「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#177 相変わらずお育ちがいい


 アウディA4 セダン 2.0TFSI quattro sport 試乗インプレッション(2016.7)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 昨年9月に試乗した旧型A4クワトロは控えめな佇まいに完成度の高いメカニズムを擁し、高価だがその価格に見合うだけのものはあると納得させられた。今年春に国内導入された新型は、各部をさらに洗練、進化させ、運転支援装置や新しくメーターパネルに表示するナビゲーションシステムなどを盛り込んだ意欲作。さてその仕上がりのほどはいかに。


 エクステリア



 控えめで上品だがモダンさも兼ね備えているという、いつものアウディデザイン。へんに力んだところや頑張りすぎたようなところもなく、自然体にして美しく機能的。イメージは従来型を踏襲しているが、大きく変えないことも、高級乗用車としての一つのいきかた。




 横から見るとますます従来型と区別がつかない。全長で10mm、全幅で20mm、全高で15mm、それぞれ大きくなっているがそれも最小限に留めた感あり。だから後述する室内スペースもそんなにかわらないがだからといって不満もない。




 周囲に対して威圧感があったり、強いアピールをすることが値打ちのように勘違いされている昨今。アウディのこの控えめでいながら上質、といういきかたは本当の意味での精神の充足を知る知的で成熟したドライバーに理解されるはずだ。



 運転環境



 ハンドルはチルトとテレスコピック調整を手動で行う。ハンドルのグリップは意外にも細め。駐車ブレーキは電気スイッチ式。シフトレバーはノッチを刻む方式ではなく前後に倒すことで電気的にシフト位置を操作するものになった。メーターはこの画像ではアナログの回転計、速度計を大きく表示しているが、これはフル液晶で全画面ナビゲーションになったりもする(バーチャルコックピット)。これとはべつにナビインパネ中央にもモニタある。エアコン類の操作系はダイアルとスイッチを整頓して比較的簡潔。パワーウインドウは全席ワンタッチ。




 メーターパネルにナビゲーションを表示させるとこんな感じ。むろん縮尺なども細かく変えることが出来るから好みや事情に併せて使うことはできるが、本来メーターが備わっているところにわざわざこれを持ってくることに違和感は禁じえない。四角く大きく表示してくれるインパネ中央のモニタに集約したほうがいいように感じる。


 そもそもナビゲーションを頼りにしなければ目的地にたどり着けない、というのは単なる妄想だ。昔はこんなものはなくても旅は出来たし、道を探しながら、また頭で道を覚えながら、方向感覚を養いながら行くというのもドライブの醍醐味のはずだ。そして人間にはそのような機能がきちんと備わっている。このクルマに限った事ではないが、まるで「砂糖をふりかけて客をおびき寄せるような」商法のあざとさにはそろそろ気がついたほうがいい。


 ちなみにこのメーターパネルにナビゲーションを表示させる機能はオプション。




 ペダルオフセットは無視していいレベルだが、ややアクセルとブレーキの高低差に開きがあるほうかもしれない。




 このグレードではルーフやピラー内張りが黒系でまとめられている。とはいえAピラーの形状、角度とも窓ガラスへの映り込みを最小にさせている。ドアミラーは上辺が撫で肩で外に向かって大きく削られており、実質の視界を十全に確保できていないのが残念。完全にデザイン重視。




 各ピラーも無遠慮に太くされておらず、また角切りも適切に行われているから目視後方視界は優れている方。こうしたところに手を抜かず、きちんと仕上げているあたりに、行き届いた配慮の片鱗を伺わせる。



 インテリア・ラゲッジ



 ダッシュボードのデザインは、ドライバーを包み込むようなコンソールを持つデザインから、スカットル高をできるだけ低く見せて開放感を稼ぐという考え方に。圧迫感がなく、いたずらにデザイン過剰でないところも好感が持てる。




 このスポーツタイプのシートはサイズも充分以上で大柄な人でもゆったりと着座することができるだろう。クッションはやや硬め。バックレストはやや平板でもう少し背中のS字に沿った形状ならさらに疲労軽減につながるのではないだろうか。長時間乗ってみないとわからない部分だ。素材はテキスタイルとレザーのコンビで、この素材そのものが持つホールド性、滑りにくさ、通気性とも適切で、こうした点でも快適。座面前端後端独立したアングル調整含めてフル電動調整でポジション取りに不満はない。
 
・前席頭上空間/こぶし2つ




 後席からの前方視界は開けており、サイドウインドウもいたずらに小さくされておらず、まず住環境として快適。やや背もたれが立っているあたりが気になるという人もあるかもしれないが、座面の後傾角も適切に設定されていて収まり感は悪くない。広さは従来モデルと大きく変わらないが、そもそも十分に余裕があったのでまったく不満はない。

・後席頭上空間/手のひら2枚
・後席膝前空間/こぶし2つ



 サイドも可能な限り彫り込んだ形状とし、4WDシステムなどを持つわりに床も低くフラットな荷室としているあたりはさすが。これでダブルヒンジの開閉システムならさらにいうことはないのに。



 エンジン・トランスミッション



 この大きさの車体、1.6トン級の車重に対して2リッター4気筒ターボエンジンというのは、もはや当たり前の排気量となってしまった感がある。ワーゲンには1.4などもあり、このA4にも時期にさらなるダウンサイジングエンジンを搭載したモデルや、クリーンディーゼルを搭載したモデルも追加されてくるという。


