「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。

#190 定番としての矜持と安定感


 スズキ ワゴンR HYBRID FZ 試乗インプレッション (2017.3)



~ 試乗記の読み方 ~

 この試乗記は筆者による個人的な印象記に過ぎず、ここに記された内容は必ずしも読者が実車から抱く感想と一致しない場合があります。人間にはそうした個人差、個体差があるものなのです。それが俗に言う個性であり多様性と言い換えてもいい。故にこの試乗記を鵜呑みにしてはいけません。車両購入の際には必ず購入者自ら実車に触れて検証と確認を怠らず、購入者が主体性を持って車種選定の判断を行うことが原則です。したがって・・・

買うときには自分で試乗して確かめる
筆者の言うことに左右されない
自分がいいと思ったものを購入する

・・・これらのことは最低限です。当たり前のことですが、それができない人が多いようです。この試乗記は指示書でも教科書でもバイヤーズガイドでもなく、購入者に試乗の手間を省かせる目的のものではありません。だとしたら何者であるかというと、クルマを「検証する手法」の提示をしているに過ぎません。しかし、その検証の手法、いわゆるモノサシというものがかなりブレているのが今の世の中、今のユーザーのように筆者には見受けられます。そこで、「私ならこのように確かめる」という意味合いでこのような記事の掲出を行っているもの、とご認識いただきたいと思う次第です。


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 1993年に誕生した軽自動車の定番車種、ワゴンRも六代目。ほぼ5年毎に刷新が繰り返され、その都度、その時点の最新の技術でブラッシュアップ、今回のモデルではハイブリッド搭載車をメインに据えている。定番車種のモデルチェンジというのは、いつもながら簡単ではない。マンネリにならぬよう、それを感じさせぬよう、細心の注意と緊張感を持っての作業のほどは今回のワゴンRをどのように仕上げたのであろうか。



 エクステリア



 基本フォルムは同じ。全高を含めた寸法も前モデルとほぼ同じ。しかしサイドパネルの印象を大きく変え、センターピラーに特徴を据えたのと、リアピラーにウインドウを加えているところも違いの一つ。センターピラーを黒く塗りつぶす、ないしは存在をあまり強調しないデザインだったが、今回はあえて目立つようにした。このクルマらしいキャラクターを得ている。顔つきは標準グレードでも二種類ある。これではないプレーンなタイプ、一種類でいいんじゃないだろうか。




 実際にどれだけの効果があるかは別として、側面衝突に強そうな感じがするのもポイント。その太くなったセンターピラーの内側に実用上の工夫あり。




 やっぱりそうだよね・・・初代ワゴンRのイメージを踏襲していることが分かる。でもクルマの性格そのものは初代とはだいぶ違う。フツウ顔のほうの黄色やオレンジといったカラーチョイスは明るくてなかなかいいと思うが、10色(試乗グレードは8色)あるうちの半数は寒色系で地味だ。もう少し、あと2色くらい、明るい印象のソリッドカラーを増やせるといいのに、と思う。



 運転環境



 このグレードのハンドルは立派な本革巻きで調整は手動チルトのみ。目盛が小さくて瞬読の難しいタコメーターは最下位グレードにはつかない。シフトレバーはインパネに取り付けられたストレートタイプ。エアコンはこのグレードはフルオートでその操作系は簡潔かつ明快。駐車ブレーキは足踏み式で二度踏みリリース。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。このクルマにはナビのオプションは取り付けられていないが特等席の大画面が可能。ただしその下部につくハザードスイッチがシフトレバーに隠れがちで、スイッチの色も目立たないから咄嗟の操作で見出しにくい。


 

 Aピラーは充分にシェイプされ、三角窓の視界もいい。ドアミラーも角落としが少なくよく見せようとしている。Aピラーは白いがダッシュボードとともに映りこみ対策も行き届いている。




 運転席からの斜め後方目視視界。リアピラーに追加されたガラスの効果も大きいが、内装部材の厚みに配慮も感じられ、目視確認派にも優しい見通しになっている。ちなみにリアワイパーを上部に移設し、視界の妨げにならないよう配慮しているという。



