「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#170 高いだけのことはある、上品だ


 アウディ A4 セダン 2.0TFSI クアトロ 試乗インプレッション(2015.9)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 アウディとはほとんどご縁がなく、今までに運転したことがあるのは初代A4、1.8ターボ/クアトロのMTくらい。まだあの頃は「高いワーゲン」的な雰囲気を残していて、イマイチ冴えの見えにくいところもあったりしたが、その後の10年でアウディは本当のプレミアムブランドになった...という世間の評判である。近代アウディのいいところはあまり出しゃばらない、程よい調度や身なりに高い質感をもたらす工作精度の確かさ、走りの良さなど言われているが、筆者には「ただのカッコつけじゃねえか」くらいの認識しかなく...。


 何に乗ろうかと迷った挙句A4にした。以前にも乗ったことがあるということもあるし、アウディのボリュームゾーンであるというところも小さくない。それにA3になるとエンジンは横置きでワーゲンとの共有領域も小さくはなさそうだ...が、このA4、聞けばもはやモデル末期。しかし成熟したヨーロッパ車の最終型というのも味わっておいていいだろう、また新型が出たら乗りに行って違いを確かめるのも悪くない、というわけで、来春にはもう一度新型に乗りに行きます。



 エクステリア



 アウディは高級ブランドとして認知を得たが、だからといってこれみよがしなところがなく、どこか知的な雰囲気を醸し出しているところが評判の源だと思う。後付けではない、ほんとうに育ちの良い、趣味の良い暮らしぶりをイメージさせるあたりがミソ。




 全長は4.73メートル。アヴァントでも変わらない。ワーゲンのパサートより短い。ということはこちらのほうがグレードが下という認識でいいのだろうか。でもお値段は約100万円高い。




 試乗車にはオプションの「ダイナミックライン」が備わっており、若干ヤル気のある外観になっているというがそれでも控えめ。オトナ。



 運転環境



 ハンドルはチルト、テレスコピックともマニュアル調整。シートはオールパワー。駐車ブレーキは電気スイッチ。パワーウインドウは全席ワンタッチ。見やすく明快なアナログ式計器盤と絶妙な位置関係にあるナビゲーションモニター。エアコンスイッチはダイアルとプッシュボタンでこれも簡潔。全体的にスポーツカーのようなタイト感のある運転席。ハンドルは握りが太く外径も小さいが真円(に近い)形状。




 パワーシートスイッチは一般的なロジックで明快。ペダルオフセットも気にならずペダル自体の剛性感もあって、やはりこういうところから「ドイツ」を感じさせるのだと思う。アクセルとブレーキの高低差はやや大きめ。




 Aピラー方向の視界。Aピラーそのものは内装色に合わせてブラックアウトされており、映り込みは気にならない。ダッシュボード上面はややのっぺりとしていて、日当に出るとうっすらと前方視界に映り込むがあまり気にならない。ミラーのステーは細めで小さいスペースを有効な視界に割り当てる努力が見て取れる。ただ、前方視界は総じて、視野の切り取り方が人に優しくなく、スラントしているノーズは当然まるで見えないし、その先端にも自信が持てるような工夫は今ひとつ感じられなかった。




 Cピラー方向の実視界。内装の分厚さをあまり感じさせず、しかも窓の角切りをきっちりしてあるため、画像のようにヘッドレストを上げずに格納しておけば現代のクルマとしては満足な目視視界を得ることが出来る方だと思う。



 インテリア・ラゲッジ



 あまりごちゃごちゃしていないながら質感が高く「イイモノ感」や「充足感」のある内装。試乗車は黒系のカラーチョイスだが、これはグレードやオプションによって木目などの加飾パネルも含め様々選べる。昔は田舎臭い「ジャーマングレー」ばかりだった。




 試乗車はややサイドサポートのせり出したスポーティなシート。クッションもやや堅めで反発感もあるように感じさせながら、時間とともに身体に馴染む、いつものドイツ車のシート。サイズもたっぷりとしていて思ったほど拘束感もないが、ドライバーを弛緩させず適度な緊張を与えながら自然体を保つことが出来る理性的で冷静なかけ心地。なかなか具合がよろしい。
 
・前席頭上空間/こぶし2つ




 広さ的には余裕十分の後席。しかし不満は二点。まず背もたれの角度が立ちすぎていて体圧の分散を背もたれ側に担わせることがしにくいこと。これはきっと疲労の原因。リラックスできない。もう一つは前席下へつま先を入れようとすると奥が浅く拒否されること。シートサイズや頭上高、ヘッドレストの調整幅なども満足なのに、細かいところがもうちょっとだった。

