「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#173 これで期待に応えられるのか


 トヨタ プリウス S ツーリングセレクション 試乗インプレッション(2016.1)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 プリウスも四代目、初代から数えて二十年が経とうとしている。もはや日本のエコカーとして代表的なブランドであり、200万円台から300万円台のクラスのクルマとして、かつてのマークⅡに代わる定番商品の地位を獲得した感もある。定番商品のモデルチェンジは難しい。手堅くイメージを崩さずに新しさを盛り込まなければならない。今回のプリウスはそのテーマに直面しているように思える。


 エクステリア



 個人的にこの”ヘン顔”にはもう慣れた。しかしどうしてここまで「異物感」の残る印象のデザインを採るのだろう。優等生なら優等生らしく端正な顔立ちで行けばいいものを、なんだか「秀才のスベリまくったヘン顔」みたいでちょっとサムイ。




 燃料電池車MIRAIのイメージをどことなく感じさせるフォルム。低重心化を謳っているが実際には窓の下端が低くなったりして視界が良くなった印象がある。




 テールランプの”電飾”はちょっとヤリスギな感もあるが、ここにもMIRAI感のある意匠を用いて新しいイメージを与えようとしている。



 運転環境



 ハンドルはチルト、テレスコピックとも手動調整。シートもこのグレードは手動でラチェット式シートリフターが備わりその調整幅も大きい。駐車ブレーキは足踏み式で解除は二度踏みなのはちょっと意外。シフター脇の「Pボタン」を駐車ブレーキと勘違いしそうな気がする。パワーウインドウは全席ワンタッチ。ハンドルのグリップは太めの真円。エアコン操作は一般的なプッシュスイッチでちゃんと押した手応えのあるタイプ。ナビは社外品対応の規格でスペースが採られている。




 フットレストと駐車ブレーキペダルの干渉が少ない。細かいところだが意外と大事。アクセルとブレーキのペダルサイズは国産車として常識的なもので踏み変え段差も気にならない。




 Aピラーは先代より細められているが昨今のトヨタにしては太めか。角度も悪くフロントガラスに映り込む。他にもダッシュボードの明るいグレーがフロントガラスやサイドウインドウに写りこんでいるあたりの処理が残念。




 Cピラーをくり抜いてくれるとさらに視野確保の助けになるがそうはなっていない。基本的に内装もシェイプされていて厚ぼったくなく外界の見え方もすっきりしている。



 インテリア・ラゲッジ



 昨今のトヨタ車のインテリアの文法に則った曲線基調のデザインに明るいグレーの組み合わせでややアバンギャルドな印象のダッシュボード。先にも記したがウインドウの下端が低くなり外界の見え方がすっきりとした印象。というか、普通になった。




 シート表皮は合成皮革。もはや本革と区別がつかないほど安っぽくない。シートのサイズは背もたれの高さもあり、ヘッドレストは大きめ。なんだかどんどんボルボのシートに似てきているが、それはある意味正しい傾向。が、必ずしもボルボのようなかけ心地にはなっていない。国産、トヨタとしては充実した前席ではある。リフターを下げると十分な後傾角を得られる。
 
・前席頭上空間/こぶし1つ半




 サイドウインドウが小さく着座すると閉所感があるかなと思ったが、スペースの取り方がうまいのと内装色の明るさでそれをカバーしている印象。前方視界もよろしい。後席シートサイズはまあまあ。ヘッドレストも欲しいところまでステーが伸びてくれる。従来のような天井の低さを感じることはない。快適な後席。

・後席頭上空間/手のひら2枚
・後席膝前空間/こぶし1つ半



 ラゲッジスペースにはゴルフバッグ3つ収納可能との由。従来より格段の進歩というわけではなさそうだがこれだけあれば充分でしょう。試乗車にはオプションのスペアタイアが床下に収まっていた。



 エンジン・トランスミッション



 基本的にパワートレインは従来のブラッシュアップ版という認識でよさそう。目覚しく新しいトライは行っていない模様。ま、それでも燃費の値を大きく伸ばせているのだからまだまだ伸びしろはあったということなのだろうが、しかしそろそろ新しいチャレンジを行わないと同業他社(車)からの追随も激しいかろう。その意味で、リッター40Kmを超えた(一部グレード)という数値だけでは大きなインパクトにはならなくなっていると思う。新しい技術的要素で刷新するくらいでなければ期待を上回ることは難しいだろう。


 例えば、エンジンは従来よりはっきりとかかる回数が減っているし、モーターもさらにパワフルで静かになっていることは認めるが、それはあくまで正常進化の範囲でしかない。個人的にハイブリッドはゆくゆくエンジンがさらに「退化」していくはずで、そうあるべきだとも思っているが、このクルマのエンジンは依然として従来と同じ排気量になっている。よりモーターを主役に据えた構成を見据えていかなければ次なるブレークスルーも生まれないのではないだろうか。




