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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#146 今後の展開に期待


レクサスNX200t Version L 2WD  試乗インプレッション (2014.8)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 ハリアーに対してかつてはそのレクサス版をRXが担っていたものが、ハリアーそのものがやや小型化したためそれに呼応するように新たにこのNXが登場した。コンパクトSUV。そもそもSUVというカテゴリーがゴツくてデカいものだから、コンパクトとはいえそれなりの巨漢。



 エクステリア



 小山のような大きさだが各部エッジが効いていてシャープな印象をかもし出している。くだんのスピンドルグリルはもう見慣れたが、そもそも機械的必然性のないデザインであることは明白で、「機能美」たりえていないところにやや難あり。各部の造形、造作に細やかさがなくエレガンスをかなぐり捨てたデザイン。アイデアが湧かないからといって悪あがき。




 こうしてみるとハリアーの延長線上という印象。従来の常識から抜け出したくて抜け出したくて、でもアイデアが湧きません、という歯軋りが聞こえてくる。いくら学校を優秀な成績で卒業した人材を採っても、その後の育成段階で豊かな人生経験を積むことができなければ優れたデザインやアイデアはうまれない。このデザインは頭でっかちで挫折を知らず、人生訓や経験則を持たない現代日本のエリート層を現しているように思えてならぬ。




 色のせいもあるが、遠目にはCX-5と見まがうリアビュー。



 視界・扱いやすさ

 

 グリップの太い小径ハンドルの調整は電動のチルト&テレスコピック。通常のゲート式シフトレバーの脇に電気式パーキングブレーキノブが備わり、それは同時にシフト位置に応じて自動作動、自動解除する仕組み。センターコンソールは無駄なくカップホルダーやディスプレイのタッチパネルなどを配置する。ディスプレイのタッチパネルはこれまで試されてきたマウス状のものより直感的に操作可能。エアコンの操作系統も明快に整理されており、スイッチをたくさんつけて人目を欺く傾向のあるレクサスとしては機能的なダッシュボードと感じた。パワーウインドウは当然のように全席ワンタッチ。運転席からはボンネットが視認できる。




 Aピラーは方向の視界。Aピラーはダークな色に塗ったほうがいい。ダッシュ上面はブラックアウトされ角度もよくガラスに映りこまない。サイドミラーはやや分厚いが三角窓も有効。




 後方実視界。この角度を見るとハリアーそのもの。



 インテリア・ラゲッジ



 内装色は、ホワイトオーカーと呼ばれるアイボリー。この色の革か黒革の内装を選ぶと、ダッシュボードやドア内張りのトリムの色をホワイトオーカーか黒の二つから選択できる。試乗車はホワイトオーカーのトリム。他、シックな印象の茶系やボルドーの内装もあり、こうしたあたりの選択肢の広さがレクサス。




 シートサイズがゆったりとしていて優しくホールドしてくれる感じがいい。調整は全て電動でポジションはほぼ文句なしに決まる。本革内装を選ぶとシートクーラーもついてくる。

・前席頭上空間/こぶし1つ(サンルーフあり)




 座面の高さやアイポイントなどの位置関係はハリアーと共通と思う。不満はないが形状もまたハリアーと似通っており、見た目だけでもこのクルマ専用と思わせる工夫はほしい。

・後席頭上空間/こぶし1つ(サンルーフあり)
・後席膝前空間/こぶし2つ




 十分な広さを持つラゲッジスペースだが、この床の下にもさらに有効なスペースを持っておりこの種のクルマに求められるユーティリティを確保している。バックドアは電動。



 エンジン・トランスミッション



 ハイブリッドとダウンサイジングターボというバリエーションは今年のトレンドかもしれない。従前からあったコンポーネントに改良を加えターボをとりつけたこのエンジン。どこかの誰かさんと違って自前で揃えた。スカイラインターボのメルセデス製ほどではないもののこってり、たっぷりのトルクを持ち、市街地では機敏に、高速域ではターボエンジンらしく、しなやかかつ伸びやかにスピードを得る。そしてそれは同時にきわめて静かでもある。いまや段数が少なめと感じる6段のトルコン式オートマだが、それ以上の段数を必要と感じさせないほど各ギアのカバーレンジが広く、変速動作もじつに鷹揚としたもの。ボンネットはダンパーで支える。




 試乗中の燃費は10.8Km/L。これは高速走行を含めた平均。一般道でスカイライン200GT-tとほぼ同じルートを走って9Km/L前後。ほぼ互角。



 足廻り



 ホイールは18インチでこの種のものとしては常識的なサイズ。基本的にはダンピングの効いた優しい乗り味だが、不整や段差に対してやや敏感な印象があり、そんなときにバネ下の重さや踏面の堅さを伝えてくる。ハンドルはいたずらに締め上げられておらず、ゆったりとした操舵感。高速を延々とひた走る、というような場面で持ち味を発揮しそうだ。



 結論

 引き締められたスポーティな乗り味の多いレクサスとしては、一瞬オヤッと思うほど優しくゆったりとした印象を伝えてくる。エンジンやトランスミッションもどちらかというと加減速Gをはっきり感じさせることより、ひたすらスムーズにクルージングできることに重きを置いたセッティングで、上述のとおりロングクルージング向きといえそうだ。






 恐らくこのクルマへの反応を見て、今後こうした小排気量ターボエンジンで大排気量NAエンジンを置き換えていくという戦略を採ることだろう。大排気量NAエンジンと小排気量ターボエンジンでは根本的に性格が異なり、小排気量ターボは大排気量NAの代用品とはいかない面もある。しかし、最新の制御技術で得られる良好な燃費とターボエンジンならではの伸びやかなフィーリングでそこは相殺できるようにも思える。本来ならとうに幅を利かせていてもいいような技術だが、特に国産メーカ-における「純然たるガソリンエンジン」の環境対応や小型化は遅れているといわざるを得ない。それはユーザーがハイブリッドのようなわかりやすい技術に飛びつく傾向にあり、ダウンサイジングという、いうなればやや地味な技術を評価しないことも要因にあると思う。ユーザーももっと世界に目を向け視野を広める必要があるし、レクサスのようなブランドは時にユーザーを教育し、国内市場の動向を牽引するような存在であってほしい。





 10項目採点評価

ポリシー >>> 7
スタイル・インテリア >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 9
NVH >>> 9
ドライバビリティ >>> 9
スペース >>> 7
気配り度 >>> 8
先見性 >>> 8
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 6




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 試乗データ

試乗日:2014年8月8日
試乗車:レクサスNX200t Version L (車輌本体価格:4,920,000円)
型式:DBA-AGZ10-AWTLT
エンジン:8AR-FTS(直列4気筒1998ccターボ)
トランスミッション:マニュアルモード付トルコン式6段AT(6 Super ECT)
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4630×1845×1645mm
ホイールベース:2660mm
車輌重量:1750kg
最小回転半径:5.6m
タイア:225/60R18 100H
JC08モード燃費:12.8km/L
燃料タンク容量:60L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:5ドアステーションワゴン
ボディ色:レッドマイカクリスタルシャイン<3R1>
内装色/素材/オーナメント:ホワイトオーカー/本革/バンブー
装着されていたオプション:
     電動ムーンルーフ(108,000円)
     フロアマットタイプA(89,640円)





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 メーカーサイト

http://lexus.jp/models/nx/




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。










前田恵祐



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