「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#178 効率的な"FMC"


 日産セレナ X - プロパイロット装着車 - 試乗インプレッション(2016.8)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 おおよそ6年ぶりのフルモデルチェンジとなった日産セレナ。従来型はこの種の箱型車としてはナチュラルな走り味を持ちつつ、市場から要求される広さ、シートアレンジ、カタチ、性能などを充足させたクルマとして、個人的には好印象を持っていた。今回の新型は基本部分はこれまでのキャリーオーバーとされるが、新たにプロパイロットと命名された半自動運転システムを与えられた。


 エクステリア



 これまでと印象を異にしないデザインコンセプト、というより、この「定形サイズ」の中ではやれることも限られているだろう。多くを語る必要はないし、細かい部分のお好みによってご判断いただければよろしい。




 特にコメントなしの側面。




 同じく、後方。



 運転環境



 ハンドルは手動チルト&テレスコピック調整、小径で下部を平らにカットしたタイプの形状。メーターはデジタル。走行上の情報表示をファンクションボタンで切り替えて表示できたりするが、基本的にはあまり煩雑でなく表示も大きめで見やすい。ナビは特等席に鎮座。駐車ブレーキはこのタイプではプロパイロットをチョイスするとシフトレバー脇の電気式スイッチでの操作となる。パワーウインドウは運転席のみオート。全席オートは便利だが、子供を乗せる機会が多いと考えられるこうした車種では助手席や後席はすぐに上下操作を止められるこの仕様の方が安心もあるだろう。ステアリングスイッチはいろいろ機能があるので乗る前にちゃんとトリセツを読んでおきましょう。




 立派なフットレストにゴムの滑り止めが付いていないのは残念だが(というか、カーペットが汚れる)運転席足元は余裕があって正しいペダル操作に違和感もない。




 Aピラーが二股に分かれていて出窓状になっているのは従来型と同じ。ピラーが細身で目立たない形状のため視界を妨げている印象はなく、むしろ視界は良いと感じる。日光を後方から受けているためこのアングルでは目立たないが、ダッシュボードはフロントガラスにしっかりと反射する。ドアミラーで大事なのはきちんと「見せる」ということを優先しているかどうか。デザインのために「撫で肩」形状になり後方をしっかり見通せないものも多い。しかしこのクルマに関してはドアミラー上辺側をできるだけ広く採り視野の確保に努められている痕跡を見て取れる。真面目さがこういうところにも現れるわけです。




 各ガラスは大きいがその内側に隠れているピラーはけっこう太めなので、運転席からの後方実視界はこんな感じ。こうしたクルマの場合もはやカメラによる視界確保は必須のようなところがあり、またドライバーもカメラがあることが当然のような感覚で運転をすると思うが、そのための危険とはドライバーの目に入らない「死界」に立ち入ることへの危険意識が薄れること。昔はクルマのそばでは遊ばないこと、などと大人に注意されたものだが、そういう感覚も「カメラが補うから大丈夫、見えている」と放棄してしまう。カメラが壊れたときにどうするとか、そういう問題ではなく、自動車の運転手にとっての死界というのは危険なものであるという根本的な認識の欠如を憂慮するわけである。大人の認識が薄れていくということは、子供にも教えないということであり、大事な事柄の継承がこれのみならず行われなくなっていく。



 インテリア・ラゲッジ



 フェザーグレーの内装色は明るくていいと思うが、汚れが心配。基本的に手入れをマメにしないと薄汚れて醜さを強調するタイプと認識すべし。ダッシュボード上面はダーク系にトーンが落とされている。




 みるからに座面は平らだし、サイドサポートも深くない。だからといって座り心地が優れないかというとそういうわけでもなく、腰椎から骨盤にかけてのフィット感も悪くないし、見た目から受ける印象とは裏腹に身体を支え、クッション性にも手を抜いていないことが分かる。それと同時に顧客からうるさく言われるであろう、乗降のしやすさも損なっていない。ステップワゴンより、個人的にはこちらのほうが妥協点が高いと思う。
 
・前席頭上空間/こぶし2つ以上




 シートの座り心地はなぜか若干前席より落ちる二列目。しかし広さや視界、乗降のしやすさなど、ほぼ定石通り、というかあまり目立った改良や新しい試みが行われている雰囲気はなく、このへんは現状維持。とくに不満も出てきていないということなのだろう。ならばシート自体をもっとよくするとか、手を尽くす道もあっただろうに、それはない。画像では二列目中央部分を最前列までスライドさせてセパレートシート風にしてあるが、こうすると腕を置く場所が見当たらなくて手持ち無沙汰な感じが、とてもする。