・後席頭上空間/手のひら2枚
・後席膝前空間/こぶし2つ



 奥行きのあるトランクスペース。ドイツ車の常で側面はもうちょっと彫り込んで欲しい気もするが広さとしては充分以上。



 エンジン・トランスミッション



 縦置き2リッター直噴ターボエンジンは211馬力と35.7Kg・mのアウトプット。静かでなめらか、フリクションも少なく常に「シュン」と回ってくれる軽やかさが身上。現代の2リッターターボエンジンとしては常識的な印象。振動や騒音をしっかり抑えられているあたりもやはり価格相応で高級車としての資質は高い。それにはやはり「縦置き」のメリットも大きく作用していると思う。ボンネットはダンパーで支持。


 Sトロニックと呼ぶツインクラッチトランスミッションは湿式クラッチを用いており、発進時のなめらかさ、自然なフィーリングなど、あらゆる面で乾式よりも仕上がりがいい。クリープはちょっと弱い気もするが、乾式よりずっと低速時のコントロールはしやすいはず。




 100%市街地を走行しての試乗中の燃費は10.3Km/Lだった。アイドリングストップも頻繁に働き、またエンジンの潤沢なトルクによりアクセル開度が小さくとも十分にスピードに乗ってくれるといった印象の走りもこの結果に寄与しているものと思う。



 足廻り



 重量の嵩むであろうオプション(ダイナミックライン)の18インチタイアとホイールを擁しながら、十全に履きこなしている足廻り。ゆったりとしたストロークを感じさせるタイプでこそないが、その範囲で綺麗にアシを上下させ路面の凹凸をいなすだけでなく、高Gがかかった際の食いつきと粘りも感じられ、総じて洗練された印象の身のこなし。常にフラット。じつに落ち着いたボディコントロール。


 ハンドルはやや軽めで低速時には「これはもしかすると」と思わせるが、速度が上がると十分な手ごたえとインフォメーションを寄越し、ドライバーに十全の自信をもたらしてくれるタイプだ。ドイツ車としてはニュートラルをあまり意識させないステアリングで、切り始めも自然だし、その後の反応もグイグイ曲がるというより、四輪にかかった駆動力もうまく動員して、クルマ全体で曲がっていくという印象。駆動配分は前4:後6。


 スロットルのオンオフをやるとパワーパックや駆動系の動揺を観察できるが、相変わらずそこはピシッと躾けられていて余計な動きをしないのと、ギア系の工作精度の高さを印象付けるバックラッシュの少なさ、全体のスムーズさが印象的。じつに上品だ。



 結論

 アウディの悲願はテクノロジー、とくに四輪駆動によるプレミアムの称号を得ることだったが、結局それは成らなかったのだと思う。2000年代に入って突如モード系の「わかりやすい」デザインを施すようになり、どちらかというと見た目、身なりで高級をアピールすることで現在の立ち位置をようやくにして得ることができたという印象が、個人的には強い。結局ユーザーはそこしか見ていないのか、という「クアトロさん」の声が聞こえてきそうだ。






 確かにワーゲンに対して高級ブランドというポジションであり、誰かがワーゲングループのレクサスだなどと揶揄したりもしたが、先日試乗したワーゲンが大衆車としてのある程度の見切りをはっきりと持っていることに対して、こちらアウディは高級乗用車として妥協の少ない作り込みを持ち、それは外観やイメージにとらわれない、走行フィーリングやメカニズムにおいても行き渡っていることが確認できる。


 いずれにせよ、「アウディブランド」が高級車の一つに認められるようになってよかった。大願は成就したということで、よろしいのではないでしょうか。


 来春の新型A4の試乗もお楽しみに。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 9
デザイン >>> 8
エンジン・トランスミッション >>> 9
音・振動の処理 >>> 9
走りの調律度 >>> 10
運転環境と室内空間 >>> 8
ヒトへの優しさ度 >>> 8
卓見度 >>> 7
完成度 >>> 10
バリューフォーマネー >>> 8






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 試乗データ

試乗日:2015年9月23日
試乗車:アウディ A4 セダン 2.0TFSIクワトロ ダイナミックライン
車輌本体価格:5,950,000円(OP込み)
型式:DBA-8KCDNF
エンジン:1984cc 水冷直列4気筒直噴ターボ [CDN]
トランスミッション:2ペダル7段デュアルクラッチトランスミッション [Sトロニック]
駆動方式:フルタイム4WD
全長×全幅×全高:4730×1825×1420mm
ホイールベース:2810mm
車輌重量:1680kg
最小回転半径:5.5m
タイア:前後245/40R18 [ピレリ・チンチュラートP7]
JC08モード燃費:13.6Km/L
燃料タンク容量:61L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:4ドア/5人乗りノッチバックセダン
ボディ色:ムーンライトブルー・メタリック
内装色/素材:ブラック/スプリントクロス&レザー
装着されていたオプション:
     フロアマット(32,400円)
     





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 メーカーサイト

http://www.audi.co.jp/jp/brand/ja/models/a4/a4.html








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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」を見つけるのはあなた自身の仕事です。

製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。






2015.9.23
前田恵祐

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