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#085 増殖系ハイブリッド

トヨタ アクア G ~試乗インプレッション(2012.2)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 ハイブリッド車の難点を強いて言うならシステムが重く、格納場所を食うために車体を小さくしにくいところだ。トヨタの現行ハイブリッドシステムはとにかく機構が複雑で、さらに小さくしにくい。ホンダはその弱みを突いた展開をしているが、ホンダはホンダの弱みとしてエンジンの比重が大きく、これ以上電気側に振ることが難しい。そんな痛し痒しの中にあってトヨタはハイブリッドの小型化に挑戦した。それがアクアである。



エクステリア



 ヴィッツより明快で、小さいクルマの良さをすっきりと表現したスタイリング。もう少しトンガった個性を与えても良かったかなと思うが、やはりそこはトヨタも量販を狙っているから敢えて冒険もしない。




 縮小版プリウスといったおもむき。海外では”プリウスC”。




 後ろを絞らないと空力に優れない。その定石どおりのデザイン。




 特徴的な縦長テールライト。



視界・扱いやすさ



 ハイブリッドを前面に出したクルマには、この種のセンター配置デジタルメーターを、という考え方のようだが、個人的にはカムリのようなコンベンショナルなデザインの方が情報も整理されていて良いと思う。ハンドルは例の楕円形でこれは賛否両論だが、筆者は気にならない。




 フロントスクリーンの傾斜がわかるショット。視界はヴィッツなどから乗り換えても違和感のない程度。とくに開けているとは感じない。ガラスに内装の白っぽい部分が映り込んでいるのがわかるだろうか。




 シフトレバーの操作ロジックはプリウス系とは異なる標準的なもの。他車からの乗り換えでも運転者をマゴつかせない。パーキングブレーキもフロア上にあるハンドレバータイプ。



インテリア

 全体的にプラスチッキーで、安っぽいという人もあるだろう。しかし軽く安く、同時にそこそこの質感を、という難題をトヨタ基準の妥協点で仕上げたものといえる。これ以上質感を、そら確かに上げられるだろうが、価格、重さ、加工のしやすさ、耐久性など諸々勘案した結果のはず。そこはコストと品質に厳しい目を持つトヨタの判断だから私はこれで納得すべきだと思う。




 前席は、ギュッとアンコが詰まった感じのする坐り心地で、こう言ってはナンだが思った以上にしっかりしている。バックレスト、座面ともにサイズも充分。ラチェット式の高さ調整も調整幅が大きく取られている。

前席ヘッドルーム:こぶし縦に1つ




 後席は、外観からもわかるようにかなりスペース的に限られる。デザインと、もうひとつは後席座面下にハイブリッドのバッテリーや制御機器を収めるのも一因。

後席ヘッドルーム:手のひら1枚
後席膝前空間:手のひら2枚



エンジン・トランスミッション

 既存のシステムと同じ考え方の1.5リッター+モーター(新設計)をヴィッツサイズに押し込んだわけで、そもそもこのサイズに1.5リッターあるだけで充分以上なのだから、馬力が足りないわけがない。思った以上に悠々と、そして機敏にも走る。本当なら1.3リッターや1リッターでもいいはずだが、それをしなかったのは新しいシステムを起こすコスト増を嫌ったのだろう。




 もはやブレーキにも違和感はなく(あるいは筆者が慣れたか)ペダルタッチも悪くない。走ってみればエンジンの助力を得るシーンも目に見えて減っている。熟成度高く、これはエンジンがいよいよ退化していくに違いないと思わせた。今はエンジンも動力に加担しているが、そのうち発電の為だけの存在になっていくだろう。次世代ハイブリッドの姿があるとしたらそうした方向性になるはずだ。こうなるとキーをひねればいやおうなくエンジンがかかってしまうクルマを所有することが罪悪感にさえ思えるほど。




 試乗時のスポット燃費は、街中の渋滞が半分を占めたり、撮影のためにシステムON状態での駐車を10分程度はさんだ為もあってか14.8km/Lだった。



足廻り

 ヴィッツやパッソのような軽すぎるところはない。むしろハイブリッドの為やや重いせいか適度に重厚感がある。カタいがストローク自体はしっかり取られているようだしトヨタにしてはシャシ剛性を感じるから余計なブルブルワナワナはなく、すっきりとした印象に仕上がっている。




 ハンドルも機敏で反応良く、キビキビ走ることが出来る。クルマの動きに一体感もあり山岳路に持ち込んでも気持ちよく応えてくれるだけのものはあるのではないかな。それもこれも、ダウンサイジングのおかげである。(注:試乗車はツーリングパッケージ装着車)



結論

 トヨタは厳しい中でもこうしたチャレンジを仕掛けてくる。つまり、既存の旗艦車種プリウスの好調にあぐらをかかず、ハイブリッド車としての進化をきちんと考えてこうしたクルマを出してくる。確かに既存のハイブリッドシステムをヴィッツサイズに載せただけ、と言ってしまえばそれまでだが、やるのとやらないのとでは大違いだ。






 ハイブリッド車はまだ高い。しかしそれを安くしようという努力は大いに感じられる。ただそれとは別に、このサイズまで来ると、トヨタ式の複雑で重くなるハイブリッドシステムが果たして正しい選択なのか、という議論もあるだろう。ことによっては軽量化で相殺されて、高効率ガソリンエンジンでも、そう悪くはないのではないか。ま、このあたりはまだまだベストといえる答えは出ないだろう。これからそれを探していくのが自動車業界の当面のテーマなのだ。



 とはいえ、現行プリウスが「ちょっとデカすぎるな」と感じる、ちょっと時流に敏感な向きにアクアは良き選択肢になるのではないだろうか。



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5段階評価/★★★★
値段が、びっくりするほどには下がっていないこと(-1)



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試乗データ

試乗日:2012年2月10日
試乗車:トヨタ アクア G(車両本体価格:1,850,000円)
型式:DAA-NHP10
エンジン:1NZ-FXE+1LM
トランスミッション:電気式無段変速
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3995×1695×1445mm
ホイールベース:2550mm
最小回転半径:5.7m(OPの16インチホイール装着の為。標準は4.8m)
車両重量:1090kg
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:クールソーダメタリック #8V7
内装色:アースブラウン
装着されていたオプション:
▲スマートエントリーパッケージ(53,550円)
 +スマートエントリー
 (運転席・助手席・バックドア/アンサーバック機能付/スマートキー2本&スタートシステム)
 +盗難防止システム(エンジン・モーターイモビライザーシステム)[国土交通省認可品]
 +コンライト(ライト自動点灯・消灯システム/ランプオートカットシステム)
▲ツーリングパッケージ(110,250円)
 +195/50R16タイア&16×6Jアルミホイール
 +大型リアルーフスポイラー
 +ヘッドランプスモークエクステンション
 +専用ステアリング特性
 +専用サスペンション
▲アドバンストディスプレイパッケージ(42,000円)
 +TFTマルチインフォメーションディスプレイ
 +タッチトレーサーディスプレイ
 +ステアリングスイッチ
 (オーディオ操作・TRIP・DISP・空調スイッチ/タッチトレーサー機能付)
▲ナビレディパッケージ(42,000円)
 +バックカメラ
 +6スピーカー
 +ステアリングスイッチ
 +工場装着バックカメラ用ガイドキット
▲スマートナビ(NSDD-W61)(130,725円)
▲フロアマット(19,950円)



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メーカーサイト
http://toyota.jp/aqua/index.html




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐


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