 インテリア・ラゲッジ



 センターメーターを据えて上下二段式としたダッシュボードはやや事務的な印象だがこれはこのクルマの性格というものだろう。ダッシュボード上には安全上あまりモノを置かせないように設計することが昨今では多いが、このクルマはなんとかその辺をクリアして実用性を高めようという意思があると見える。内装色はオヤクソクの黒かベージュ。




 スズキでいえば最新のスイフトで見せつけられたモノの一つに、シートの良さがあったが、これは率直言ってダメ。押さえるべきポイントを押さえられておらず、腰も尻も沈み込む。角度の調節もイマイチで身体が落ち着かないし安心して身体を預けられない。

 同じメーカー、スイフトではあの気合の入りようなのに、このダメさ加減はどこからくるのか、あるいは、どういう意図による作り分けなのかと説明を聞きたい部分だ。例えばこのクルマは若い人のエントリーカーとしての役も担っている。だとするなら、こんな出来損ないの煎餅座布団のようなもので運転させて、クルマに幻滅させるようでは役不足なのではないか。若い人にこそ良いシートで運転の楽しさを味わってもらい、クルマの運転を好きになってもらうことこそが、”これから”の自動車産業の裾野を広げることに大きく寄与するのではないか。

 初期印象、見せかけの「便利」だけではダメだ。「その先」の楽しさを提供しなければクルマという商品の本質訴求には繋がらない。そしてこのクルマにはそうした要素を追求することに意味があると私は思う。

前席頭上空間:こぶし1つ半




 リアシートも、いうなればいつもどおりの軽自動車の安っぽいイス。座り心地は期待できないが、しかし広さは充分以上にある。スライドによって荷室との調節も容易だし、かりに前に寄せたとしてもまったく痛痒のない空間がある。

後席頭上空間:こぶし1つ半
後席膝前空間:こぶし2つ(スライド前方にて)




 太くしたセンターピラーの内側に「傘立て」が設置されている。濡れたままでも排水機能があるから心配ないという。いちいちリアドアを開けて仕舞わなければならないところがやや面倒かもしれないが、しかし、いつも車内で所在無げに邪魔をしている傘をきちんと収納できるのは親切というものだろう。




 パッケージングにおいては革新的な改良があったわけではないので、荷室のスペースはいつおどおりと思っていいだろう。ただし、テールランプの配置、デザインを先祖返りさせたおかげで、開口部は広くなっている。



 エンジン・トランスミッション



 後述、軽量設計のおかげで、ノンターボ車でも軽快に立ち回ってくれるところが、最近のスズキの軽自動車の良さでもある。やはり小型なクルマはとくに軽く作ることが動力性能にも燃費にも好作用を与えるはずだ。

 いわゆるマイルドハイブリッドを搭載したエンジンの印象は、取り立てて特徴的なところもなく、よく働くアイドリングストップがついた、しかも再始動レスポンスも早くスムーズ、しかもまあまあ静かなエンジンといったところ。低回転を多用するようにCVTもしつらえてあるが、それでも息切れせずトコトコと運ぶのはエンジン出力特性と、やはり軽量化によるところが大きいだろう。ハイブリッドシステムに関しては、良くも悪くもその存在を意識させない。




 試乗ルートは10キロメートルほど、高速、狭く曲がった一般道、速度の乗る幹線道路と走った。リセット後のドラコンはつねに17Km/L近くを示す。瞬間的にこれ以上に至ることもあった。乱高下せず、燃費計が安定しているというのは基礎的な燃料使用効率が安定して良いということが察せられ、長期的なランニングコストの面で有利に作用すると想像出来る。



 足廻り

 やはりこの領域でも感じるのは軽量化のメリット。重くなればアシへの負担が増えるのは人間と同じこと。だから重いとその分さらに補強で自らを重くさせることになっていく。軽くつくるというのはその逆で、軽ければ負担も少ないから過剰に強化する必要もなく、そこから重量増の要素を排除することができる、という理屈。




