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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#044 スポーツハイブリッド

ホンダ CR-Z アルファ 試乗インプレッション(2010.3)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 軽量でコンパクト、故に機敏で燃費も優れるというFFスポーツカーを遡れば1983年の初代CR-Xに行き着く。途中ハイパワー化されたりセミオープンを提案したり、を経て、初代インサイトが登場するのは1999年のこと。やがてインサイトはホンダのハイブリッドラインナップの中核をなす小型乗用車に生まれ変わり、そしてこのCR-Zが誕生した。ホンダである以上スポーツカーは必要な品揃え。しかし時代にマッチした商品性を持っていなければならない。そこでというか、かつてのCR-Xの考え方をさらに延伸させたものがこのクルマ、ということになるだろうか。



 エクステリア



 CR-Xのイメージで描かれたデザイン。また、初代インサイトの真なる後継車はこのクルマかもしれない。むろん、各部今風に仕立て直されてはいる。ボンネットは歩行者保護のために丸くカーブし、どうしても薄くならなかったボンネットとバランスさせるように全高もそれなりに高め。初代CR-X比で実に105mmアップ。だからというか、サイドがノッペラにならないようにキャラクターラインが入っていたり、窓の後端をキックアップさせていたりといろいろ。



視界・扱いやすさ

 ドライビングポジションはスポーツカーらしく、床に近く坐り、足を前へ投げ出すようなスタンスになる。だから比較的ウエストラインが高くなって閉塞感を感じるかと思いきやそこは細かい調整が施されているようで、前や横方向の見晴らし良好。




 苦心の結晶、細いAピラーに湾曲したフロントガラスも効いている。全幅は5ナンバー枠を飛び越えているが、着膨れというわけではないので車両感覚は掴みやすい方。むろんボンネットは視認できないし、さすがに後方視界は限られるがそれはこのデザインの代償と捉えるべきだろう。総じてスポーツカーとしては乗りやすいクルマになっている。



インテリア

 インテリアデザインは昨今のホンダ流で凝った造形。写真で見るとややヘビーで目に煩いかなと思ったが、実際には機能が伴っているし、目に煩いと感じることはなかった。ダッシュボードを含む樹脂部品のフィニッシュレベルは高く、安っぽいところがない。Op込み総額300万円に届くお値段なりのもの。充分にプレミアム、個性的。




 メーターパネルはアナログとデジタルのコンビでコンパクトにまとめられていて、エコドライブに関するモニタもわかりやすく配置されている。個人的に思うのはブルーの照明は目に優しいということ。でも、運転状況によって色が変わる部分があまり目立たない気がする。照度のバランスの問題かな。




 前席の居住性はすこぶる良好。シートも大きくゆったりとしていながら剛性もあり、安心して身体を預けられる。これなら長距離も苦にならないはずだ。妙にスポーツカーぶったところがなく、この点でも乗り手を選んでいない。ガンガンぶっ飛ばすというより"ロードセーリング"のクルマだから、それでいい。後席は、まぁ、最寄の駅までの10分が限度。筆者が座ると、前席のスライドをうんと前寄りにせねばならないし、ハナから天井が低すぎて首を傾げないと収まらない。 





エンジン・トランスミッション

 二代目インサイトのパワーユニットもスムーズかつ軽快で、充分スポーティと感じていたからこのクルマにも期待はしていたのだが、見事応えてくれたという感じ。実感としては2リッターNAエンジンくらいの力を感じる。1.5リッターという排気量なりの各部品の軽さが生み出す軽快感に、モーターが与える豊かなアシストがうまくマッチしていて、軽快だがゆとりも充分、高いギアに入れっぱなしのズボラな運転もすんなり受け入れてくれる。というよりクルマがそう促す(メーター内にシフトアップインジケータあり)。




 回しても軽さと豊かなトルクを伴い、しかも爽快なサウンドの演出まで抜かりはないから気持ちよくないわけがない。そらかつてのSiRのような種類のものではないが、充分現代的でスポーティ。ちょっと出来の良いターボエンジンのような・・・そういえばVWのTSIがこんな感じのパワー感だったな、とは個人的な感想。因みに「スポーツ」「ノーマル」「エコ」の3モードの印象の違いは思いのほか明瞭。




 6段マニュアルのレバーは決して短すぎず適度なもの。スムーズで軽いタッチと相まって運転操作のリズムを取りやすい。例えばシフトアップのためクラッチを切ったときのエンジン回転の落ちる速度とシフトレバー操作にかかる時間、クラッチペダルのストロークや繋がるポイント、これらのバランスがとてもいい。こうした部分に気配りがあるのはスポーツカーとして大事なこと。仕事の丁寧さを感じる。


 クラッチを切り時速おおむね10km/h以下、そしてギアが抜かれるとエンジンはアイドリングストップとなる。また、改めてギアを入れるとそれを察知してエンジンは素早く再始動する。路線バスの一般的なアイドリングストップとは若干異なるロジック。


 余談1、エンジンが止まり、シーンと静まり返ると、同乗者と「さあナニ話そうか」と顔を見合わせ虚しくなるのはわたしだけ?


 余談2、このクルマのエンジン、トランスミッションをインサイトに移植して、インサイトの"タイプS"があってもいいなぁとも思った。



足廻り

 短い車体で引き締められた足の組み合わせで思い出すのはBMWミニ。確かに似ていて最初はゴツゴツが気になるがしばらく走ると嫌な振動や突き上げはカットされているとわかる。軽さ短さを利して充分機敏、そしてダイレクト。これでもう少しハンドルがクイックならなぁ、というのは欲張りすぎだろうか。




 共通性のあるインサイトも、これ自体ベースグレードでさえ充分以上スポーティに峠を駆け回れたから、それを基に作りこまれたCR-Zも素性はいいはず。より軽く機敏でパワーもあり、ましてマニュアルギアボックスもあるわけだから、箱根はもっとも相応しいステージだろう。



総評

 「プレミアムな」ハイブリッドスポーツ。質感やエンジンのフィーリング、足回りや車体のバランス感覚など、大人も楽しめるくらい仕上がっていると思う。ただ、21世紀の新世代スポーツとして、さらに斬新ななにかをカタチにできなかったものかな。かつてのCR-Xにアイデアを依存しているというのはやや安易ではなかったかな。








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試乗データ

試乗日:2010年3月5日
試乗車:ホンダ・CR-Z α (アルファ、車両本体価格249.8万円※OP別)
型式:DAA-ZF1
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4080×1740×1395mm
ホイールベース:2435mm
車両重量:1130kg
トランスミッション:6段マニュアル
ボディタイプ:3ドアクーペ
ボディ色:クリスタルブラックパール
内装色:ミディアムグレー(ファブリック)
装着されていたオプション:
Honda HDDインターナビシステム(以下+項目含む28.6万円)
 +180°リアワイドカメラ
 +ETC車載機
 +ワンセグ地デジチューナー

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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐


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