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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#066 欧州車顔負け

トヨタ ラクティス 試乗インプレッション(2011.1)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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エクステリア

 個人的にはフィットを意識しすぎているなと感じているが、まぁこのサイズで室内空間を確保したりいろいろを盛り込むとこういう形になるといわれれば、確かにそうなのだろう。




 目の覚めるような赤。こういう色もたまにはいい。着ている服の色で気分が入れ替わるように、クルマの色にもたまには冒険をしてもいい。日本車には暗くて地味な色ばかりだ。




 「お、ラクティスだ!」と思わせるような趣意溢れるデザインはおこなえないものか。



視界・扱いやすさ



 ”ライバル”フィットは前席からの眺めが実にいい。明るいし開けている。まるで居心地の良いバルコニーやサンルームにでもいるかのようだ。ある意味フィットはそこに命運をかけている。それと比べてラクティスはどうかというと、一言に「普通」。運転もしやすいし、視界もいい。滅茶苦茶良くもないが、悪いところもない。ごく常識的であることに安心できるタイプだ。



インテリア・ラゲッジ

 黒ベースの無難なコーディネイト。フィットの持つ雰囲気をユニクロに例えた人がいるが、だとすればラクティスはさしずめニッセンといったところか。良い悪いではなく、あくまでも趣向であり、好みの問題。ファッションは着る人や持ち主の感性がいかに洗練されているかを示すもの。しかしあまり目立っても、進みすぎても困るよ、という考え方もある。




 型崩れなく、欲しいところをしっかり押さえ、恐らくや疲労も少ないであろう前席。どちらかというとドイツ車的なピシッとした坐り心地。トヨタがそうするのだから、これが多くの日本人が好むアジ、ということなのだろう。




 シートアレンジに趣向を凝らした従来型よりも、今回は快適性や疲労の低減に注意を払ったと説明を受けたリアシート。あれこれとシートアレンジできても、結局それだけの大きな荷物を乗せる機会はそんなに頻繁ではない。ならばアレンジはほどほどに、シートの正味の性能=坐り心地で勝負するのが何より合理的。中央三点式ベルトとヘッドレストはそろそろ用意しましょう。




 これだけあれば充分でしょう、その1。




 これだけあれば充分でしょう、その2。(アンダーフロアスペース)



エンジン・トランスミッション

 試乗車の1.5リッターエンジンはトルクが太くて使いやすい。車体に対しても余裕あり。ここぞというときにもドライバーの要求にきちんと応えてくれる。CVTもダイレクトに力強く馬力を伝える。




 対して1.3は確かに安いが、1.5のような余裕のあるエンジンならアクセルを深く踏み込まなくても用が足りてしまうことが少なくない。そのため使い方によっては実用燃費で有利に働くことさえあるだろう。ましてやカタログ上の燃費は1.3も1.5も同じ値。自動車税額も変わらない。ならば馬力でも優位に立つ1.5の方がなにかと役に立ってくれるように思うのだが、売れ筋は10万円安い1.3なのだろうな。アイドルストップは全グレードとも未装備だがこれは時間の問題か。



足廻り

 実にガッシリとしたハンドルの手応え。切ったときのダイレクト感、その後の追従もグイグイいく。思った以上に運転が楽しいタイプで、一言に「若々しい」。ブレーキもいい。乗り心地も引き締まっている。だからといってゴロゴロとバイブレーションを発するでなし、剛性が高くガタツキも少ない。シャキッとしていて、しかも同時に角が丸い。若々しいが老練でもある。これまでの日本のコンパクトカーの常識を塗り替えている。足廻りだけを取れば5つ星を与えてもいい。




 ライバルのフィットがどちらかというと繊細でしなやかな味をもち、まるでフランス車のようなふんわりとした走りなのに対しラクティスはドイツ的に骨太。じつはポロなんかよりずっとゴツい演出だと筆者は感じた。これはこれで行動派には好まれるだろう。充分アリだと思います。



結論

 姿かたちがフィットにちょっと似ているということ以外、実は主だった欠点を見つけられなかった、というか、むしろ、これはこれでいいじゃないか、と納得させられてしまったというのが今回の試乗の結論だ。つくりや仕立てはトヨタ流で実に合理的、しかし実用車というのはそれで充分であると考えるユーザーには歓迎されるだろう。ラクティスには「実際はこんなところでしょ?これで充分でしょ?」という冷静さが見てとれる。そんな冷静さ、あるいは大人っぽさという言葉に置き換えてもいいが、そんなところに多くの日本人はトヨタ車の安心感を見出すのだろう。






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5段階評価/★★★
☆☆
フィットを意識しているように感じるスタイル、アイドルストップ等の取り組みの遅れ、後席中央三点式シートベルト・ヘッドレストの未装備で減点3。足廻りの仕上がりの良さで加点1。



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試乗データ

試乗日:2010年1月13日
試乗車:ラクティス  1.5G (車両本体価格:1,680,000円)
型式:DBA-NCP120
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3995×1695×1585mm
ホイールベース:2550mm
最小回転半径:4.9m
車両重量:1110kg
トランスミッション:Super CVT-i
ボディタイプ:5ドアワゴン
ボディ色:スーパーレッドV(3P0)
内装色:ブラック/ファブリック



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メーカーサイト
http://toyota.jp/ractis/



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐


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