「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#169 ファーストクラスの一歩手前で寸止め


 VWパサート ヴァリアント コンフォートライン 試乗インプレッション(2015.9)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 フォルクスワーゲンはどうなりたいのだろう。スタイリングやその質感を見ているとアウディになろう、なろうとしているようにも見えるし、同時に昔からの「気安さ」のようなものも残そうとしているようにも見える。フォルクスワーゲンは、高級でこそないが高品質乗用車のメーカーという認知、認識で、その中でもサルーンとして最上級クラスとなるパサートはCクラスや3シリーズに手が届き、パサートそのものには国産のコンペティター、たとえばマツダ・アテンザやCX-5あたりからも手が届くというところにいる。



 エクステリア



 水平ラインを強調したフロントマスクが印象的。サイドのキャラクターラインの折り目もややキツめで板金屋泣かせの予感。全体的に丸より直線、エッジを強調した印象のデザインで、それはやはりワーゲンとしての上級グレードの意味で、ややオーセンティックな雰囲気を持たせたいという意図があってのものだろう。




 全長4.8メートルに迫る堂々としたプロポーション。ホイールは17インチ。派手なところがなく主張もほどほど。地味だがよく見ると質感が高い、という静かな喜びが得られるタイプ。確実に金持ち向きのファッションでない。それがいいのだ。




 テールデザインにはアウディのバッジをつけても良さそうな雰囲気が。しかしここにも行き過ぎていない身なり、寸止めの美学のようなものが働いている。



 運転環境



 ハンドルはチルト、テレスコピックともマニュアル調整ながらその調整幅は極めて大きい。ハンドルの径はやや小さめで下端が水平にカットされており真円でないのは昨今のトレンド。しかし足がつかえるわけでなし、ちょっと意味不明。ライン装着ナビはボタン操作とタッチパネルの混合式で、空調の操作系は完全に分けてありこちらはダイアルとボタンで簡潔にまとめてある。パーキングブレーキは電気スイッチによる操作。パワーウインドウは全席ワンタッチ。DSGのマニュアルシフトは、レバーを引いてダウン。パドルシフトはハンドルの動きと同調するタイプで左がダウン。




 覚えるのにちょっと手間取りそうな運転席シートの調節機構。左から、ラチェット式高さ調整、電動式リクライナー、電動ランバーサポート、これとは別に座って左手下にスライドの解除レバーがあるという構成。




 国産からの乗り換え組からはペダルオフセットが気になるという声もあるというが、個人的にはまったく気にならない。しっかりとしたサイズと剛性をもつペダル類とフットレストへの信頼感は高い。ただワーゲンの常というべきか、アクセルとブレーキの高低差が気になる人もあるだろう。




 日なたに出すとこうなる前方視界。Aピラーは大映しに。加えてダッシュボードのベンチレーターや加飾パネルも大映し。これは改善の余地大。サイドミラーも外へ行くに従って絞られた形状を持ち、十全に機能を発揮していない。いくら補助装置がついていても目で確認できなければなんの意味もない。
(今回は後方視界画像無しです)



 インテリア・ラゲッジ



 ここでも水平基調を強く印象づけたかったのだろうが、ベンチレーターのラインがやや煩雑で目障り。シルバーの加飾パネルもまたしかり。先のフロントガラスへの映り込みも気になる。ひとつ前のモデルはもうすこし落ち着いた印象でまとめられていたのに、ちょっとわざとらしい。




 十全に剛性を確保したフレームにしっかりとコシのあるクッションを与え、たっぷりとしたサイズで確実に、そしておおらかに身体を受け止めてくれるいつものワーゲンがここにあるとも言うべき前席シート。サスペンションセッティングとの調整もよく、クルマとの一体感と不快な上下動や振動の減衰をうまくバランスさせ、運転そのものに前向きになれるタイプ。座面の後傾角もあり、体重を座面のみならずバックレスト側にも預けることでさらなる一体感と疲労低減に効果を発揮する。
 
・前席頭上空間/こぶし2つ




 前席とまったく見劣りしない後席のかけ心地。サイズ、硬さ、また見落とされがちな後傾角もしっかり研究されていて身体を安心して委ねつつ確実にホールドされ、正しく着座することによって持ち味を発揮する理論的な作り。国産車の多くはこうしたところにブレが多くて、後席の乗員の姿勢をだらしなく自由にさせることで茶を濁していることが多いが、安全面、また耐疲労の面から言っても、正しい姿勢で着座し、その状態で最も高い機能を発揮する作りとしてあることが望ましいことは言うまでもない。フロアも広く、つま先が前席下に収まり、窮屈感も極めて薄い。

・後席頭上空間/こぶし2つ
・後席膝前空間/こぶし2つ半



 広大なラゲッジスペース。小学生くらいまでの子供ならちょっとした寝床くらいにはなるだろう広さ。むろん何かを積むということは実用上このクルマの使命とも言うべきところだが、「積める」というキャパシティを買うという意味でも選択肢には十分になり得る。かならずしも「積まなければならない」と思ってはいけない。



