「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#189 きれいに鉋がかかっている


 マツダCX-5 25S Lパッケージ 試乗インプレッション (2017.2)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 CX-5も二代目になった。”フルスカイアクティブ”車の先発として登場した初代は、その目玉でもあったスカイアクティブDを中心に、新たなファン層を獲得し、評価の高いクルマとなった。当初からどんな製品にするか、あるいは、したいか、という意図が明瞭で具現化にも迷いが見られなくなったマツダのクルマづくりを支持する人は多い。そんな多くの注目を浴びる中でのモデルチェンジは、いたって慎重に、注意深く行われたように見受けられる。



 エクステリア



 例えばエクストレイルで4640mm、ハリアーで4720mmというライバルの全長と比較するとCX-5のそれは4545mmと一回り小さい。ここは一つのポイントであろう。いたずらに大きくしないのは見識。


 デザインそのものは既に旧モデルで提案したアイディアをそのまま継承し、各部に磨きをかけたという、いわばキープコンセプト。印象は旧モデルに似かよっているものの、細かく見て回ると造形が一段と鋭くなっていたり磨きがかけられているなどして、質感は高くなっている。




 ホイールベース2700mmは不変。全体的に悪くないし手の込んだ造形だと思うが、個人的に気に入らないのは、宣伝がやや説明的にすぎること。良いデザインというのは説明しなくても納得させうるだけの説得力を有しているものだ。それに、コマーシャルの言われるままに「いいな」と思うのは、どうもシャクに障る。「いいでしょう」と言われて「いいね」と思うのは凡人であり素人だ。自分の感性が造形から受信するモノを信じているタイプの人にとって、あのコマーシャルは邪魔という他ない。デザインの件のみならず、だ。




 パッとみて、旧モデルと印象を異にしていないのは狙いだろう。それだけ従来の造形の完成度を支持しているということだ。ただ、こうしてテーマカラーまで引き継いでしまうと(色番は違う)「またかよ」という気がしないでもない。色だけでも新しい提案をする勇気を持つべきだろう。そして、カラーバリエーションもやや凡庸で、このデザインを生かしているとは言い難い。ベージュやゴールド、あるいはアメジストのようなカラーもよく似合うと思うのだがいかがか。



 運転環境



 ハンドルは手動チルトとテレスコピック調整が可能。ハンドルは小径だがグリップは比較的細身でスポークの太さもあまり気にならない。ステアリングスイッチも比較的整理されている方か。オートマのレバーは一般的なストレートタイプ。駐車ブレーキは電気式。マツダのこのタイプのナビは悪くないと思うが、今のトレンドの中に入ると画面は小さめ。エアコンの操作パネルはダイアルとスイッチの混成だが整理されている。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。シフトレバー付近やパワーウインドウの操作パネルの加飾は黒っぽい艶のある仕上げだが、指紋の跡が気になる。このグレードは本革パワーシートにシートヒーター、さらにハンドルのヒーターも備わる。


 

 最近のクルマとしてはけっこう遠慮なく太いAピラー。白く角度もよくないからフロントガラスに映り込む。せめて黒く塗ってあれば。ドアミラーは正方形に近く、角の落としも少ないからすっきりと後方を視認できるタイプ。ダッシュボードの映り込みはうまく回避できている。




 運転席からの斜め後方目視視界。現代のクルマとしては比較的視野を稼げている方ではないだろうか。窓ガラスもいたずらに小さくされておらず、明るい室内と視野を得るのに寄与している。



 インテリア・ラゲッジ



 あまりごちゃごちゃと遊びのためのデザインという要素が少なく、その中でも個性を演出する造形を用いて退屈ではないインテリア。ステッチもニセモノでない。ただ、インテリアカラーは例によってこの黒かオプションの白しかない。5万円高になってもいいからオプションで選べるカラーを増やすべきだ。黒の車体にベージュやタンの内装なんて渋いし、ガンメタなら枯れた感じのワインレッドの内装という組み合わせもシックだ。そういう楽しみを与えるのも、マツダ規模のメーカーができる「小回り」というものではないだろうか。「愛着」に直結する大事な部分だ。




