ルノー・トゥインゴ GT 試乗インプレッション(2009.10)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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ルノーの小型パーソナルカー。合理的で実用的なルノーの中でエントリーカーとも言えるこのクルマが2ドアの、どちらかというとクーペのような雰囲気を持っているのも面白い。今回試乗したのは昨年秋から日本導入された2代目のGTで1.2リッターのターボエンジンを5段マニュアルで駆る。
■ 概観
ホンダ・トゥデイの初代を明らかに意識した初代トゥインゴは、それはそれで、どちらかというと志半ばで敗れたトゥデイの行きかたを踏襲してくれたと思うことはできて、個人的には好意を持って受け入れていた。
2代目になってやや個性は薄れたか。窓が大きく室内が見通せる。乗る前から得られる”予兆”も大事。目がクリクリしていてかわいい。
質感は確実にアップしてはいるが・・・
■ インテリア
ベージュ系の中間色(と、ダークグレー)でまとめられた室内のトーンは絶妙。落ち着いているが暗過ぎずしっとしとした大人っぽい雰囲気。ダッシュボードなどはおおいにプラスチッキーだが、そこはムリして立派に見せようとセコセコしたところがなく、おおらか。安っぽいがそのおおらかさの一点を買う。
シートの素晴らしさはいうまでもない。小さいクルマなのにゆったりと座らせ、それだけで乗員の気持ちにゆとりを与えてくれる。もちろん長距離ドライブにも向くだろう。
センターメーターのユニークさは認めるが、やはり慣れた場所に揃っていたほうが運転はしやすい。窓が大きく、また例によって窓の下端が相対的に低めであるために開放感もある。いかにもフランス。
視界が開けている分BMWミニより広く感じるかもしれない。
ラゲッジスペースは後席のスライドによりご覧の具合に。
■ エンジン/トランスミッション
エンジンは1.2リッター、ターボ。時流に沿って、もっと大人っぽいものになっているかと想像していたら完全に裏切られた。”ドッカン”でこそないが、かつてのランチアY10やフィアット・ウーノのようにビュンビュン回り、力もある。フランス流のどちらかというとまったりとしたエンジンではなく、目の覚めるようなイタリア車に近い持ち味。後述するハンドリングともあいまって小さな子供とはしゃぐような気持ちで立ち回ることも出来る。それでいてボトムエンドのマナーや扱いやすさは充分に確保されているから日本の街中で困ることもなく、普通にお行儀良く走りもする。エンジン音は官能的でこそないが普通に聞こえる。静かではないが、むしろそれでよしと考えているのだろう。
それに合わされて5段マニュアルもどちらかというとエンジンを回して使う側にギアリングされている。操作感も軽快でストレスもなく、たいへんよろしい。
■ 足回り
ハンドルはクイックでこそないが操作に要する力は軽く、掌には路面からの充分な情報を得ながらヒラリヒラリと楽しく走る。GTの呼び名ほどに固められてはおらず、たしかに姿勢をできるだけ平行に保とうとはするが、それも不自然なほどではなく、普通にロールもするしまたそのロール速度やプロセスもルノーだからヒトの感覚とシンクロしている。優しい乗り味だし、たぶん疲れにくい。それでいてカーブではタイアがジョリっと食いつくのがわかる。秀逸。
足回りからの音や振動はこのクラスなりに、これも普通に侵入するが不快でない。ヨーロッパの小型車として標準的。いたずらに背伸びして大人ぶっていないところもいい。
■ まとめ
やや引っかかるのはこのクルマを買おうとすると、カングーを買えてしまうということ。全体を見渡すとその一点のみが残念だ。あとはスタイルの好みだが、筆者は、確かに先代ほど個性的ではないものの、内装の雰囲気もいいと思うし、これはこれで可愛らしく充分お洒落だと思う。またそれには乗った印象が後押ししていることも間違いない。エンジンが良い意味で今風でないところや、元気だったりお行儀良かったりもできる身のこなしもいい仕上がりだ。
先にも名前を出したが、かつてのY10やウーノを知っていて懐かしく思える人にも向く。軽くて元気が良く、同時にお洒落でもあるラテンの小型車の魅力が一杯詰まっている。それでいて現代の基準やクォリティなのだから、これはなかなか魅力的な”プチエンスー”ではないかな、と思った。
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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。
前田恵祐
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