「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#188 自社顧客の信頼は裏切らないだろう

 
 トヨタ ヴィッツ ハイブリッドU 試乗インプレッション (2017.2)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 初代ヴィッツは、トヨタとしてはかなり冒険をしたほうだと思う。しかしそれも経時とともに適切な手入れを重ね完成度を高めるという真面目な作り方を代々踏襲し、もはやプリウス、カローラシリーズなどと並ぶトヨタの定番商品となった。この三代目もほぼ毎年といっていいほど改良やマイナーチェンジが施されている。最新のヴィッツはどのような出来になっているのかを確認してみよう。



 エクステリア



 全長は3945mmで先日乗ったスイフトより100mm大きい。代を重ねるごとに大きくなっているのは世の趨勢ではあるものの、ヴィッツという車格としてはこのへんが限界ではないだろうか。衝突安全性確保のため、というもっともらしい言い訳をする前に、技術者として知恵を出し、サイズを変えず、あるいは小さくしながらも満足な性能、機能を満たす設計やデザインというものを考えるべきだ。大型化での解決は安易だ。


 この顔つきは、思ったよりユーザーからの拒否反応は少ないらしい。というより、デザイン云々言う人が少ないという。トヨタのユーザーとはそういうものなのだろう。トヨタを信頼しているからお任せ状態なのだと思う。トヨタの出してくるものなら間違いはない、と盲目的に思う人々。しかしそれではいい商品、製品は育たない。個人的にはもう少し端正で温和な印象のマスクのほうが、あるいはファニーな印象を与えたほうがいいと思う。




 ホイールベース2510mmという長さ。しかし後述、後席足元空間の広さはスイフトほどではなく、ラゲッジスペースはこちらのほうが広い。どちらが良い、ではなく、どういう使い道で決めるか、ということでいいと思う。




 このマイナーチェンジ(2017年)でテールランプの意匠が変わった。個人的には旧型のほうがシンプルで良かったと思う。こういうところにお金を掛けるよりもっと他のところ(中身)にかけたら?と言いたくなる、が・・・



 運転環境



 ハンドルは手動チルトとテレスコピック調整が可能。ハンドルは小径だがグリップは比較的細身でスポークの太さもあまり気にならない。このグレードは贅沢な本革巻き。クルーズコントロールも装備。大画面の最近のナビを見慣れるとこのクルマのナビスペースはやはり「従来」の仕様という感じ。エアコンの操作系はダイアルとシンプルなスイッチで簡素にまとめられている。ハイブリッドだがシフトレバーは従来式。ハンドブレーキもフロアから伸びる従来式のレバー。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。運転席のラチェット式高さ調整の調整幅も大きい。


 

 前回同様この画像は日陰で撮ったから映り込みの証明にはなりにくいが、日なたに出るとAピラー内張りはフロントガラスに映り込む。内張りが黒く塗ってあれば多少凌げるとは思うが。今ではもっと細いクルマもあるが、トヨタもこのヴィッツあたりからAピラー付近の視界に気を使い始めた。三角窓も見通しを助け、ドアミラーも前後方向に厚ぼったくなく視野を阻害しにくいが、残念なのは例の撫で肩形状。ダッシュ上面も工夫して、ガラスに映り込みにくくなっている。




 運転席からの斜め後方目視視界。リアドアガラス後端を後ろに仰け反らせたいからこういうことに。デザインの弊害。ここは剛性や強度には関係ないのだから、すっきりとガラス面積を採るべきだろう。窓を下げた時にドア側の戸袋スペースの関係で下がりきらなくなるからガラス面積を規制しているという面もあるかもしれないが、どうせエアコンを効かせて走るのだから、今やあまり関係ないと思う。



 インテリア・ラゲッジ



 トヨタのインテリア、ダッシュボードにしてはあまりごちゃごちゃしておらず、シンプルかつ機能的で好ましい。インテリアカラーはさすがここまでの大量生産車、バリエーションを持たせており、このグレードでも黒以外に茶系が選べるほか、他のグレードでも黒以外の色を選ぶことが出来る。




 やはりこのヴィッツあたりからトヨタの実用車の運転席に対する考え方が変わってきた感がある。これと同時期のラクティス(もはやモデル廃止)やそれ以降のカローラ系なども含め、背もたれ、座面のサイズを拡大し、おおらかな印象で座らせることと、保持して欲しい部分を自然に、かつ確実に押さえており、例えば「これはすごい」と驚嘆するほどではないが、シートに対する不満は以前よりかなり減ったと思う。ちなみに、このグレードに備わる肘掛はちょっと位置が高い。

前席頭上空間:こぶし1つ半




 ハイブリッド用バッテリーは例によって後席座面の下に位置している。厳密に言えばシートにも影響があるのかもしれないが、座ってみての不満はあまりなく、もうちょっと後傾角が欲しいくらい。このクルマの使い道からして後席に長時間、長距離座って旅をするということもあまりないだろうから、これでいいという印象。アクアに比べると天井も高く、着座位置も高めだから視界、見通しがいい。

後席頭上空間:手のひら2枚
後席膝前空間:こぶし1つ




 後席スペースとラゲッジスペースの割り当てのバランスから言うと、例えばスイフトは後席を広めに採ってラゲッジは見切った感があるが、ヴィッツは後席スペースほどほど、ラゲッジスペースもほどほどに確保している。トヨタ的に中庸な設定。