 クワトロに搭載されるのは同じ2リッター4気筒直噴ターボで二種類あるうち、252馬力のハイスペックバージョン。従来型よりも大幅にパワーアップされている。従来型も充分以上に静かでなめらかな印象をもっていたが、このエンジンはさらに磨きが掛かっており、極めて高い静粛性と低振動を実現している。低速から非常に静かでありながら、同時にパワフルで、少し深めにアクセルを踏み込むと、突風に背中を押されたかのような強力な加速も披露する。


 7段DCTのSトロニックはもはやDCTのネガを意識させることはほとんどなく、スムーズにしてダイレクト、しなやかにしてパワフルに動力をアスファルトへ伝達する。4輪に駆動力が伝わっていることをことさら意識させることはない試乗のシチュエーションだったが、無駄なく力が速度に結びつく独特の加速感や重厚感、安定感の片鱗を感じ取ることができた。4WDというと時にそのシステム自体の重さやフリクションを感じさせることもあるが、そこはそれ、経験の長いアウディだけあってそうしたイヤなクセはまったくなく、軽やかに、スムーズでなめらか、同時にきわめて静かに4輪を駆動する。前後駆動力配分は4:6とやや後ろ寄り。




 比較的空いた幹線道路をあまり信号につかまることもなくスムーズに走って10.0Km/Lというメーター読みの燃費。リセット前も9Km/L台を示していたから、試乗車の走行パターンを考慮してもこのクルマの市街地燃費は比較的伸びる方なのかも知れない。



 足廻り



 ハンドルは軽く、それでいて舵の効きは正確でクイック。時にこうした設定だとエキセントリックに過剰反応してしまいがちだが、このクルマの場合、原則として直進性が良いこと、外乱を受けにくいことなどから、軽くてクイックなハンドルが良い方向に作用している。充分な節度を持ちタイアのコンタクトをきちんと伝える性格でもあるため、このフェザータッチがじつに心地よく、それが安心感、信頼感と高いレベルで同居しているあたりが素晴らしい。


 Sライン仕様の試乗車にはオプションの18インチタイアが装着されており、そのためかほんの少しタイアがゴトゴトする場面もないではないが、それでも上下動は穏やかに抑制されており、しなやかなストローク感、すぐれたダンピングも奏功し、きわめて洗練された質の高い乗り心地を獲得している。このあたりは従来型も同様の性格だったが、やはり、もう一歩推し進められレベルアップが果たされた感がある。



 結論

 もともと「いいクルマ」だったアウディA4の新型がどのように進化したのか、とても興味深かった。欧州車の場合出たてのうちはまだ完成度が高まりきっていなくてバリの残っているようなところもあったりするものだが、この新型アウディA4はまったくそんなことはなく、従前のテクノロジーを正常進化させながら乗り味や走行フィーリングの面でさらに洗練、高級化を図った、実力の高い一台だと思う。






 今回の新型でウリの一つである運転支援システムを試すことはできなかったが、それはこのクルマの本筋ではない。いや、世の中にはそのような「砂糖まぶし」のマヤカシ装備で目を眩ませ、その実、クルマとしての本質を大きく下げているような例も少なくないが、このクルマの場合はそんなことはない。マヤカシの前にするべきことをきちんとおこなって、自動車としての完成度をちゃんと高めている。だからこそ、ちょっと凝りすぎの感もあるメーターパネルも、ただのお遊びには終わらせない説得力が伴っており、私もただの「オモチャ」だと一蹴するつもりはない。ただし、より本質的な機能と実益を高め、洗練させた形に仕上げて行ってもらいたい。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 9
デザイン >>> 8
エンジン・トランスミッション >>> 10
音・振動の処理 >>> 9
走りの調律度 >>> 9
運転環境と室内空間 >>> 7
ヒトへの優しさ度 >>> 8
卓見度 >>> 8
完成度 >>> 10
バリューフォーマネー >>> 8






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 試乗データ

試乗日:2016年7月5日
試乗車:アウディA4 セダン 2.0TFSI quattro sport
車輌本体価格:6,240,000円(オプション含まず)
型式:ABA-8WCYRF
エンジン:1984cc直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ[CYR]
トランスミッション:2ペダル7段デュアルクラッチトランスミッション [Sトロニック]
駆動方式:AWD
全長×全幅×全高:4740×1840×1410mm
ホイールベース:2825mm
車輌重量:1660kg
最小回転半径:5.5m
タイア:前後245/40R18  [ピレリ・チンチュラートP7]
JC08モード燃費:15.5Km/L
燃料タンク容量:58L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:4ドア/5人乗りノッチバックセダン
ボディ色:デイトナグレー・パールエフェクト
内装色/素材:ブラック[スプリントクロス/レザー]
装着されていたオプション:
     デイトナグレー・パールエフェクト(85,000円)
     S Lineパッケージ(350,000円)
      ・S Lineバンパー
      ・ドアシルトリムS Lineロゴ
      ・S Lineエクステリアロゴ
      ・ヘッドライニング ブラック
      ・デコラティブパネル マットブラッシュトアルミニウム
      ・アルミホイール 5ツインスポークスターデザイン8J✖18
      ・スプリントクロス/レザー S Lineロゴ
     マトリクスLEDヘッドライトパッケージ(340,000円)
      ・マトリックスLEDヘッドライト
      ・LEDリアコンビネーションライト
      ・LEDインテリアライティング
      ・ヘッドライトウォッシャー
      ・バーチャルコックピット




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 メーカーサイト

http://www.audi.jp/a4/








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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」を見つけるのはあなた自身の仕事です。

製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。






2016.7.5
前田恵祐

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