、慣れのモンダイか。




 幌を上げた時の目視後方視界はこんな感じ。



 インテリア・ラゲッジ



 シートも軽量化の対象となっていて、独特の構造を持つ。調整機能としてはリクライニングと前後スライド、そして座面前端の高さ調整だが、ほぼ不満なくポジションは決まる。座面前端の高さ調整は特にバックレストとの密着と耐圧分散に関わるところで、個人の好みも出てくるところだから、いろいろ制約のある中でこの調整機能を持つのは親切。かけ心地は率直言ってエスロクよりちょっと劣っていると個人的には思うけれど、イヤならレカロにでも付け替えてしまえばいいし、さらにいうならレカロ付きの限定車なんかの可能性も無いではないだろうし・・・

・前席頭上空間/こぶし1つ



 ゴルフバッグは助手席に。ヘタに電動幌やメタルトップを付けるとトランクが無効になってしまう。手動でも十分に扱いやすいし、スペースも食わない。二人分の荷物を積んで旅行先までオープンで走れるというのは大いに重要。




 幌の内側のロックは中央の一箇所。ここのホックを外すと窓が下がり、そのままパタパタと折り畳んでオープンにしてしまえる。信号待ちの間に操作可能。ね、手で十分でしょう?




 閉めるときは、コンソールボックス上部のノブを引くとロックが外れて、これまたパタパタと手軽に閉めてしまえる。この気安さ、手軽さ、そして手早さ。これでいい、これで十分、これがスポーティってもんだよ。



 エンジン・トランスミッション



 既存のエンジンをスポーツカー用に仕立て直した、という意味では、現代のどのスポーツカーにおいても同じこと。もともとこのエンジンは素直でスムーズな回転フィールを持っていたから、マニュアルでダイレクトに駆っても「ゲーーッ」てことにはならないだろうとは思っていたが、でも想像以上ではなかった。取り立ててシャープでも情熱的でもない。耳を塞げば。それと6段マニュアルのギアレシオがチョピーーッとワイドに振られている気がして、個人的にはもう少し、エンジンが普通な分ギアリングでシャープさを演出する手もあるんじゃないかなとは思った。基本的に低速トルクもあるし、素直で扱いやすい。




 で、耳を塞がなければ・・・なんとゴキゲンなことか。アイドリングでは当然今のクルマだから静か。しかし一旦走り出し排圧がかかるとエキゾースト系から聞こえてくる乾いた甲高いサウンドがじつに刺激的で、ついつい空吹かしをやらかしてしまいたくなるし、信号が赤に変わったらちゃんとダブルクラッチでエンジンブレーキだ。試しにトップエンドまで引っ張ると、オーバーでなくフェラーリみたいな音がする。いいんだろうか、これ、イタリアのブランドでも売るんだよね?向こうでやり直す手間、省いた?


 ギアリングがちょっとワイドと感じはしたものの、コクンコクンと気持ちよく決まるシフトはその操作自体が楽しいし、クラッチも適度に短く、スパッと決まるから、ちゃんと練習して回転を合わせてシフト/クラッチ操作を素早くなめらかに行なう楽しみもある。スポーツカーとはそういう乗り物。多少敷居の高いものだし、挑戦して、習得して、そして手懐けられるように自ら成長する楽しみというのもまた格別なのだ。


 真夏の日差しの下、ゴキゲンなエキゾーストノートをBGMに風と友達になる。エンジンとギアボックスとタイアと路面は常にダイレクトで、速度も、グリップも、クルマの挙動全てをドライバーが掌握し、他の意思が介在しないこのシンプルな主体感。この上ナビゲーションだのBoseサウンドシステムだのと付加価値を盛るのは極上の霜降り肉にフォアグラを乗っけて食うようなものだ。わさび醤油で十分じゃないか。




 と、いうわけで、高速、一般道、ワインディングと、それなりに楽しんで、メーター読み13.2Km/Lの表示。このクルマにはオプションのi-ELOOPやi-STOPも備わっており、ロードスターの中では燃費に有利な設定のはず。マニュアルで乗ると、たぶん楽しまずにはいられないから燃費を良くしたい人は相当な自制心が必要だと思う。あるいは素直に6段オートマにしてしまうか。




 足廻り



 軽く、しかも丈夫に作ることに心砕いたという今回のロードスター。その成果は乗ると十分に伝わってくる。軽くてカッチリしている、という点においてこの価格、このクラスのものとしてはこれ以上望むことはできないレベル。基礎としてこのボディをこの段階で作り上げられたことは今後の展開にも大きくモノを言うだろう・・・


