「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

カタログ請求ボタンにわれ想ふ


 昔は、自動車のカタログというと、ディーラーにもらいに行くものだった。ディーラーにもらいに行くということは、少なからず営業部員(古いなw)と接する機会も発生するわけで、つまり即セールス活動につながっていくことは想像にかたくない。電話番号なんかを残した日には電話による営業攻勢を覚悟しなければいけないし、住所まで残してしまったら訪問営業に晒されるのは火を見るより明らかだ。今はそうした執拗な営業活動も規制されているようだが。



 同じく、アシを通わせて手に入れなければならなかった物といえば自動車雑誌。カーグラフィックなんか買ってごらんなさい。重くて、会社帰りの混んだバスの中ではかさばって、邪魔なことこのうえない。だからというわけでもないだろう、自動車雑誌は売り上げを軒並み落とし、廃刊の危機に晒されたり、不夜城と称されるような働きぶりでなんとか売り上げを保っていたりする、というのが現状だ。もはや職業として健全な態(てい)をなしていないといえる。



 自動車雑誌というのは、大きな割合として財源に「自動車会社」の広告宣伝費をいただく。自動車不況を叫ばれるようになって久しいが、自動車会社もクルマそのもののコストダウンはもとより、広告宣伝費の割り当ての見直しにより収益性を向上させるという動きに、そら当然なっていくわけで。そうなると、自動車雑誌にとってさらに追い込まれる状況となることは、これもまた火を見るより明らかだ。



 自動車会社にとって、自動車マスコミは扱いにくい存在だったと思う。なにかにつけて批判ありきの論調は長く続いたし、「辛口」というキーワードがあまりにも世間でウケてしまったものだから、これにもとらわれつづけた。自動車メーカーは自動車雑誌に「広報車」というサンプルを貸し出し広告を掲出する。広報車だってタダじゃない。税金や保険やメンテナンス、置き場代だってバカにならない。広告だっていくらだかは知らないが人を一人雇えるくらいの額はゆうに支払われているはずだ。



 そんな事態にあって、自動車雑誌は「滅多なこと」は書かなくなり、そんな自動車雑誌をユーザーは買わない。自動車会社は広告宣伝費の分配を再検討することにもなる。自動車雑誌、自動車マスコミ衰退の原理はここにある。





 かわって今、台頭してきているのはカタログの配布だろう。インターネットが普及したことで気軽にオンラインカタログにアクセスすることができ、なろうものなら、紙媒体のカタログをメーカーが無料で送ってくれる。むろんこれとて本来タダではない。制作費は昔に比べ相当にかかっているはずだ。どれもおざなりの出来ではない。また印刷費も、ディーラーで、手で配布していた頃に比べればずっと量が出て行くはずだから、これも嵩む。配送費用、これもメール便を使っているとはいえタダではない。ただし、メーカーが言いたいことをストレートにユーザーへ伝達できる(余計な論評を挟まない)ことや、顧客の個人情報を収集できる、またダイレクトリサーチにもつながる、といった具合にメーカーにとって都合良いことも少なくない。あとはディーラーで実車に触れてお確かめください、と来る。じつに合理的。



 実際問題、ユーザーはもはや素人ではない。クルマというものを充分に学習し、嗜好を確立し、論じもする。その意味では誰かに指南してもらわなければならない代物ではもはやない、というところに到っていると考えることは出来る。だから、わたしのこのblogにおける発言はすべて感想でしかない。利き酒のようなものだと思ってください。いろんな酒を飲んでいると味の違い、風土文化の違い、考え方の違い、狙いの違い、これはわかるようになってくる。それと同じ。



 注意しなくてはならないことは、今や自動車に関する情報発信はほぼ自動車メーカー主導でおこなわれているから、メーカー側の誘導に乗せられないように気をつけるということだろう。簡単なことで、メーカーのいうことを鵜呑みにしない。可能であれば自分で検証するくらいの気持ちでいること。ただし検証もしないで批判をしてはいけないし、結論ありきで物事を論じたり考えたりすることほど無意味なものはないと。



 日本における自動車産業、文化は非常に急速に発展、成長してきたといえる。ドイツが100年かけてやってきたことをそのおおよそ半分でやってのけたといってもいい。それくらい勢いがあり、またそれに接するマスコミも過熱しただろうし、それによってユーザーも過敏に、というか、落ち着いて観察したり判断したりが出来なかったことは否めない。自動車マスコミの勢いが衰弱していることは非常に残念なことではあるのだが、しかしここからが勝負で、いかに冷静に、腰をすえて自動車という商品と向き合えるか、効率的で生産性の高い媒体たりえるか、これらのことに取り組める土壌は今、やっと整ってきたと言えるのではないだろうか。







前田恵祐


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