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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#129 もっと先進技術を訴えるべきだ


ホンダ フィット ハイブリッド 試乗インプレッション (2013.9)




この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 フィットが早くも三代目である。時間が経つのは早い。2001年、センタータンクレイアウトを引っさげてコンパクトカーの新基準を作り上げた。ホンダのラインナップの中でも中核を成す車種として、昔のシビックのポジションをそのまま引き継いだ格好だ。この新型の目玉はやはりハイブリッドで、その方式は従来型とも異なれば、アコードに採用されたものとも異なる。定番であるが故に難しくなるモデルチェンジであっただろう新型フィットを試してきた。



エクステリア



 フロントマスクは、ヨーロッパのシビックをイメージさせるテイスト。あとは基本的にこれ以上の条件を飲みようがない、パッケージ、デザイン。あとは面で抑揚をつけたり、プレスラインを入れたり、というイジリ方になってくる。




 横から見るとあまり変わり映えがしないようで、じつはワンモーションフォルムはその度合いをより強め、一言で言うとツルンとしたシルエットになった。




 テールランプは「北欧」テイスト? アルミホイールのように見えて鉄ホイール+樹脂カバー。



 視界・扱いやすさ



 インパネはより機能的なデザインに。ハイブリッドは平時タコメーターを表示しない。シフトレバーはプリウス式。駐車ブレーキは一般的なハンドレバー。ハンドルはチルト&テレスコピック。メーカーオプションナビやエアコン操作部はタッチパネル。しかしこれはボタンを押した感触がないためブラインド操作は不向き。パワーウインドウは運転席のみオート。運転席はラチェット式のシート全体が上下するリフターを備える。




 オートライトのポジションは、「OFF」→「車幅灯」→「AUTO」の位置で最後が「主前照灯」。




 各社腐心のAピラー処理。衝突時の強度を左右する部分だから妥協は出来ないし、取り回しや車幅感覚にも影響があるからその点でも妥協は出来ない。フィットのそれは前端に向かって扁平なカタチになっていく。苦心の跡が見られる。日なたに向くとフロントガラスにはご覧のような映り込み具合。




 こちらも後突対策で安易に間口が取れないジレンマ。故に世の中全体として補助カメラが普及していくのでもある。「北欧」的なライト配置を採るよりガラス面積に充てたほうがよかったのでは?



インテリア・ラゲッジ



 試乗グレード、Lパッケージのシート表皮はサポート部とヘッドレストに”プライムスムース”と呼ばれる合皮、中央部分にはファブリックのコンビ。ドア内張りもサポート部に準じている。坐り心地はサイズが大きめでゆったりしているのと、従来型に対してサイドサポートがよりはっきりと存在感を示しており、横Gに対するサポート感も上々。外装色11色(ハイブリッドLパッケージで選択できるのはうち9色)とたくさんあるが、内装色は黒系と、グレードによってライトグレーやアイボリーが一部選べる程度で選択肢はやや少ないか。

・前席頭上空間/こぶし1つ半




 後席の膝前スペースはこぶし一つ分増えているというが、元々広かったので特別改善された印象はない。前方の見晴らしは従来型よりやや落ちているような気がする。シートの座面高が低くなったのと、そうさせた理由はルーフ後端を出来るだけ弓なりに近づけたため天井が下がった、ということではないだろうか。デザインの為というより、空力のため。

・後席頭上空間/こぶし1つ
・後席膝前空間/こぶし2つ




 後席の背もたれは6:4分割可倒、ワンアクションで平らなスペースができる。ラゲッジの床面積は前後方向に1センチだけ狭まっているというが、積載容量全体では同等以上を稼いでいるという説明を受けた。ゴルフバッグは横方向には載らない。



