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#117 殊勲十年

トヨタ シエンタ X "Lパッケージ" ~ 試乗インプレッション(2013.4)

この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 10年生き延びるには理由がある・・・。2003年に登場したシエンタは、ミニミニバンの定番である。しかし途中一度のブランクを経てなお普通なら二世代分の期間を一代現役であり続けている。ただのミニミニバンだと思いがちだが、さまざまな事情があったにせよこの長期間、しかもコンスタントに台数を捌いているには理由があるはずだ。



 エクステリア



 親しまれる理由の一つにはこのクリーンでキュートなデザインがあるだろう。今改めて見るとAピラーの角度がちょっと寝すぎているかなという気がしないでもないが、新興住宅地など新しく整備された街並みに溶け込む佇まい。古臭く見えないのは優れたデザイン力の証拠。




 Cピラーがブラックアウトされグラスエリアが広く見えるのもポイント。




 あれやこれやと盛り込まず、スッキリしたグッドデザイン。



 視界・扱いやすさ



 ドライバーズシートからはフェンダー上端の峰を視認出来る。センターメーターはアナログだが、個人的には視線をダッシュ中央に移すワンクッション挟むことを考えると、初代ヴィッツのようにデジタルの方が有利という気がする。駐車ブレーキは足踏み式で解除は二度踏み。チルトステアリングに運転席シートリフターあり。パワーウインドウは前二席分のみがワンタッチ。二列目に子供を乗せる機会が多いことを意識しているのだろう。




 Aピラー方向。昨今の三角窓付きに慣れた目には、スッキリしていてよろしい。




 斜め後方視界。



 インテリア・ラゲッジ



 試乗車は黒系の内装だが明るいベージュ系もある。シートは無難に身体を支えてくれる。特別何か凝った部分やこだわりも感じないが、それでいて何ら過不足のないかけ心地。しかしそれがまた飽きの来ない乗り味を醸しているのだろう。

前席頭上空間/こぶし2つ半




 二列目。見た目は薄いが坐って見ると底突きするわけでなし、型崩れするわけでもなし、こちらも無難。この二列目の座面下に三列目シートを収納し、平らな荷室を確保する仕組みになっている。スライド幅も確保されており、三列目を仕舞い込み広い荷室広い足元のファイブシーターとしてもイケる・・・というかほぼそのように使われるのだろう。座面が一段高く前方視界良好。ただしひじかけが無かったりつかまる場所が少なく、走行中ちょっと困るかも。

後席頭上空間/こぶし2つ
後席膝前空間/こぶし2つ




 三列目はさらに薄っぺらい、見た目完全な緊急用だが、じつは坐って見ると「収まり」がいい。身体がどこかにつかえるわけでなし、頭上も辛うじてスペースがある。二列目を後ろに下げても足元がギュウギュウということにはならない。エマージェンシーとしては上等。ちなみにこの三列目を畳み込む際には、リンケージにダンパーも備わっており作動がスムーズ。芸が細かい。

三列目頭上空間/手のひら一枚
三列目膝前空間/手のひら一枚





 7人乗せて、その上荷物もたっぷり、そいつはさすがに無理と言うものだ。しかしそれで充分。7名乗車と広い荷室がトレードという構成でも十二分な使い勝手だ。



 エンジン・トランスミッション



 1.5リッター直列4気筒、おなじみ1NZ-FE。1.2トン少々の車重にはほどほどの動力性能。トルクも充分にあり、CVTとのマッチングもストレスがなく静か、そしてきわめてスムーズ。願わくばアイドリングストップなどの最新機能を盛り込んであるとなお親切だなとは思う。



 足廻り



 重いものを無理して支えているという、いわゆるミニバン特有のダルさは感じない。ということは車体、足廻り、各部の強度が充分にとられ、重さに負けていない基礎体力があることを意味している。コーナーでのロールの深さとそのスピード、ブレーキ時のダイブなど、姿勢制御と言う点でもチェックが行き届いており、不快な動きがなく自然な走りだ。乗り心地もフラットで走行騒音や振動もよく抑えていて、現代水準。ただしタイアのサイズはこれでミニマムだと思う。縦横方向とも接地面を稼げるサイズを与えた方が心理的にもさらに余裕が持てるはずだ。



 結論

 10年前、もともと出たときから良く出来ていたのかというとそういうわけではない。時を追うごとにブラッシュアップがなされ、磨かれたはずだ。私の記憶では、初期のモデルはもっとエンジン音が透過したし、特にロードノイズや振動の処理はかなりの改善を見ていると思う。




 それよりなにより、実用車としての使い勝手は今もって充分以上のレベルにあり、合理的なクルマだ。細かく見れば後発最新車種に劣る部分もそれはあるだろうが、大きな見劣りがあるというわけではないし、顧客にきちんと支持されてコンスタントに売れ続けていると言うことは何よりの勲章だ。新車としての初期投資を充分に回収した上でさらにブラッシュアップを続けながら完成度を高め売り続けるというスタイルはトヨタの常道から外れているが、こういう売り方もあるのだと、トヨタ自身がこのクルマから学ぶものもあるのではなかろうか。



 10項目採点評価

基本ポリシー >>> 8
スタイル/インテリア >>> 8
エンジン/トランスミッション >>> 7
NVH >>> 8
ドライバビリティ >>> 8
スペース >>> 9
気配り度 >>> 8
先見性 >>> 7
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 8

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 試乗データ

試乗日:2013年4月18日
試乗車:シエンタ X "Lパッケージ"(車両本体価格:1,655,000円)
型式:DBA-NCP81G
エンジン:1NZ-FE
トランスミッション:Super CVT
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4100×1695×1670mm
ホイールベース:2700mm
最小回転半径:5.2m
車両重量:1220kg
タイア:175/70R14 84S
JC08モード:17.2km/L
ボディタイプ:5ドア3列シートミニバン
ボディ色:ライトグリーンメタリック<6U6>
内装色:ダークグレー/ファブリック
装着されていたオプション:
    ナビゲーションシステム
    フロアマット
    ナノイードライブシャワー



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 メーカーサイト

http://toyota.jp/sienta/index.html




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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。






前田恵祐
 



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