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#145 エンジン小型化で好バランス


日産スカイライン 200GT-t Type P 試乗インプレッション (2014.7)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 スカイラインにメルセデス製のエンジンが載るという話は現行モデル登場前からリークされていた情報だ。5月28日、満を持してメルセデス製4気筒2Lターボエンジンを搭載した200GT-tシリーズがラインナップされ発売となった。



 エクステリア



 試乗グレードはタイプPで、上級グレードタイプSPとはバンパー形状、タイア・ホイールサイズ、デザインが異なる。実寸より小さく見えるのはデザインのなせる業。




 全長は4.8メートルにもなる。売れている国の国情を反映せざるを得ない事情は理解できる。しかしそうした数の正義を振りかざしてばかりいてはいつまでたっても日本のユーザーは振り向くまい。




 街中ですれ違っても旧型と区別がつかない。スモール点灯時の制動灯は面積で判別できる。



 視界・扱いやすさ

 

 ハンドルは太目のグリップ、革巻きのステッチはダブルステッチとされ指先の感触がいい。そのハンドル調整は電動のチルト&テレスコピック。シートも全てパワー。駐車ブレーキは足踏み式で解除は二度踏み。パワーウインドウは全席ワンタッチ。ナビの画面とオーディオの画面、二系統のモニターを備える。そもそも自動車の運行はそんなに複雑なものなのか、どこまで多機能であるべきなのかという議論をしたほうがいい。個人的には「補機操作」にあまり手間を取りたくないし、むしろ運転操作や目視による安全確認のほうが重要と思う。操作はシンプル、簡潔なほうがいい。そこまでクルマにかまってらんない。




 Aピラーは方向の視界。




 後方実視界。後席ヘッドレストは不使用時もうすこし低く収めたい。



 インテリア・ラゲッジ



 ベージュと黒の内装色が選べるうちの、試乗車は黒本革。前席はランバーサポートも効いていて悪くないがサイズが小さめでかけ心地に豊かな感じがしない。

・前席頭上空間/こぶし1つ(サンルーフあり)




 後席は座面、バックレストともサイズに余裕が感じられ、前席と比べて居心地が良い。本当は前席重視のクルマだと思うのだが。

・後席頭上空間/手のひら1枚(サンルーフあり)
・後席膝前空間/こぶし2つ




 トランクスペースはハイブリッドと比べてバッテリーがない分ゆとりがあり、オプションで後席の6:4分割可倒も選択できる。トランクリッドのヒンジはパンタグラフ式。



 エンジン・トランスミッション



 Cクラス等にも搭載される4気筒ターボは211馬力を発生。低速から蜜のように豊かなトルクを発生し、適切なギアを選択する7段オートマチックがうまくスピードに乗せる。性格はスポーティというより穏やかで、排気量の大きな自然吸気エンジンのようでもある。そのあたりはいかにもメルセデスらしい味付け。ボンネットはダンパーで支える。




 試乗中の燃費は9.0Km/L。



 足廻り



 ハンドルはあくまでもセンターがはっきりとした印象で操舵時の反力も適度でスポーティ。ただ、そう感じさせているだけで、電子制御ステアリングバイワイアによる補正がかかっていることを考えると、「今うまく曲がれたコーナーリングも自分の腕というよりクルマなりか」と思えて、運転に前向きになれなくなる。ハイブリッドより100キログラム車重は軽く、バネ系の動きに余裕がある。具体的にはピッチングがやや軽減されダンピングもこちらのほうが効いている。またタイアは以前試乗したハイブリッドのタイプSPの19インチ245/40に対し17インチ225/55であり、バネ下重量が軽く踏面積が小さいことも好作用しているように思えた。


2014.12.17、足廻り追記
 この試乗車のステアリングは通常の直結タイプで、ステアリングバイワイアではありませんでした。しかしながら、その操縦フィーリングに違いは見いだせなかったというのが率直なところです。つまりそれだけHVで経験したステアリングバイワイアの出来が自然だったと言える。しかしながら、行き過ぎた補正技術はドライバーの入力をザツにさせるだけで、理論的技術的に正しくても倫理的に疑問が残ると言わざるを得ません。



 結論

 実用的なエンジンに軽量化によりゆとりの増したアシ。動的要素ではハイブリッドより完成度が高いと感じられた、ダウンサイジングターボエンジン搭載車。いまやエンジンひとつ開発するのにも莫大な費用とマンパワーが必要で、適する素材を外部から調達してくることが早道であることは理解できる。事実、このスカイライン200GT-tはマッチングも良く、成功している例といえるだろう。




 しかしスカイラインというクルマの成り立ちを考えると現状に疑問が残る。たとえば、フーガというクルマがあるのなら、スカイラインはもっとスポーティに、あるいは日本の国情を考慮した寸法を採るべきではないだろうか。かつてR32型では大規模なダウンサイジングをおこない、ユーザーからも大きな支持を得たことがあるスカイラインというブランドなら、アメリカという数の正義に流されず、意思を持ち、信ずる道を歩む姿にこそ本分があるのではないだろうか、そんな気がするのだがいかがだろう。




 10項目採点評価

ポリシー >>> 7
スタイル・インテリア >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 9
NVH >>> 9
ドライバビリティ >>> 9
スペース >>> 8
気配り度 >>> 7
先見性 >>> 8
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 6




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 試乗データ

試乗日:2014年7月25日
試乗車:日産スカイライン200GT-t Type P (車輌本体価格:4,212,000円)
型式:DBA-ZV37
エンジン:274930(直列4気筒1991ccターボ)
トランスミッション:マニュアルモード付トルコン式7段AT(7M-ATx)
駆動方式:FR
全長×全幅×全高:4790×1820×1450mm
ホイールベース:2850mm
車輌重量:1670kg
最小回転半径:5.7m
タイア:225/55RF17
JC08モード燃費:13.0km/L
ボディタイプ:4ドアセダン
ボディ色:クリスタルホワイトパール(#QAA・スクラッチシールド)
内装色/素材:ブラック/本革
装着されていたオプション:
     電動ガラスサンルーフ(118,800円)
     クリスタルホワイトパール(#QAA・スクラッチシールド)(43,200円)





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 メーカーサイト

http://www.nissan.co.jp/SKYLINE/




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。










前田恵祐



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