「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#181 虚しさがこみ上げて来るクルマ

 
 フィアット 500X Cross Plus 試乗インプレッション (2016.10)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 イタリア車は、イタリア車ではなくなってしまったのかもしれない。この500Xのようにアメリカ車と車台共有をしてみたり、124のように日本製になってしまったり。イタリア車の衣を着た非イタリア車・・・もし乗ってイタリアを感じられないものだとしたら、この、巧みにイタリアを印象づけている外見との落差には、なおさらのコト、腹立たしく感じてしまったりもするであろう・・・などなどの先入観ありつつで。



 エクステリア



 なんでも500風にしてしまえば許されると思っている単純さにハラが立つ。もっとほかのアイデアはないものか。あまりにも創造的な感じがしないし、クルマづくりに対して「攻め」の姿勢が、このデザインからは感じられない。




 昔のクルマのカタチを用いたコンパクトカーがあって、それを下敷きとして様々なバリエーションのボディ形式を与える・・・ましてや他でもこういうことはやっている。やっぱりイタリアらしい「キレた発想」が垣間見られない。イタ車ファンとしてはじつにもって悔しい限り。




 初代のフィアット500が、削って削って軽く軽く、また丈夫にと思いを込めて作られていたことに対し、はたしてこのデザインはその崇高さに対する尊敬があるのだろうか。炭水化物を摂り過ぎてブクブクと太ったアメリカ人にしか見えない・・・ま、このへんにしておきましょうか(オサマリそうにないけど)。



 運転環境



 ステアリングはチルト&テレスコピックを手動調整。パワーウインドウは前席のみワンタッチ作動。シートはヒーター付きの8ウェイパワーシート。エアコンの操作は簡潔にまとめられる。駐車ブレーキは電動式であり、シフトレバーの位置に応じて自動的に作動する。全体的な印象では3代目500のシュガーコーティングよりやや実用性を考えられている様子。デカいドアノブがなんだか安心感。画像はないがペダル類の配置に違和感なし。




 ゴツいAピラー。しかしガラスへの反射は少ないし三角窓も効果的に視界を確保している。やや撫で肩のミラーが残念だが、それでも従来のイタリア車のミラー視界と比べたら雲泥の差で改善。しかしその下部についているアンダーミラーはあまり用を成さない。後方目視視界は現代のクルマとしては確保されている方、と思う。



 インテリア・ラゲッジ



 渋めのブラウンのレザーがじつに心憎い。こういうところのセンスはやはりイタリアと思わせる。レザーの質感や触り心地は平凡だが、こうした色調、調度に包まれているだけで充足感がうまれる。




 見た目はやや小さめに映る前席も実際に座ってみると効果的に身体をサポート。不満なくドライブできる。座面のサイズや後傾角の調整幅も充分にある。ヘッドレストもきちんとフォローしてくれる。小さく見えるのに巧みに座らせるところはイタリア車の良き伝統。

前席頭上空間:こぶし1つ半




 後席は「巧みに折り畳めること」ばかりを考えている某国のクルマとは一線を画している。座って惨めな感じが全くない。こうしたところまでちゃんと作られていることに、ヨーロッパ車を選ぶ理由が見えてくる。

後席頭上空間:こぶし1つ
後席膝前空間:こぶし1つ




 傾斜のあるテールゲートゆえ、高さがあまり稼げていないのはしかたなしとして、床面積はシッカリとあるラゲッジスペース。このクルマ、前席、後席、ラゲッジと、室内スペースはほどほどに実用的な広さが確保されているのではないだろうか。



 エンジン・トランスミッション



 見た目はジミな、しかも使い慣れた1.4リッター・ターボエンジン。実用域から太いトルクがあり1460キログラムもある車体を悠々と推し進める。それにはもちろん9段オートマによるところも小さくはないわけだが。


 それにしてもこの「ダウンサイジング」ターボエンジン、まったく「らしく」ない。他メーカーの同様のものが、なんとか魅力を見つけてあげようと頑張らなければならないケースばかりであることに対し、じつに「自動車のエンジン」らしい魅力に満ち溢れている。


 先に述べた実用性だけではなく、中速域の心地よいスムーズで力強い加速やトップエンドまでシャープに伸び切る刺激性に至るまで、全域において魅力を発揮するマルチプレーヤーであり、そこがじつに「イタリア車」。じつにいいエンジンだ。


 燃費計をリセットして計測できなかったが、ドラコン上の表示は7Km/L台だった。



 足廻り



 ハンドルはほどほどに正確で腰高のわりにはロールも少なく、足廻りは引き締まっている。ゴツゴツとしているわけではないが、ヒョコヒョコとした上下動が常に付きまとい、フラット感に乏しい。タイア・ホイールの質量を過剰に感じさせるわけではないが、これは見た目以上にオフロードを「残した」セッティングと考えられる。イタリア車らしいキレイなストロークや人間の呼吸とぴったり合うかのようなリズム感はあまり感じない。



 結論

 年々、イタ車純度が下がっていく・・・などと嘆くのは、筆者のようなかつての濃厚なエスプレッソの味を知っている者だけかもしれない。クルマづくりに多国籍となり、それによってもしかするとイタリア車は耐久信頼性や品質を向上させたかもしれない。そこまでならいい。イタリアらしいデザインへの美意識や走りに与える感性の鋭さまで丸く削られてしまうようでは、イタリアンブランドを名乗る理由はなくなる・・・






 百歩譲ってフィアット500Xというクルマの機能部分の出来は現代のクルマらしく良くまとまっているかもしれない。ならばその機能を前面に打ち出し「新しいデザイン」とともにまっとうな商売をすればいい話だ。それが、カタチばかり(名前も)不遜にもかつての名車のアイデアを拝借し顧客を見た目で釣るような「売り方」は、些かならず不真面目ではあるまいか。世の中「どうにかなっている」象徴のように思われて虚しくなる。





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 10項目採点評価

ポリシー >>> 5
デザイン >>> 3
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 8
走りの調律 >>> 6
運転環境と室内空間 >>> 7
ヒトへの優しさ >>> 7
先進性 >>> 7
完成度 >>> 7
バリューフォーマネー >>> 6





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 試乗データ

試乗日:2016年10月7日
試乗車:フィアット500X クロスプラス(AWD)
車輌本体価格:3,348,000円(税込/OP別)
型式:ABA-33414
エンジン:55263623(1368cc直列4気筒マルチエア16バルブ インタークーラー付ターボ)
トランスミッション:トルコン式9段オートマチック
駆動方式:AWD
全長×全幅×全高:4270×1795×1625mm
ホイールベース:2570mm
車両重量:1460kg
最小回転半径:5.5m
タイア:前後225/45R18 (グッドイヤー・イーグル)
JC08モード燃費:13.1Km/L
燃料タンク容量:48L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:5ドアハッチバックSUV
ボディ色:ホワイト(296)
内装色/シート素材:ブラウン・グレー/レザー(551)
装着されていたオプション:
     フロアマット(30,240円)





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 メーカーサイト

http://www.fiat-auto.co.jp/500x/





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ご留意ください。
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要はありません。
私がここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」はあなた自身が見つけるものです。
また、製品は予告なく改良される場合があります。
時間の経過とともに文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前には必ずご自分で試乗をして、よくお確かめの上ご契約ください。





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2016.10.8
前田恵祐

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