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#199 マツダ・フレアワゴン ~ 試乗 〈2018.2〉



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください

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 フレアワゴンというクルマ 

 ご存知のようにマツダ・フレアワゴンは、スズキ・スペーシアとほぼ同じクルマである。OEM車である。ダイハツ・タント等に端を発した軽自動車のサイズ枠の中でいかに室内スペースを確保したパッケージングを実現するか、というコンセプトのもと、各社それに追随した中の一台。同じようなカタチをしているが、乗ってみると各社、各車にキャラクターというものがあり、同じようなカタチをしているからこそ、目に見えない、クルマを走らせた時の印象に違いが見えるというところがちょっと面白い。


 外 装 



 ドアのピラー部分を同色処理にしている。いつもならブラックアウトしてガラス面が広い、という印象作りをおこなうが、今回はそうしなかった。プレーンで装飾感も少なく、決まりきったサイズとカタチの中で、新しい、今までとは違う印象を作り出そうという意思が見える。まったく違うカタチだが、でもどこかフィアット・パンダやルノー・カングーを思わせる。




 サイド面には凹凸をつけているところが新しい。ソリッドカラー然として見えるが、これはメタリックカラー。しかしこうした色の選択も、いつも寒色系ばかりで印象に違いの少ない国産車の中では異質に思わせる。もちろん良い意味で。




 スライドドアのレール部分がもうすこし綺麗に処理できればなお良いのにとは思う。テールの処理はもうひと工夫あると、遠くから見てもこのクルマだとわかるのだろう。



 運 転 席 




 ハンドルは手動のチルト調整のみ。シフトレバーはインパネから生えているが例えばエアコン操作部との操作動線の干渉は少なくしてある。そのエアコン操作部は温度などをレバーを上下させて調整するタイプで、これはなかなか具合がよろしい。あまり視線を落とさずに操作できる。メーターパネルは最小限の情報に集約してある。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。足元も広くタイアハウスがペダルレイアウトに干渉することもない。ナビはディーラーオプション等でお好きなものを取り付けていただく、と。




 第一、第二ピラーとも細めで、例のホンダ式補助ミラーも活躍する。ドアミラーも大きく、四角く、視認性がいい。このクルマの内装のウリでもある、スーツケースのような造形のダッシュボードは明るい色だが、ガラスへの映り込みが大きくなりにくい位置にある。




 運転席からの斜め後方視界はこのように。運転しながら周囲がよく見えるクルマが欲しい、というオーダーがあったとするならこの種のクルマをオススメすることになりそうだ。ここにも室内設置の補助ミラー。良いアイデアはどんどん真似する。


 内 装 



 あまりうまく撮れている写真ではありませんが。ダッシュボードの印象はすこしゴチャゴチャしすぎていると個人的には思う。もっとスッキリさせて、それでも機能はしっかり、というデザインの方がこの種のクルマにはいいんではないだろうか。デザイナーのお遊び、あるいは、営業部門からのオーダーなのかもしれないが、見てくれや小手先技で騙されている感を少なくしたほうが、じつは支持を得やすいのではないか。




 真っ黒のシート生地に見えるが、何色かのカラーミックスになっていてあまり退屈でない。生地そのものも、いわゆるモケット、起毛ではなく、織物を用いていて、滑りにくさやフィット感など、なかなか按配がよろしい。シートそのものも、前回のスペーシアと同様、サイズも大きめでかけ心地も豊かな印象。この前席なら長距離にもイイかもしれない。

 前席頭上空間:こぶし2つ以上




 後席も、狭くないに決まっているわけだが、しかし、相変わらずシートは「チャイルドシート設置用」といった感じ。大人が長時間快適に過ごせるシートにはなっていない。平板すぎて身体を適切にホールドできず、背もたれは腰や背中にフィットしにくいし、サイズも小さい。こうした点を私の言うとおりにすると、今度は畳み込みやアレンジに支障するからできないわけで。走行中の乗り心地の面でも、後席は割を食っている。

 後席頭上空間:こぶし2つ以上
 後席膝前空間:こぶし2つ(後席スライド前端位置、前席筆者着座位置設定時)




 荷室スペースは後席をスライドさせるなどしてかなり調節できる。後席を最前端にしても後席スペースは充分だし、荷室は広がり、と、こうしたパッケージングならではの恩恵がある。



 走 り 



 主に低速域でモーターによる走行やアシストを行なうハイブリッドはスムーズで、しかも軽自動車の弱点とも言えるこの速度域でのトルク不足を補っている。アイドリングストップからの回復もいちいちスターターモーターが回る煩わしいあの瞬間が解消されているし、言われなければ電動アシストとはわからないくらいの仕上がりになっている。例によってスズキの技術的こだわりであるところの軽量設計もあって、走りは軽快、かつ快適である。