 前席の座った印象は旧モデルからかなり変わっている。旧モデルはちょっと優しい感じの座り心地だったが、こちらはややソリッドでアンコがよく詰まっている感じがする。かといって拘束感も過剰でなくゆったり座らせながら、押さえて欲しいポイント、腰のカーブや尻への支持感などよく煮詰められた印象がある。この感じ、どこかで味わった記憶があるなあと思い出すと、最近のプジョーのシートはこれに近い。気が付くと身体とシートがトモダチになっているという、アレだ。

前席頭上空間:こぶし2つ




 後席はサイズも十分で背もたれも寝すぎておらず適切。座面はもう一歩尻の前ずれを抑止できる形状だとさらに良い。空間は広々としており見通しもよく、後席のパッセンジャーもドライブを楽しむことが出来るだろう。外観のデザインがいいのに、こうして空間も充分に採られているというのは、じつは得がたいことだ。

後席頭上空間:こぶし1つ半
後席膝前空間:こぶし2つ




 車体サイズは旧モデルとほぼ同じであり、荷室も大きく拡大はされていない模様。



 エンジン・トランスミッション



 みなさんDEがお好きのようだし、メディア露出もDEが中心のようなので、今回の試乗には敢えてスカイアクティブGの2.5リッターを選択した。もともとこのシリーズの直噴ガソリンエンジンは軽快な印象で、ダイレクトな6段オートマとの相性もよろしくストレスなくスポーティに立ち回ってくれる。2.5リッターと、4気筒としては大きめの排気量で、どちらかというとトルクで前へ押し出すタイプなのかと思っていたが、以前経験した2リッターなどと同じように軽快さの方が前面に出るタイプだ。


 この体格にして1.55トンと軽量な部類であることも助けにはなっていると思うが、このエンジンはこの車体との相性もよく、なめらか、かつマイルドな走りが魅力だが、一点だけ不満を挙げておくならそのエンジン音だろう。どういうわけか色気も愛想もないガサガサした音が、けっこう遠慮なく室内に侵入することを許している。もう少し静かにするなり、聴かせるなら聴かせるで音のチューニングをもっときちんとするなりしたほうがいいと思う。




 試乗で走行した距離は約15Km。この画像の撮影時点では10Km/Lをドラコンは示しているが、このあと更に伸びて11Km/Lを示していた。高速、一般道、山坂道と均等に走行。




 運転への評価が高いというのは気分がいい。

 ちなみに、追尾型クルーズコントロールを、混雑した保土ヶ谷バイパスで試したが、前車との車間のコントロールが巧みで不意の割り込みにも柔軟に対応する。速度の調整もスムーズでストレスがなかった。せっかく「上」に乗ったのに「ゲッ、混んでるよ」というようなときに、クルマに車速コントロールをお任せできるというのは確かに便利だし、疲労も軽減するだろう。むろんハンドルはドライバーがコントロールするが、むしろ緊張感を途切れさせない意味で、自動運転よりもこちらのほうが理にかなっているようにも思う。



 足廻り

 初代CX-5の走りの味つけもこの種のSUVとしては軽快なもので、そこがマツダの個性にもなっているようなところがあった。やや締め上げられた感のあるバネ系は余分な動きを示さず、潔い硬さであるとさえ思えたが、今回の二代目はより洗練された乗り味を持っていた。




 ハンドルのレスポンスや正確さはより磨きがかかり、自然な操舵感の中に信頼感を与えるというレベルの高いものを持ち、バネ系はさらに剛性と作動精度が高められた印象で、適切なストロークとダンピングを両立し、不快な上下動とは袂を分かつ見事な仕上がりになっている。路面からの振動や騒音の処理もかなり巧みになり、これはもう高級車といってもいいくらい。新型CX-5で、最も進化を感じられるのはシートと、この足廻りかもしれない。旧モデルが20歳代後半から30歳代前半なら、新型はさらに精神年齢が上がった感じがする。