 エンジン・トランスミッション



 1.4リッター直噴ターボは150馬力。軽快に回りフリクションも少ないと見えてエンジンブレーキの効きも弱め。現代のエコカーの常である。大きな車体に、やはり小排気量のエンジンの存在感は薄く、振動や騒音のレベルも、そもそもエンジンが小さいから相対的に低い、という印象。といって力不足は全くないから不満もないが、従来のドイツ車らしい重厚だったり、濃厚なトルクを味わいたいと思う人には不向き。ディーゼルも来る予定らしいからそれを待つのも一手。ボンネットはダンパーで支持。


 DSGのマナーはもはやトルコン式オートマと区別がつかないかそれ以上の素早さとダイレクトさを持つことは明白だが、一点だけ、発進時の作動にはややぎこちなさが残る。やはりストップアンドゴーの多いこの日本では気になる要素だろう。また、後退防止ブレーキがそなわり、停車するたびに自動的にブレーキがかかりっぱなしになり、アクセルオンで解除となるが、この時にもやや唐突に解除、クラッチミートが重なりスムーズでない。後退時には適度なクリープも発生しこの点はとても具合が良かった。




 50%市街地、25%山坂道、25%高速、という割合で走って10.7Km/Lの表示。このあとさらに11Km/Lまで伸びた。市街地オンリーだと8Km/L台後半で、巡航時に気筒休止が作動すると一気に数値が伸びる。アイドリングストップだけでは稼げない模様。



 足廻り



 今回のパサートで一番進化したのがこの分野かも知れない。全体的に軽快な印象で車重を感じさせない。動きもなめらかでしっとり、ゆったりしている。姿勢変化が極めて少なく、いわゆるボディコントロールが十全に行き届いている。ジオメトリー変化も少なくアーム類のリーチにも不足はないようでロールやノーズダイブもバネ系というよりジオメトリーで抑制できている印象。良路でゆったり走る分にはまったく不満はなく、高級車の身のこなしをしてくれると言ってもさしつかえない。


 ただ、気になるのは、タイアサイズは標準の215/55R17が上限であろうということ。その理由は、路面が荒れた際の振動の減衰が現状でも手一杯という印象で、これより更にサイズアップすると、おそらくだがかなり全体の仕上がりのバランスが狂うことを予測する。こうしたあたり、骨格や足廻りパーツの剛性の確保がある程度見切られているのではないだろうか。路面や状況によって「余裕綽々」といった足取りにはなっていないところが、やはり「寸止め」なのだと思われた。



 結論

 高級車を目指しながら、高級車の一歩手前で寸止めにしているような気がする。それはフォルクスワーゲンがあくまでもブランドとして「実用品」であることを旨としているところに端を発しているのではないだろうか。だから、実用車として乗れば大満足だと思う。昔のパサートは本当に「大きな実用車」といった風情で身なりがイマイチ冴えないところがあったが、このクルマはもうそんなことはない。






 視界を主として運転環境に、国産車以上の見切りの低さを感じる点は非常に残念だが、とくにシートの着座感やその着座姿勢に対する真面目な考え方、高級とは言い切れないが、この点においては実用車として見切り点の高い足廻りの設定など、ワーゲンならではの良いところを随所に感じることのできる一台であることは確か。このサイズの外国車としてお値段もリーズナブルなところにあり、鼻にかけたところのない気安く付き合える外国車、あるいは国産からも気軽に手を伸ばせる存在として、パサートはなかなかいい位置にいるクルマだと思う。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 8
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 8
走りの調律度 >>> 8
運転環境と室内空間 >>> 7
ヒトへの優しさ度 >>> 8
卓見度 >>> 8
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 8






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 試乗データ

試乗日:2015年9月4日
試乗車:フォルクスワーゲン パサートヴァリアント コンフォートライン
車輌本体価格:3,789,900円(OP含まず)
型式:DBA-3CCZE
エンジン:1394cc 水冷直列4気筒直噴ターボ [CZE]
トランスミッション:2ペダル7段デュアルクラッチトランスミッション [DSG]
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4775×1830×1485mm
ホイールベース:2790mm
車輌重量:1510kg
最小回転半径:5.4m
タイア:前後225/55R17 [コンチネンタル]
JC08モード燃費:20.4Km/L
燃料タンク容量:59L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:5ドア/5人乗りステーションワゴン
ボディ色:タングステンシルバーメタリック(K5)
内装色/素材:チタンブラック/ファブリック(TO)
装着されていたオプション:
     フロアマット(14,000円)
     純正インフォテイメントシステム"Discover Pro"パッケージ(216,000円)
     LEDヘッドライトパッケージ(162,000円)
     





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 メーカーサイト


http://www.volkswagen.co.jp/ja/models/passat.html








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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」を見つけるのはあなた自身の仕事です。

製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。






2015.9.4
前田恵祐

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