 乗った印象はいつもの軽自動車だが、アシや車体に無理がかかっていないと思わせるのはやはり軽いからで、無理やり作り出された軽快さや「スポーティさ」のようなものではなく、本当にダイエットが成功した時のような爽快感とともに立ち回ってくれる。

 ちなみに、このクルマ(試乗したクルマ)の車重で790キログラム。ホンダN-WGNのFF、Gグレードで830キログラム、ダイハツ・ムーヴのFF、Xグレードで820キログラムである。

 数値で見ても違いは歴然。軽く作るには技術がいる。安全との両立にもハードルは高い。しかもノウハウを蓄積するために手間も労力もカネもかかる。ましてやそうと言われなければ客の目には目立たない部分でもある。簡単なことではないこと、目立たなくとも価値のあることにチャレンジしているというところを評価したい。



 結論

 クルマを、気を引き締め「ちゃんと作る」ということの意味を知っている人たちの仕事だけに、いつも安心して見ていられるところがあり、今回の新型ワゴンRの仕上がりもその期待を裏切らないだけのものがあったと思う。ハイブリッドや電気による革新的な燃費技術はなかなか生まれないが、出来るところからやろうと言う意思のもと、スズキが重んじているのは軽く作ることだ。このことの意味を我々もちゃんと理解しなければならない。誰もが「電気さえあればなんとかなる」的な常識=思考停止の中で見落としがちな、しかし重要な事柄に気がつき、実行できる「力」を彼らはしかと有している。






 ザンネンなシートの出来、そこさえ改善されれば本当に良いベーシックカーだと思う。軽いから元来走りは軽快で楽しいものになるし、燃費も改善する。そこに「ちゃんとした」シートが取り付けられればさらに運転の楽しさや積極性といった、もうひとつのクォリティというものが身につけられることになると思うのだがいかがか。

 しかしそこは、例えば軽量化やコスト、あるいは一般ユーザーからのニーズというものも無視できない要素なのだろう。とくにスズキは「安く提供する」ことを社是としているような会社だから、いたずらなコストアップは避けたい。シートというのは目立たないようで、「ちゃんと」作るとお金がかかる。経営資源の分配という厳しい条件の中で、もしかするとこのクルマのシートは「あとまわし」にされてしまった部分なのかもしれない。

 だとしたら、安くても軽く作れる技術の蓄積と同じように、安くてもちゃんとしたシートを作れるノウハウの蓄積も重要だろう。スイフトのシートがあそこまで良くなったのだから、次のワゴンRにはちょっと期待しておこう。





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 10項目採点評価

ポリシー >>> 8
デザイン >>> 8
エンジン・トランスミッション >>> 7
音・振動の処理 >>> 7
走りの調律 >>> 8
運転環境と室内空間 >>> 8
ヒトへの優しさ >>> 9
先進性 >>> 8
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 9





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 試乗データ

試乗日:2017年3月9日
試乗車:スズキ ワゴンR HYBRID FZ
車輌本体価格:1,350,000円(OP別)
型式:DAA-MH55S
エンジン:R06A型/WA05A [水冷直列3気筒DOHC給排気VVT/直流同期電動機] 
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3395×1475×1650mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:790kg
最小回転半径:4.4m
タイア:前後155/65R14(BSエコピアEP150)
JC08モード燃料消費率:33.4Km/L
動力用主電池:リチウムイオン電池/個数:5/容量10Ah
ボディタイプ:5ドアワゴン
ボディ色:フリスクブルーメタリック(ZWY)
内装色/シート素材:ブラック/ファブリック
装着されていたオプション:
     フロアマット(ジュータン)(14,202円)





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 メーカーサイト

http://www.suzuki.co.jp/car/wagonr/





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ご留意ください。
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要はありません。
私がここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」はあなた自身が見つけるものです。
また、製品は予告なく改良される場合があります。
時間の経過とともに文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前には必ずご自分で試乗をして、よくお確かめの上ご契約ください。





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2017.3.16
前田恵祐

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