 結論

 新型、二代目CX-5は基本的に従来モデルから基本部分をキャリーオーバーするタイプのモデルチェンジだが、やるべきことをきちんとやり、弱点を丁寧に潰して完成度を高めるという、絵に書いたような熟成改良を成功させた例と言えるだろう。磨かれたスタイリングがそうであるように、クルマ全体にも、きれいに鉋がかけられている、そんな印象だ。旧モデルのオーナーがこのクルマに乗れば、その進化の度合いを十二分に感じ取れるだけのものがあると思う。こういうきちんとした仕事ができる会社というのはそうそうない。






 しかしどうにも最近のマツダを見ていると、大事なところにぽっかりと穴があいているような、そんな気がしてならない。


 日本が誇る天然女優、綾瀬はるかB型は広島出身である。事務所は、彼女がメディアで広島弁で喋ることを許可しているようだ。キレイなのにどこか朴訥としている、あるいは広島を隠そうとしていないようなところが綾瀬の魅力の一部になっていると思うのは私だけだろうか。彼女が多くの視聴者に与える親しみやすさや「愛すべきキャラクター」のようなものは、ただただ天真爛漫で美人だから、ではないはずだ。彼女を見ていると瀬戸内の柔らかな陽光とたおやかな海を思わせるところがある。


 昔のマツダ車というのは、どこか田舎臭くて、ハッキリいうとダサい、でもそんなところがフト心の拠り所になるような、良さがあった。それはきっとマツダが広島にあることと無関係ではあるまい。東洋工業の技術者たちはかつてテレビなどの媒体で取材を受けると、気取ったり取り繕ったりすることなく正直に、しかも広島の言葉で自分たちのことやクルマへの想いを熱く語った。


 それが今では、広告代理店が考えそうなカッコイイ横文字のPRや宣伝文句を並べ立て、標準語や外国語を流暢に操り、デザイン、スタイルからもかつてのような田舎臭さは見事に脱臭されてしまった感がある。いうなれば綾瀬はるか的魅力をかなぐり捨て、あるいは強烈に否定し、自ら都会に染まってしまおうとしているような、そんな一抹の寂しさを感じる。私はそこが少しだけ残念だ。





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 10項目採点評価

ポリシー >>> 9
デザイン >>> 8
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 8
走りの調律 >>> 8
運転環境と室内空間 >>> 8
ヒトへの優しさ >>> 8
先進性 >>> 7
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 8





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 試乗データ

試乗日:2017年2月24日
試乗車:マツダCX-5 25S Lパッケージ
車輌本体価格:2,986,200円(OP別)
型式:DBA-KF5P
エンジン:PY-VPS [2488cc水冷直列4気筒DOHC直噴ガソリン]
トランスミッション:トルコン式6段オートマチック
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1550kg
最小回転半径:5.5m
タイア:前後225/55R19 99V(トーヨー・PROXES R46)
JC08モード燃費:14.8Km/L
燃料タンク容量:56L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:5ドアステーションワゴン
ボディ色:ソウルレッドクリスタルメタリック
内装色/シート素材:ブラック/パーフォレーションレザー
装着されていたオプション:
     CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)(32,400円)
     Boseサウンドシステム+10スピーカー(86,400円)
     フロアマット(ラグジュアリー)消臭機能付(30,888円)





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 メーカーサイト

http://www.mazda.co.jp/cars/cx-5/





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協力店/マツダオートザム旭

http://www.mazda-autozamasahi.com/





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ご留意ください。
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要はありません。
私がここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」はあなた自身が見つけるものです。
また、製品は予告なく改良される場合があります。
時間の経過とともに文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前には必ずご自分で試乗をして、よくお確かめの上ご契約ください。





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2017.2.28
前田恵祐

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