 はっきりいって、高速では力不足だろう。だから高速をバンバン走れるタイプではない。しかし、空いた地方国道をチョウシ良いペースで、しかもスムーズ、快適に移動するというようなシーンではこのクルマの良さは実感できるのではないだろうか。




 試乗車の車両重量は870キログラムで、例えばN-BOXの最軽量車より20キログラム軽い。軽く作ってあるが、しかし骨格ががっちりしている、というのもスズキの特徴で、走行時の車体の変形や振動、共振などがかなり押さえ込まれている。これは防振材などによるものではなく、基本設計におけるノウハウがモノを言っていると認識すべき。


 乗り心地は引き締まっている。硬いのではなく、骨格ががっちりしているからアシが設計者の狙い通りに作動している、という気持ちよさだ。これは好みの問題ではあるが、例えばN-BOXはこの点非常にしなやかさを「演出」しようとしている。しかし私はそれをあまりに「作為的」で好きになれなかった。ハンドルもフレアワゴン(スペーシア)のほうがキビキビしていて、小型車らしい清廉さがある。背は高いがロールの発生も自然な方だと思う。


 しかし、依然としてこの種のクルマの問題点は、背が高いのにサスペンションストロークが短いという印象があることだ。簡単に考えて、背が高い人はその分足も長く、その足の長さで長身を支えている。長身なのに足が極端に短いと安定が悪い。それをこうした軽自動車のハイトワゴンはサスペンションのチューニングやタイアで補おうとしているがそれにも限界はある。トレッドを広げられないなら、せめてあと3センチメートル、サスペンションストロークを伸ばして欲しい。室内空間、パッケージングとのせめぎ合いだと思うが、ストローク延長が解決してくれる問題は少なくないと思う。




 出発前にリセットしたドラコン表示平均燃費は21.0Km/L。市街地と山岳路が8割、高速が2割程度。なにも考えずに走ってこの値が出る。



 結 論 

「日本では軽自動車で充分ではないか」と述べ続けた自動車ジャーナリストがいた。20年以上前のことだ。そして今、軽自動車はかつてカローラが居た位置にある。国民の多くがこの規格で充分と判断し、この自動車不況の中たくさん売れている。しかし問題なのは、小さく、軽く、そして「安い」、ということがウリのはずだったのに、お値段までもがかつてのカローラと同等かそれ以上になってしまっていることだろう。


 ユーザーは自動車という商品に、どこまでの機能や付加価値を求めるのだろうか。アクセサリーやデコレーションを満載して重さと値段を吊り上げるという商法には、そろそろ飽きが来ているのではないだろうか。


 国産車は、しかるべき時にかつてのスバル360の哲学に立ち返る時が訪れるはずだ。高齢化の後に訪れる人口縮小とそれによるマーケットのシュリンクという大変化に、これまでのような拡大路線、付加価値デコレーション商法の限界が否応なく訪れると私は思う。


 フレアワゴン(スペーシア)の標準車のデザインを見ると、じつはそろそろメーカーはそのことを考え始めているのではないか、という気がするし、あるいは、これが今のユーザーの嗜好動向なのだとしたら、確実に世の中は非拡大の価値観を求め始めている証拠だと思う。


 150万円近いこのクルマの値段(試乗車)は、あくまでもまだハイブリッドなどの技術が平準化しておらず、コストをかけて開発を進めるべき途上にあるからそれが値段に反映されているに過ぎない。このあたりは、電動化、あるいは内燃機関における技術競争によりある程度の「答え」が見えてくると、それに従って値段も落ち着いてくると思う。しかしそれにはやはり10年単位でモノを考えなければダメだろうと思う。







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 筆者が感じたフレアワゴンの「良かった点」
・ハイブリッドのスムーズで弱点を補う走り
・車体設計の良さが各部に行き渡っていること
・デザイン

 筆者が思うフレアワゴンの「良くして欲しい点」
・後席の設計と座り心地
・サスペンションストロークの不足
・無駄に背が高いこと



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 参考データ

試乗日:2018年2月23日
試乗車:マツダ・フレアワゴン HYBRID XS
車両本体価格:1,468,800円(OP別)
型式:マツダ・DAA-MM53S
エンジン:R06A型(658cc水冷直列3気筒DOHC12バルブ)
モーター:WA05A型(直流同期電動機)
駆動方式:FF
トランスミッション:CVT
全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:870kg
最小回転半径:4.4m
装着タイア:155/65R14 75S(ダンロップ・エナセーブEC300+)
JC08モード燃費:28.2Km/L
ボディ色:シフォンアイボリーメタリック
内装色:ブラック/ファブリック
装着オプション:フロアマット(デラックス)消臭機能付(21,708円)




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 メーカー公式サイト

http://www.mazda.co.jp/cars/flair-wagon/






2018.2.24 記
前田恵祐

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