エンジン・トランスミッション

 従来の1.3を廃止し、1.5に統一したのは謎。本来なら電気の領分を増やしてエンジンは縮小していく方向が正しいと思える。以前のものと比べてアクセル操作に対する微妙なラグが減り、よりダイレクトで自然な反応。発進時からEV走行をしてくれる。静粛性も全体的に向上している。先日のアコード・ハイブリッドしかり、この新しいフィット・ハイブリッドしかり、ハイブリッドはこの先確実に「EV」プラスアルファ「エンジン」という構図になっていくのだろう。




 ハイブリッドは7段DCTのみでガソリンはCVTと一部5/6段マニュアルというトランスミッション構成。燃費を稼ぎたいハイブリッドにDCTを与えているくらいだから、おそらくDCTの方が有利なのだろうが、なぜかガソリンのオートマはCVT。このへんのチョイスもいまいち謎。効率が良くドライブした時のダイレクト感や楽しさなどの両立でいったらDCTの圧勝なのだが、ガソリンにDCTを降ろしてこないのはコストの問題か。




 試乗中の燃費は20.9Km/L。市街地走行のみ。



足廻り

 初代が比較的若々しい設定のクルマだったのに対し、先代はよりシニア層にも受容れられるべく乗り心地や振動の改善をおこなった。そして三代目もその線上にあるといっていい。ハンドルはダイレクト感云々より軽く回って振動も少なくじつにイージー。サスペンションも上下動少なくスムースで身のこなしは軽やかかつしなやかでこれまたイージー。




 快適でイージーなのはけっこうだが、これではトヨタ車と同じである。これこそホンダならでは、という持ち味を求めるなら、エンジンだけではなく走り味にもそれは必要だと思う。トランスミッションにせっかくDCTという新しい可能性を与えたのだから、もっとファントゥドライブであっていい。



結論

 一言で言って、正常進化の80点という出来。フィットはかつてのシビックであり、トヨタで言うならカローラの地位にあるから危ない橋を渡るわけにも行かない。その意味で、各部が少しずつ良くなっていて、マイナスになっているところが見当たらないという点では充分とも言える。しかし、ホンダの製品であるということを考えた場合、もうすこしビックリさせて欲しかったというのもまた偽らざる心境だ。




 さらに、カタログを読んで思ったことは、クルマの表面的な部分ばかりに焦点が当たっていて、例えばどうして燃費が良くなったのか、あるいはアトキンソンサイクルとはどういう技術でなぜそれを用いているのか、などの解説が全くといっていいほど無い。36.4Km/Lという数字の根拠は何なのか、その理由はどこにあるのか。自動車とは技術商品でもあるのだから、ユーザーは最新のテクノロジーを購入することをも意味する。もう少し技術解説をしないと、ますますユーザーは技術に注目しなくなっていくし、うわべだけのスペックや数値だけでクルマを判断していくようになる。クルマ離れを嘆く前に、メーカーが熱心に自動車という商品を多角的に宣伝しなければ始まらないのではないだろうか。







10項目採点評価

基本ポリシー >>> 8
スタイル/インテリア >>> 7
エンジン/トランスミッション >>> 9
NVH >>> 8
ドライバビリティ >>> 8
スペース >>> 8
気配り度 >>> 8
先見性 >>> 7
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 7



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試乗データ

試乗日:2013年9月30日
試乗車:フィット・ハイブリッド Lパッケージ(車両本体価格:1,830,000円)
型式:DAA-GP5
エンジン:LEB-H1
トランスミッション:7段オートマチック
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:3955×1695×1525mm
ホイールベース:2530mm
最小回転半径:4.9m
車両重量:1130kg
タイア:185/60R15 84H
JC08モード:33.6km/L
ボディタイプ:5ドアハッチバック
ボディ色:ブリリアント・スポーティブルー・メタリック
内装色:ブラック/プライムスムース+ソフトウイーブ
装着されていたオプション:
        Honda インターナビ+リンクアップフリー+ETC車載器(220,500円)
        あんしんパッケージ(60,000円)
          ・シティブレーキアクティブシステム
          ・前席用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム



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メーカーサイト


http://www.honda.co.jp/Fit/





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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐



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