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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#126 ブレのなさでは負けません


VWゴルフ TSI ハイライン ~ 試乗インプレッション(2013.7)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 フォルクスワーゲンの中心車種、ゴルフが7型に生まれ変わった。毎回従来モデルのイメージを残しながら、外観以上に内容のつまったモデルチェンジとなるのが通例で、今回はプラットフォームから一新され、エンジンにも新たに気筒休止システムが与えられるなどしている。その気筒休止機能を備えた、1.4リッターTSIハイラインで新しいゴルフの出来を確かめてきた。

エクステリア



 太いCピラーを持つオーソドックスな5ドアスタイルはゴルフのアイデンティティ。細かな部分の意匠に変更は加えられているが全体の雰囲気は前モデルに通じる。いたずらに変化を求めることなく、内容で着実な進化を遂げるのだとするポリシーの表れ。保守的といえば保守的なデザイン領域だが、だからといって古臭いわけではなく、充分な質感を伴って存在感を醸す。




 サイドビューも言われないとゴルフ7だとわからないくらいだが、わずかながら全高は下げられているという。




 シンプルながら質感が高く、また仰々しくないガイシャ。そこが日本人に受容れられる所以か。



視界・扱いやすさ



 太めのグリップを持つハンドルは手動チルト&テレスコピック調整。下端はカットされ乗り降りの助けになる。このグレードのシートは手動が標準でラチェット式のシートリフターを備えリクライニングはダイアル。パワーウインドウは全席ワンタッチ。純正オーディオはタッチパネル式のコントロールで標準でバックカメラを備える。また、現在は純正のビルトインナビの設定は無く試乗車はパイオニア製の外付けタイプを備えていたが、年内にはビルトインナビがオプション設定されるとの由。駐車ブレーキはパサートのような電気式でシフトレバー左脇にそのスイッチがある。信号などで停車した際に自動でこのブレーキがかかり、アクセルオンで自動解除される。また停車中シートベルトを解除したり、ドアを開けたりするとやはり自動で作動する。例えばドアを開けて後方確認をしながら駐車するような人にとってはちょっと煩わしいかもしれない。因みにざっと見たところでは例のベトベト樹脂を用いている箇所はなさそう。ま、何年かしてみないとわからないけれど・・・




 左Aピラー方向。小さな三角窓あり。これは大役を果たしてくれるわけではないが、あるのとないのとでは心理的にも違う。ピラーは太いが前ガラスの角まで回りこんでおらず、視界はすっきりしている。




 左後方視界。このクルマのオヤクソク、Cピラーがやっぱり太い。



インテリア・ラゲッジ



 モデルチェンジのたびに質感がアップし、樹脂部品の質感や部品同士の噛み合せなどにも注意が払われていることがわかる。前席はややヒップポイントが低め。シートそのものはかつてのようなゴツさは影を潜め、第一印象はソフトな坐り心地だがそれは表皮などがそう思わせているだけでフレームの剛性などはいつもどおりがっしりしていることが次第にわかる。
前席頭上空間/こぶし1つ半




 後席もヒップポイントはあまり高くないが、座面の後傾角が適切で一度身を預ければ落ち着き無く姿勢を調整しなおすなどの必要はなさそうだ。広さはもはやゴルフとしては当たり前というくらいで従前からの変化は感じないが、しかしそれは元々充分以上の広さを持っていたことを意味する。
後席頭上空間/こぶし1つ
後席膝前空間/こぶし1つ半




 ラゲッジは昔ほどアドバンテージがあるわけではないが横方向の掘りの深さは充分な配慮。

エンジン・トランスミッション

 ハイラインの1.4リッターTSIの今回の目玉は気筒休止システムで、走行中、負荷に応じて2、3番シリンダーが停止する、正確には燃料がカットされるという仕組み。そしてその作動はメーター内のインジケータで確認しなければわからないほどスムーズ。街中でもアクセル開度に注意していれば頻繁にこの気筒休止は作動するので燃費への貢献度は高そうだ。市街地メイン、炎天下の中渋滞も挟んだ試乗中の平均燃費は10Km/L。




 全体的な出力は2リッターNAくらいというのは今までと同じ。特筆すべきは遮音で、これはかなり頑張ったと思われる。音と同時に振動も抑えているので、ただ単に詰め物をほどこして得たものではないと推する。DSGもさらに磨きがかかって発進からスムーズで手動シフトにもレスポンシブ。

足廻り

 VWで唯一残念なのが足廻り。ま、個人的な好みの範疇ではあるが、このゴルフ7も含めてサスペンションストロークが短く、アッパーマウントが低いように思う。ロール運動軸(仮想軸)も低いため乗員の頭が振られやすい傾向にあり、恐らく攻め込んでいくとイン側のタイアがリフトしやすい傾向があるはずだ。サスペンションがグッと受け止めてタイアがゴリゴリするので一見手応えのある走りだと思われがちだが、あまり賢明ではないと思う。ストロークは長めに採り、ロール運動軸も上げたほうが旋回中のバンプや不測のブレーキング等に対するキャパシティも増え、また乗員も快適である。




 しかし、ゴルフ7はそんな中でもストロークの精度とダンピングのバランスを高いレベルで両立しており、第一印象として路面への当たりがソフトなこと、またピッチングも最小限で不快感は少なくロードノイズと振動もきわめて抑えられており、全体的にまろやかで静かな乗り心地だ。ただしVW車は往々にしてモデルライフ途中でのセッティング変更を試みることも多いから、購入する場合は都度確認されたい。またこのグレードのリアサスペンションは4リンク、他グレードはトーションビーム。試乗車にはアダプティブシャシーコントロールなるオプションが備わっていた。これはノーマル/コンフォート/スポーツ、三種類の減衰特性とパワーステアリング特性を選ぶシステムだが、少なくとも日常走行においては気分の問題。ついにゴルフもこういうモノを備えるようになったか・・・


結論

 ガシッとソリッドで硬質なボディに静かで質感の高いインテリア、見た目は大きく変えなくても内容の進化で顧客に訴えるという手法はいつもながら知的で賢い印象をもたらす。今回は環境性能の更なるレベルアップと高級とさえ言えるほどの騒音、振動への対策が挙げられる。ゴルフは無駄に進歩はしないが着実に進化する。華やかさはないがモノの良さを確実に感じさせる。そのブレのなさ、筋の通ったポリシーは他では得がたいものだ。購入相談を受けたとするなら真っ先に名の挙がる一台であることは間違いない。



10項目採点評価
基本ポリシー >>> 8
スタイル/インテリア >>> 8
エンジン/トランスミッション >>> 10
NVH >>> 8
ドライバビリティ >>> 9
スペース >>> 9
気配り度 >>> 8
先見性 >>> 8
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 8





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試乗データ
試乗日:2013年7月11日
試乗車:VW ゴルフ TSI ハイライン(車両本体価格:2,990,000円※OP別)
型式:DBA-AUCPT
エンジン:CPT
トランスミッション:7段乾式ツインクラッチDSG
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4265×1800×1450mm
ホイールベース:2635mm
最小回転半径:5.2m
車両重量:1320kg
タイア:225/45R17
JC08モード:19.9Km/L
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:パシフィックブルーメタリック(D5)
内装色:チタンブラック/アルカンターラ+ファブリック
装着されていたオプション:
       バイキセノンヘッドライト/ヘッドライトウォッシャー
       アダプティブシャシーコントロール
       ナビゲーションシステム(AVIC-MRP009-V)
       フロアマット
       ETC





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メーカーサイト


http://www.volkswagen.co.jp/ja/models/golf.html



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐



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