・二列目頭上空間/こぶし2つ以上
・二列目膝前空間/こぶし2つ以上・・・スライド位置による



 三列目はサイズも小さくさらに平板。リアサスペンションの真上でもあるから乗り心地の面でも不利であり、長時間はツラいのではないだろうか。

・三列目頭上空間/こぶし2つ以上
・三列目膝前空間/こぶし2つ・・・二列目スライド位置による




 ラゲッジスペースはこんな感じ。三列目の折りたたみは左右跳ね上げ方式なのは、これもまた従来通り。とくに大きな変化は無し。




 リアゲートはガラス単体で開閉できる。車両後方にスペースがなくリアゲート全体を持ち上げられないような狭いところではちょっと便利。ライバルもイロイロやっているので特に目新しいところではないが、今回のモデルチェンジではこうしたところよりもむしろ”あっち”のほうが、今のセレナにとっては大事なのであって・・・


 エンジン・トランスミッション



 従来モデルを試したのは初期型で、まだS-ハイブリッドが導入される以前のものだった。その時の印象は、エンジンの出力特性がとても自然でCVTとのマッチングもよく、決してパワフルとは言えないまでも、ストレスなく気持ちよく走ってくれるパワーユニットだったと記憶している。基本的にはこのクルマもその時のものと同じMR20DD型エンジンで、それに簡易的なハイブリッドシステムを組み合わせているものが搭載されているが、第一印象はあまり良くなかった。


 アクセルの踏み始めの反応が鈍く、トルクが思うように出てくれない。これは昨今の燃費重視のクルマがこぞってそのような設定を用いているのだが、発進時に大きくスロットルを開くことが燃費を悪化させる大きな要因となっていて、それを機械的に防ぐ目的でこのような制御を用いているのだと想像する。従来型(の初期型)にあった自然な加速フィーリングはこのクルマからは感じることができなかった。




 このドラコンの画像はかなり早いうちに撮ったものだが、おおむね、ドラコン上の燃費は12Km/L前後を平均として推移していた。走行パターンは市街地4割、山岳路と高速が3割ずつという大まかな内訳。



 足廻り



 小径のハンドルは軽い力で操作できるが、ステアリングギアレシオやパワーステアリングの設定がうまく、過度にクイックな印象はなく穏やかにクルマが反応する。従来型の美点の一つと感じていたハンドルへの情報の多さ(この種のものとしては)、そして操舵とロールの相関関係とその自然さなどは一歩後退している印象。一見してアシは基本的にしなやかでよく動き突き上げも少なく感じられ、車体もフラットだが、ある一定以上のサスペンションへの入力、その限界値を超えるとやや唐突に振動が伝わってきたり意外なタイミングで上下動を示したりもする。


 従来車はこれに比べるとやや姿勢変化が大きかったりもしたが、唐突な変化が少なく、なにより全体的に骨太な印象で貫かれていたところが良かったのだが、今回の新型はこのあたり、良い意味でも悪い意味でも「ふつう」になった。



プロパイロット

 メーカーとしても、この半自動運転技術を採用してきたことが新型セレナのフルモデルチェンジの見所であり、目玉と位置づけている。しかしこれはセレナというクルマの本質とはやや離れた領域であり、論評のポイントはその仕上がりによってどのように運転者は補助を受け、どのような運転スタイルとなっていくのか、さらには人間が守備する領域にまで運転支援技術が入り込むことへの倫理面や価値観といった部分の話になっていくと思う。




 簡単に言うと、追尾型クルーズコントロールにハンドル操作の制御を加えたもので、似たようなシステムは他にもある。運転者の意思でブレーキを踏んだりステアリングを切ったりすれば運転者の意思の方が優先されるのは言うまでもない。


 ステアリングスポーク部の青い「PILOT」ボタンとその脇にある「SET」ボタンを押下することで、その時の速度を上限とした速度コントロール、車線認識によるステアリング操作が自動で行われる。使ってみると、例えばお盆中、大渋滞の高速道路などでは、煩わしい運転操作から解放されるので、これはたしかに「充分に注意して使用すれば」疲労軽減につながるとは思う。その反面、路面のペイントが薄くなっていたりするとステアリングの制御が突然キャンセルされたりすることもある。だからやはりちょっと気が抜けない。というか、気を抜いてはいけないわけだが。




 ステアリング機構にはセンサーが取り付けられていて、ドライバーがハンドルから手を離したり、握力を緩めたりすると敏感に反応して警告が鳴る。それでも改善されない場合はプロパイロットは解除される。