 エンジン・トランスミッション



 このような言い方をするとトヨタは否定すると思うが、このハイブリッドシステム、数々のブラッシュアップが施されてきたとは言え、1997年デビューの初代プリウスから継承しているものだ。端的に言うと、完全な古参である。例えばノートe-POWERのようなものが出てくるとかなり手ごわい存在なのではないだろうか。あるいは、そんな手ごわいライバルに抗するべくヴィッツにもハイブリッドを、という成り行きなのかもしれない。そろそろトヨタの新しい世代のハイブリッドを見てみたい。




 試乗で走行した距離はご覧のトリップメーターの示す14.3Km。高速、一般道、山坂道と走って、最終的にドラコンの燃費計は22.6Km/Lを示した。ヒーターを温めるためにエンジンがかかっている時間が長くなる冬は燃費に不利。それでもこれくらいはいく。ちなみにこのグレードにはシートヒーターが備わっており、燃費を気にする向きにはそれを有効利用する手もある(運転席のみ)。参考までにライバルと目すノートe-POWERはほぼ同じ道を走って24.7Km/L(ドラコン読み)だった。



 足廻り

 三代目ヴィッツは、初期モデルからして骨格のしっかり感や音と振動の処理のうまさなど、走りや足廻りに対する印象は良かった。ただ、ハイブリッドを搭載するにあたってより燃費重視の設定を考えねばならなかったと見えて、今回はやや堅めの印象が強くなった。それでも、しっかりした車体がサスペンションを確実に保持し、バネ系も的確に作動させるから、例えば安っぽく突き上げられることはないし、マイルドに凹凸をクリアしていくマナーの良さも感じられる。ハイブリッドシステムを積んで重量が増加したことも好影響しているかもしれない。




 ハンドルのレスポンスは適度で、さほどダイレクトな印象はないものの、中立付近含めて反応が遅れるようなことはなくキビキビとした印象に終始し、山岳路の九十九折にさしかかってもドライバーの意思を忠実に汲み取り軽快に立ち回る。ただ、それはいわゆるスポーツカー的なファントゥドライブの範疇に入るかというと、そうではなくて、言われたことを的確に聞き分けて走ってくれる、小型車らしい素直さが心地よい、という種類の味付けと思えばいい。いわゆる優等生。これと比べるとアクアの走りはうんと華奢な印象があると思う。



 結論

 三代目ヴィッツは、最初からして機械的完成度はかなり高いクルマだったと思う。以前も書いているが、「このクルマでなければ、というものが無い」という総じての印象は不変だが、しかし日々を共にする水や空気のような存在として考えれば、よく働き、素直に走り、燃料も食わず、壊れない、という自動車としてベーシックな価値観が高レベルで満たされていることに満足するべきだろう。




 初代ヴィッツのあの凝縮感や優れたデザインを知っている者としては、代々個性が薄まっていく印象があることに残念な思いがないではない。あるいは筆者のようなマニアを喜ばせるようなものはいまや何もない。今回のマイナーチェンジでマニュアルギアボックスを選べたRSグレードもカタログから落とされた。


 しかしトヨタ自動車なら間違いはないだろうと、全幅の信頼を置いてこのクルマを買うようなタイプの顧客に対して、このクルマは決してその信頼を裏切ることはないだろう。例えば走りの質感についても低く見切ったようなところはない。2010年デビューゆえ、ナビのサイズなどにやや古さを感じるかもしれないが、6年以上を経て、実力は色あせていないということはできると思う。


 ただし、このヴィッツハイブリッド(Uグレード)、お値段は車両本体価格で200万円を上回る。カローラアクシオハイブリッドのベースグレードを上回り、あと10万円払えばフィールダーのハイブリッドにも手が伸ばせる。個人的に、走りの味つけの好みで言うとカローラ系の方が好きなので、比較検討したとするならきっとカローラ系を選択すると思う。室内も広く、荷物もより載せられるのは言うまでもない。


 ちなみにカローラ系ハイブリッドのベースグレードには、ヴィッツハイブリッドUに標準のトヨタセーフティセンスCが54,000円のオプションであることも付記しておく。





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 10項目採点評価

ポリシー >>> 8
デザイン >>> 6
エンジン・トランスミッション >>> 7
音・振動の処理 >>> 9
走りの調律 >>> 8
運転環境と室内空間 >>> 8
ヒトへの優しさ >>> 8
先進性 >>> 7
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 7





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 試乗データ

試乗日:2017年2月8日
試乗車:トヨタ ヴィッツ ハイブリッドU
車輌本体価格:2,087,640円(OP別)
型式:DAA-NHP130-AHVEB
エンジン:1NZ-FXE+1LM [1496cc水冷直列4気筒DOHC+交流同期電動機]
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3945×1695×1500mm
ホイールベース:2510mm
車両重量:1110kg
最小回転半径:4.7m
タイア:前後185/60R15(ダンロップ・エナセーブEC300+)
JC08モード燃費:34.4Km/L
燃料タンク容量:36L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:スーパーレッド5(3P0)
内装色/シート素材:ブラック/ハイグレードファブリック
装着されていたオプション:
     フロントフォグランプ(10,800円)
     フロアマット・ベーシック(15,120円)





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 メーカーサイト

http://toyota.jp/vitz/





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ご留意ください。
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要はありません。
私がここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」はあなた自身が見つけるものです。
また、製品は予告なく改良される場合があります。
時間の経過とともに文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前には必ずご自分で試乗をして、よくお確かめの上ご契約ください。





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2017.2.11
前田恵祐

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