「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

言い逃れはできぬ




 フォルクスワーゲンという会社のつくるクルマは、その乗り味だとか作り込み、乗り物としての完成度や語弊を恐れずに言えば、クルマから伝わって来る思想のようなものをもって、充分に信頼の置ける会社でありエンジニアリングであると認識してきた。多くの人がそう思ってきただろうし、そのようにメディアも取り扱ってきた。クルマ本体から成る信頼感のようなものはもしかするとメルセデス・ベンツに比類するものがあったかもしれない。


 自動車会社、あるいは自動車ビジネスというのはどんどん肥大化していて、その規模は一個人の思惑でどうなるものではなくなりつつある。クルマ作りの「作業」は分業化され、各分野から持ち寄ったコンポーネンツ、モジュールを組み合わせ、摺りあわせていく、という作業こそが今のクルマ作りだといっていい。企業規模が膨大なものに成れば成るほど、コンプライアンスというものが重要になってくることは、今の日本の企業にお勤めの皆様ならよーくご存知であろう。いかに人を統制し、企業人としてコントロールして行くか・・・


 今回、フォルクスワーゲンの米国におけるディーゼルエンジンのスキャンダルは、恐らくやフォルクスワーゲンという大企業の一部門、ないしは一部署による「慢心」と「犯行」であると認識していいと思う。スキャンダルはメーカーそのものの信頼を失わせ、もっというとディーゼルエンジン、あるいは同じような仕組みで自動車を生産している自動車メーカー全体への信頼を失墜させるに等しいだけのものがあったが、しかしそれも、フォルクスワーゲンの中でEA189というディーゼルエンジンを担当した者、あるいはそのグループの行いや誤った倫理観によって成さしめられたものだということだ(※1、※2)。病巣は小さくとも影響範囲は大きい。しかしそれが現代の企業経営というものだ。

※1:2011年にVW社内技術者サイドから当該エンジンのレギュレーション不適合を指摘する報告がなされていたとの報道を確認しました(2015.9.27/22:45)

※2:歴代経営陣が本件に関与していた疑い濃厚との報道を確認しました(2015.10.1/8:00)


 自動車という製品は、斯くて巨大な規模の企業が生産し、しかもその殆どはコンピュータでつかさどられブラックボックス化している。中身がどうなっているのかはもはや専門家でもわからないようなところがある。それ故に、完成車へのルールやガイドラインは厳格化されなければならない、今回のスキャンダルはそのことへの一つの警鐘といっていいだろう。法の抜け道、抜け穴のようなものがあれば、そこを突破口にしてしまおうと誰もが思う。しかしそれは法律や公的機関に任せておいていいのだろうか。


 ユーザーももっと言葉を発する必要があるのではないか。今回のスキャンダルは、フォルクスワーゲン、ディーゼルエンジン、あるいは自動車そのものへの不信を高め、不買運動が起こってもおかしくない事態だと個人的には思う。じつに腹立たしい。そしてその声を例えばワーゲンユーザーなら販売店にぶつけたっていいと思う。コールセンターに苦情を言ってもその権利は大いにあると思う。なぜなら、犯罪集団のレッテルを貼られた会社のクルマに、乗らなければならない苦痛というものがある。自動車というのはそう簡単に買い換えられるものではない。


 フォルクスワーゲンの日本法人は今回のスキャンダルに際して、「当該エンジンは日本国内に輸入されていない」といった趣旨のリリースを発表しているが、コトはそんな生易しい問題ではない。日本を走るフォルクスワーゲン車が法規をクリアしているとかいないとか、そういう問題では、そういうお話しでは断じて、ない。これはフォルクスワーゲンブランドの存続の危機にある、それくらいの危機意識がなければダメだ。法を犯し、ユーザーの信頼に背き、世間を騒がせ、ともすると自動車という商品に対する信用さえ失いかねない、これを巨悪と言わずして何を言えばいいのであろうか。


 日本での三菱自動車が起こしたリコール隠しの問題で、三菱自動車がどのような末路を辿ったかを思い出してもらいたい。今三菱はかろうじて生き残っているが、あの時のダメージは計り知れないものがあった。そして彼らは未だにして十全の自信を取り戻し企業経営やクルマ作りに臨めているとは到底思えない。


 フォルクスワーゲンは、幸いにというか、どうでもいいクルマを作っている会社ではない。社会的に意義のある、もっというとその定評のあるクルマを過去から現在に至るまで多く輩出してきたという実績がある。もちろんその実績は今回のスキャンダルで大きく泥を被ることになったわけだが、しかしバックボーンというものが極めて大きい。だからワーゲンはそう簡単に潰れやしないだろう。適切に、法務部が法に則って対処をし、会社へのダメージを最小限にとどめる仕事をこれから粛々としていくのだろう。


 しかし我々ユーザーは、2015年9月に、フォルクスワーゲンという巨大な企業が、大きく人心をかき乱し信頼を裏切る行為を行ったという事実を忘れてはならない。その前提に則って、今後永年にわたってフォルクスワーゲンという会社がどういう立ち居振る舞いを見せるのか、どのような商品を持って信頼回復に努めるのかをしっかりと観察していく必要がある。ワーゲンユーザーは極めて多い。多くの目があると認識しなければならない。


 自動車をつくるというのは、こうして犯罪に手を染めなければならないほど「難しい」。クリアせねばならないことが山ほどある。クリアするためには多くの金銭を要し、時間と人員も要する。こういう事が起きると、ことによったら、そう遠くない将来、自動車というビジネスは採算に合わない無駄なビジネスだと思う人が出てきても仕方がないかなと思う。あるいは、自動車会社内部の人たちにはすでにそういう認識が万延しているのではないか。今回の一件が全世界的に「自動車離れ」を加速させ、自動車が加速度的に衰退の道を行きやしまいかと憂慮する。





2015.9.27
前田恵祐

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