 個人的には渋滞中の運転であっても、きちんと周囲の状況に目、耳、心を配り、同乗者への配慮も含め十全に神経を働かせながら、充分な緊張感を持って運転に臨むべきであり、またそうした姿勢が本来的な安全を生み、運転技術を磨くことにもつながっていくと思う。渋滞が面倒だったり不本意だからといって、半自動に任せてしまうというのはどうにも賛成できない。渋滞以外のシチュエーションではなおのことであることは言うまでもない。


 自動運転技術(運転支援技術)は国もおおいに推進をしているという。過労運転を防止する目的だとかもっともらしいことが言われているようだが、そもそも疲れているときは運転をしてはならない、これは大原則ではないか。疲れている状態で運転支援システムを利用しても、それでも運転上の責任は運転者にあることには違いがない。だとしたら判断力の鈍っている過労時に運転支援システムを利用することはより危険を助長するだけではないだろうか。


 こうした「先進技術」はたしかに客の目を引く。しかしその実、本来的に人間が執り行う運転操作においてただ単に運転者を弛緩させ油断を誘発する可能性が高い運転支援システムなのだとしたら、それは人のためにならない技術ということになる。


 自動車の運転の楽しさとは、危険やリスクと十全に向き合って理解把握し、その上で運転者が自らの主体性と責任意識のもとでハンドルを握り、安全に運行を成し遂げ目的地に到着する、という一連の精神構造と労働、その先にある達成がもたらすものではないだろうか。プロパイロットはたしかに物珍しい感じはするが、運転を楽しくするものでもなければ、本来的に安全を担保できるものでもない。


 こうした自動車の本質を忘れたかのような装置を目玉に据える新型セレナというクルマ、プロパイロット以外の部分の出来がどうなのか、私はむしろ気になっていた・・・



 結論

・・・で、プロパイロット以外の部分。これについては大きな進歩は見られないように思うし、さらにいうなら旧型の試乗時に経験した、運転を積極的に楽しむようなドライバーの観点から評価できた部分が多少ならずも後退しているように感じられたことはいささか残念だった・・・





・・・簡単に言ってしまうと、ほぼ従来の踏襲というモデルチェンジにしておいて、そこに「飛び道具」となる「プロパイロット」で派手に宣伝をかけて、私のようにクルマにうるさいことを言わない、この種のクルマのメインとなるユーザー層にアピールし、目を引く・・・という戦略というか魂胆のようなものが私には見えてくる。じつに効率的なフルモデルチェンジだと思った次第です。






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 10項目採点評価

ポリシー >>> 4
デザイン >>> 6
エンジン・トランスミッション >>> 6
音・振動の処理 >>> 7
走りの調律度 >>> 7
運転環境と室内空間 >>> 7
ヒトへの優しさ度 >>> 7
卓見度 >>> 4
完成度 >>> 6
バリューフォーマネー >>> 6






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 試乗データ

試乗日:2016年8月26日
試乗車:日産セレナX
車輌本体価格:2,489,400円(オプション含まず)
型式:DAA-GC27
エンジン:1997cc直列4気筒DOHC気筒直接燃料噴射[MR20DD]+交流同期電動機[SM24]
トランスミッション:エクストロニックCVT
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4690×1695×1865mm
ホイールベース:2860mm
車輌重量:1650kg
最小回転半径:5.5m
タイア:前後195/65R15  [ブリヂストン・エコピア]
JC08モード燃費:17.2Km/L(試乗車は16.6Km/L)
燃料タンク容量:55L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:5ドア(2列目スライド)/8人乗りミニバン
ボディ色:アズライトブルー #RBR
内装色/素材:フェザーグレー [織物/トリコット]
装着されていたオプション:
     日産オリジナルナビゲーション
     ワンタッチオートスライドドア<両側>(挟み込み防止機構付)
     サードシート用助手席側オートスライドドアスイッチ
     全ドア連動ロック機能
     ドアストップ機能
     プッシュエンジンスターター(スイッチ照明付)
     インテリジェントキー
     セーフティパックB
      ・SRSカーテンエアバッグシステム&サイドエアバッグシステム(前席)
      ・踏み間違い衝突防止アシスト
      ・インテリジェントパーキングアシスト
      ・進入禁止標識検知
      ・アラウンドビューモニター(MOD[移動物 検知]機能付)
      ・ふらつき警報
      ・フロント&バックソナー
      ・スマート・ルームミラー
      ・電動パーキングブレーキ
      ・オートブレーキホールド
      ・プロパイロット
      ・LDP(車線逸脱防止支援システム)
      ・ヒーター付ドアミラー
      ・ステアリングスイッチ
         アドバンスドドライブアシストディスプレイ設定
         プロパイロット
         オーディオ




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 メーカーサイト

http://www2.nissan.co.jp/SERENA/








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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」を見つけるのはあなた自身の仕事です。

製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。






2016.8.26
前田恵祐

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