・・・ということは、展開が必要だ、ということでもあって、個人的には短周期のピッチングがやや気になったのと、バネ系のストロークがもう少し素直であったほうが、むしろヒラヒラ感があって楽しいのではないかと思う。初代ロードスターは姿勢変化を積極的に楽しめるクルマに設えてあったし、姿勢変化を味方にしてトバすという楽しみもあった。その点このクルマはあくまでもピシッと安定していること、その上でタイアの特性と前軸の設定で曲がりを「作り出す」という方向性で、それはたしかに今風なのだけれど、もう少しクルマが重力遠心力をセンシティブに感じている様子が伝わって来る方が、ドライバーにとっては一体感になるような気がする。


 ほか、しっかりとしたボディに加え、ソリッドなタッチで確実な効きを示すブレーキや、ハンドル自体のマスは多少感じるものの、その中で最大限繊細なフィードバックと手応えを寄越すステアリング系など、基本中の基本は当然のようにきっちり押さえられている。




 結論

 期待値の高いクルマであるが故に、いろんな意見も出てくるだろうし、私も言いたいことは言わせてもらった。だけど、スカッと晴れ渡った夏空のように、このクルマはシンプルに人を機嫌よくさせてくれる才能を持っていることだけは間違いない。その意味で、今日のこの天気はまさしくロードスター日和と言えた。いい音がするエンジンをマニュアルで思いのままに操る、このクラシックなスポーツカーの大原則を、いつまでもロードスターというクルマは守り通すのだろうし、そういう意思を持ったクルマが、やれハイブリッド、やれ電気自動車、やれ自動運転だのとクルマが勝手に判断してしまう時代にこうして産み落とされることの幸せを、多くのクルマ好きは感じていることだろう。






 今後どうなるのかは分からないが、電動トップをやめたのは正解だったと思う。余計なものは取り付けない方がロードスターらしい。軽いほうがいいに決まっているのだ。それは物質的な軽さでもあるし、心の贅肉を削いだ軽さでもある。重いボディにいろんなデバイス、デカいエンジン、額面上立派なスペックとご高説を並べ立て、理屈で速く走らせようというスポーツカーらしきものは世の中に掃き捨てるほどある。しかし余計なものを省き、本当に必要とされているところだけを強化して、頭ではなく身体と心に湧き上がる躍動感こそ、本当のスポーツマインドというものだ。


 身も心も、クルマも、軽いほうがいい。


 しかし、このクルマは、残念ながら財布が軽い人間には手の出しにくいクルマになりおおせてしまった。それだけはいかんともしがたく、残念だ。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 9
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 8
走りの調律度 >>> 7
運転環境と室内空間 >>> 8
ヒトへの優しさ度 >>> 8
卓見度 >>> 9
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 7





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 試乗データ

試乗日:2015年6月1日
試乗車:マツダ・ロードスターS Special Package
車輌本体価格:2,700,000円(OP含まず)
型式:DBA-ND5RC
エンジン:1496cc直列4気筒DOHC直噴(P5-VP[RS]型)
トランスミッション:3ペダル6段マニュアル
駆動方式:FR
全長×全幅×全高:3915×1735×1235mm
ホイールベース:2310mm
車輌重量:1030kg
最小回転半径:4.7m
タイア:前後195/50R16 84V(ヨコハマ・ADVAN)
JC08モード燃費:18.8km/L
燃料タンク容量:40L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:2ドア2シーター・オープン
ボディ色:セラミックメタリック
内装色/素材:ブラック/ファブリック
装着されていたオプション:
     セーフティパッケージ(108,000円)
     ・ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)
      (リア・クロス・トラフィック・アラート機能付)
     ・車線逸脱警報システム(LDWS)
     ・アダプティブ・フロント・ライティング・システム(AFS)
     ・ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC)
     CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(32,400円)
     Boseサウンドシステム(AUDIOPILOT2)+9スピーカー(75,600円)
     i-ELOOP+i-stop(86,400円)
     フロアマット(プレミアム)(28,728円)
     ナンバープレートホルダー(フロント・リア)+ロックボルト(9,720円)






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 メーカーサイト

http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/




協力店/マツダオートザム旭

http://www.mazda-autozamasahi.com/





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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに「正解」を示しているつもりは全くありません。

製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。









前田恵祐
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