 100%市街地を走行しての試乗中の燃費は22.3Km/Lの表示。瞬間的には30Km/L台も記録していることになる。特にエコドライブに徹したわけでもなくプリウスの市街地燃費としては妥当なところだろうか。ちなみに、同じコースではなかったが、カローラフィールダーのHVは29Km/L台がアベレージだった。



 足廻り



 ツーリングセレクションは17インチ45%偏平タイアを備える。第一印象はしっとりとして重厚、ノイズバイブレーションの減衰も十全でなかなか高級感のある乗り味。やや引き締まったバネ系をイメージさせるが硬すぎることはなく、路面に吸い付く感じが走りの手応えとしてなかなか心地よい。従来のプリウスはこのあたり明らかに見切って作られていた感があって、ブルブル、ワナワナと安っぽさを感じさせたが、今回はそこを改善してきた。


 重心を下げました、と盛んに宣伝しているが、その必要はなかったと思う。背が高かったり着座点が高かったりしてもロールセンターやホイールストローク、ジオメトリーなどをうまく設定すれば安定感のある走りは実現できるし、低くすれば即ちそれをもって解決というのはちょっと安易な気がする。


 実際にトヨタ車としてはホイールストロークやアーム長に不足はさほど感じないレベルではあったが、ロールセンターを低くして上屋を大きな振り子にすることでロールを発生させ、それをバネ系がグッと支えているという一連の動きが、「あまりクルマに詳しくない人」にとっては「しっかり感がある」というふうに捉えてもらえる新型プリウスのアシの設定ではあるだろう。ちょうどこのあたり、BMWなどのドイツ車に近い印象で、その点からも理解を得やすい設定だと考えられるが、より高度に走安性と快適性を両立できる設定は存在すると思う。基礎はいいのにもう一歩。



 結論

 総じて、常識的な正常進化、というのが新型プリウスへの感想。想像を大きく超えることはなかったし、驚かされるところもなかったが、乗ってみれば走行フィーリングの改善幅は大きく、またドアの開閉音など、まるで高級乗用車のようなズッシリ感さえあって、従来型への批判に対して一つ一つを丁寧に潰してきたという印象が強い。80点主義のトヨタ製品らしい出来といえば出来ではあると思う。






 いいクルマだがそれは従前の枠内でしかない。プリウスというクルマは初代が登場した時のインパクトが最大で、代を重ねるごとに一般化の道を進んでいるように思える。トヨタ車というのは往々にしてそういう経緯を辿ることが多いし、プリウスは定番商品としての「社会的地位」のようなものも獲得してしまっているがゆえに萎縮しているようなところもあるのではないだろうか。そろそろパワートレーンも大幅刷新のタイミングかなと思っていたが、それはやってこなかった。骨格を新しくしたといっているが、そんなものはフルモデルチェンジなら誰しも普通におこなっていることで特別なことではない。


 なんだか守りに入っていることを、宣伝文句で大げさにカバーしているだけのようにしか思えない。しかしそんなことくらい、今のユーザーは簡単に見抜くのではないだろうか。私はプリウスをかつてのマークⅡの地位を継承するクルマだと書いたが、考え方までマークⅡ的に保守的になってしまっては、プリウス、というより、エコカーのパイオニアであるこのブランドへの期待に十全に応えられないのではないか、そんな気がしてならない。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 7
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 7
音・振動の処理 >>> 8
走りの調律度 >>> 8
運転環境と室内空間 >>> 7
ヒトへの優しさ度 >>> 7
卓見度 >>> 6
完成度 >>> 7
バリューフォーマネー >>> 8






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 試乗データ

試乗日:2016年1月14日
試乗車:トヨタ プリウス S ツーリングセレクション
車輌本体価格:2,628,327円
型式:DAA-ZVW50-AHXEB(T)
エンジン:1797cc 水冷直列4気筒 [2ZR-FXE]+交流同期電動機 [1NM]
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車輌重量:1370kg
最小回転半径:5.4m
タイア:前後215/45R17  [TOYO・NANO ENERGY R41]
JC08モード燃費:37.2Km/L
燃料タンク容量:43L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:5ドア/5人乗りハッチバック
ボディ色:エモーショナルレッド<3T7>
内装色/素材:クールグレー/合成皮革
装着されていたオプション:
     エモーショナルレッド車体色(54,000円)
     応急用タイヤ T125/70D17(10,800円)
     ナビレディセット(32,400円)
     ITS CONNECT(27,000円)
     フロントフォグランプ(21,600円)
     フロアマット(24,840円)
     ITSスポット対応DSRCユニット(ナビ連動)(48,600円)
     T-CONNECTナビ9インチモデル「DSZT-YC4T」(264,600円)
     





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 メーカーサイト

http://toyota.jp/prius/








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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」を見つけるのはあなた自身の仕事です。

製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。






2016.1.14
前田恵祐

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