「新車試乗インプレッション」と「自動車批評」を主とするBLOGですが、ここに記されているレポートは鵜呑みにせず、ご自身で何事も検証してください。自己検証が大事だ、と言い続けたいブログなのです。 キミたちはもっと利口にならなければ、利口になろうと思わなければならない!

第二期というイナーシャ ~ 2015年ホンダF1考察



 2015年、マクラーレンホンダの戦績はほんとうにヒドいものだった・・・と聞いている。そもそも僕はもう地上波でF1を見れなくなってから、頑張ってCSに入ってまで見ようとは思わなかった人間で、そこまでF1というものに惹かれてもいないし面白いとも思っていない・・・ゆえにこんな記事を書ける立場ではない、と言ってしまえばそれまでだろうが、常識外の門外漢の意見としてお読みいただければ幸いである。


 例えば、参戦1年目の1994年にやはりマクラーレンと組んで散々だったプジョー。あれはあれで、ミカ・ハッキネンとマーティン・ブランドルというタイプの違うふたりのドライバーの手で、2015年のホンダに比べたらはるかにマシな戦績を収めながら、翌年はマクラーレンに切られてしまった。でも来年もマクラーレンはホンダでいくらしい。この格差は何なんだ。マクラーレンはホンダを信用しているという証なんだろうか。


 そもそもホンダは第二期だって最初から勝てるような体制ではなかったし、実際に勝てるようになるまでに時間を要していた。そう考えれば2015年一年くらいは棒に振ってもまあ仕方がない、くらいの感覚を持ってもバチはあたらないと思う。僕は今年より来年だと思っている。だからヒドいヒドいと言われながら、そんなに憤りはしなかったし、歯がゆい、もどかしい思いもしなかった。まあ、広報的に発言する人間の言葉選びに問題はあったようだが。


 で、仮に来年、ホンダが今年のようにどうしようもない醜態を晒すようなことがあったとしても、それはそれできっと受け入れる。僕はね。


 だって、ホンダはもう企業として昔のホンダではないのですよ。


 本田宗一郎さんの存在が大きいとか、DNAとかいろいろ辛気臭いことをいう人がいるけれど、もうそれはとっくの昔という話でしょう。本田宗一郎さんの息がかかった技術者なんてもういないし、そもそも企業体質とか企業としての目標や理念、そういったものも、時とともに変容するのが、僕は当たり前だと思う。というか、変容するものなんだ、ということを、ホンダを見て知らなければならないと思うよね。


 つまり、看板が同じというだけで、中でやっている人はまるで違う。だから黄金期と言われている第二期のような目覚しい活躍は、あれと同じようなものはきっと生み出さないし、生み出せない、産み落とせないと僕はむしろ信じて疑わない。


 ホンダは昔の輝かしい戦績や栄光にあぐらをかいている、的な論調も少なくないけれど、それはもしかするとそうなのかもしれないけれど、だけど、そう書いたり論じている側も、昔のことに「捕らわれすぎ」ているんじゃないかと指摘しておきたい。何十年も前の出来事、何十年も前のF1、何十年も前のホンダと今のホンダを比べること自体ナンセンスだ。今の現実を見て、その事実を「昔」というバイアスを外して冷静に論じることのできるF1ライターに出会ってみたいものだ。「昔」というイナーシャを外せないでいるのは、観る側、論じる側も同じだ。


 2016年、ホンダはF1をどう戦うべきか。それは莫大な予算をつけて参戦していることでしょうから、それを粛々と回収することに専念なさるといいと思う。でも2015年の、あの戦績じゃあ広告宣伝費さえ回収できまいという状況だろうからもう少しマトモに走れるようにならないとね。それと、組んだチームがマクラーレンで良かったと思う。ヘタな下位チームだとやれクルマが悪かったからだとか、責任のなすり合いで自滅なんてことにもなりかねなかった。その点マクラーレンなら「悪いのはホンダエンジン」と話がすっきりして責任の所在も明瞭だ。


 ホンダが出れば無条件で勝てる、みたいな幻想はどうか捨てていただきたい。F1はそんな簡単な場所じゃない。フェラーリだってあれだけ長年参戦しながら、カラッキシ駄目でまったく走らないというシーズンだって一つや二つじゃなかった。だけどファンはフェラーリがそこに走っている限りフェラーリを応援し続ける。それと同じように、戦績がちょっと駄目だからといってホンダをアシザマに言うというのはちょっと底が浅すぎる。


 ホンダが走ろうと走るまいと、そんなものはF1の歴史の1ページに過ぎない。世界最高峰のモータースポーツにチャレンジするというのなら、それを応援すればいいし、駄目なら一緒に考えればいい。昔の栄光や戦績というバイアスやイナーシャに捕らわれて物事を冷静に観ることができない、そういう応援の仕方は進歩がないし、F1が文化にも歴史にもなっていない証左ではないかと僕は思うんですが、いかがでしょう。





2015.11.20
前田恵祐

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