この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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BMWがさらに一歩踏み込んだダウンサイジングエンジンをどのように仕上げてきたか、その3気筒エンジンがFRシャシに搭載されるとどのようなものになっているのか、とても気になっていたので確かめてきた。
■ エクステリア
※まず最初にお断りしておきます。試乗車は右前のホイールだけ異なっていました。のっぴきならないトラブルのため応急的にこのようなことになっていたそうです。本来は後輪に見えるホイールのデザインが正解。まあこういうこともあります(笑)
デザインは基本的に先代の印象を忠実に引き継いで踏襲したもの。コンパクトでちょっとキュート、軽快にも見える1シリーズのデザインは評判が良かったと見える。しかしこれでも全幅は1765mmある。全長ともバランスをとりつつ5ナンバー枠に収まるようにデザインしてもらえるとさらに嬉しいと思うのは私だけだろうか。
ホイールはオプションの18インチ。リアドアを開けると窓枠後端の出っ張りがちょっと気になる。
テールランプのデザインはL型とされてBMWのアイデンティティをここにも盛り込んだ。高級ブランドのクルマだが、こじんまりとしていて、あまりエバっていないところが1シリーズの人徳のようなもの。それでいてこだわりのFRレイアウト。貴重な存在です。
■ 運転環境
ハンドルはチルトとテレスコピック調整を手動で行う。グリップの太いハンドルはもはや定番。駐車ブレーキはコンヴェンショナルなレバー式。エリンギみたいなシフトレバーは慣れを要さずとも扱い易い操作ロジック。メーターは瞬読性の高いアナログを貫いているあたりはさすがの見識。ナビの位置も視線移動が少なく今のところベストと考えられる。ただ、私はナビ不使用主義なのでその使い勝手はほかの方のご意見を参考にしてください。パワーウインドウは当然のように全席ワンタッチ。
ペダルオフセットも気にならず、まずまず自然な感覚で操作できるアクセルとブレーキ。形状は昔から変わらない。それぞれの高低差も気にならないレベル。
このグレードではルーフやピラー内張りが黒系でまとめられていることもあるが、形状や角度も考えられていてガラスへの映り込みは最小。撫で肩気味のドアミラーはもう少し頑張って面積を稼ぎたいところ。ややデザイン重視。
■ インテリア・ラゲッジ
黒一色のこのタイプの内装がやはり人気のようだ。ダッシュボードのデザインは決してデザイン過剰になっておらず適度に機能性と親しみやすさをバランスしていると思う。
Mスポだということでその先入観とともに乗り込むと意外に拘束感の少ないシートに肩透かしを食らう。表皮にアルカンタラを用いていたりして「Mスポ」らしさは感じられるが、座り心地はけっこう「ふつう」。シートサイズはやや小ぶりでサポートもほどほど。豊かな気持ちにさせてくれたり、ガッシリ支えてくれるようなタイプのシートではない。後述するアシは決してカタくはないものの、上下動を受けるとクルマの動きと異なるリズムで身体が上下動する感じがする。クルマとの一体感がイマイチ。
・前席頭上空間/こぶし1つ半
後席からの眺めは前席のバックレストやヘッドレストが立ちはだかっていて、しかも室内高自体は十分ながら視覚的に広々感があまりなくて、やや窮屈な印象。膝前もあまり余裕がある方ではなく、明らかに優先順位が低いのが1シリーズの後席だと感じた。どちらかというとやはりパーソナルカーという位置づけなのだろう。
・後席頭上空間/こぶし1つ
・後席膝前空間/こぶし横にして1つ
旧型はもう少し横壁をうまく掘っていた記憶がある。ここも実用車として驚くような広さを持つわけではないラゲッジスペース。どうしてもノーズが長くなるレイアウトを採る以上、後席やこのラゲッジスペースは割りを食ってしまう。
■ エンジン・トランスミッション
1.5リッター3気筒、ターボエンジンを縦置きにして搭載。エンジンの前側はカバーで覆われているためわかりにくいが、かなりスカスカ。BMWらしいノーズの軽快さ、またクラッシャブルゾーンとしてもおおいに貢献するはず。
で、このダウンサイジングエンジン。3気筒特有のあのブルブルとした振動がまったく気にならず、スムーズで穏やか。ジェントルで上品とさえ言える仕上がりになっている。私は乗ってはいないがアクティブツアラーやミニに搭載された例ではこのあたりの処理はまだまだ行き届いていなかったと聞く。
発進時から十分以上に豊かで濃厚なトルクを発揮し、欲しい時に欲しいだけの加速が得られるだけでなく、こうした小排気量エンジン特有の軽々しい印象もかなり丁寧に消されていて、適度な重厚さまで備えている。1シリーズの車体やFRレイアウトとの相性がとても良いと感じられた。
それにはもちろん8段のトルコン式オートマチックの存在も大きく、常にシームレスにしてダイレクト、きわめて洗練されたマナーをもちこの小排気量エンジンを効率的に働かせている立役者でもある。
ただ、ブン回して楽しめるかというとそういうタイプではないし、そういうところはあまり狙っていないと見える。かつてのBMWは高回転で歌わせてナンボみたいなところもあったが、このエンジン、トランスミッションはそうではないところに魅力を据えているということのようだ。
一般道走行をメインに約10キロほど。積算燃費計をリセットして試乗に臨むと最後には9.8Km/Lとの結果になった。アイドリングストップも効果的に作動していたし、もう少し伸びるかなと思っていたが、燃費を気にせず普通に走ってこの数値だから、これはこれでまずまずの値といえるのではないだろうか。
■ 足廻り
電動パワーステアリングのおかげでハンドルは常に軽く、走行中はハンドルに優しく手を添えてリラックスしていられる。だからといってハンドルから伝わる路面のインフォメーションが減少しているかというとそういうわけではなく、そこはそれ、BMWらしさは保っている。
しかしオプションの18インチのタイアとホイール、しかも前後でサイズの異なる太いタイアを擁するわりにゴツゴツ感はかなり影を潜めていて、おおむねフラットでなめらかな乗り心地を示していたあたりも、「Mスポ」の先入観を裏切られるポイントの一つだった。昔は本気モードの「走り」のグレードだった「Mスポ」だが、今やほんの少し車高が下がり、径の大きなホイールを履く「見た目」重視の仕様となっているようだ。見た目重視で選ぶ客が多いのだろうし、またそうした客からのニーズとして、乗り心地を犠牲にしたくない、という声も無視できなかったのだろう。
おかげでとてもバランスの良いクルマになっていた。エンジン、トランスミッションとこの車体とのマッチング、また足廻りの設定も程よくBMWに求められるレベルを満たしていて、じつにソツなく、それでいてBMWに乗っていることを意識させてもくれるという、いい按配に仕上がっているなと感じられた。
■ 結論
今回の試乗の注目のポイントはなんといっても1.5リッター、3気筒のターボエンジンの仕上がりとマッチング。その観点から言えばとても仕上がりのいいクルマだったと言えると思う。世の中には同じ3気筒で排気量を減らしたエンジンを搭載したクルマは何種類も出揃っているが、エンジンそのものの仕上がりと車体との相性、クルマ全体の持ち味に至るまでの完成度で言えばこの118iは他を寄せ付けないものがある。
走り始めてそう時間が経たないうちに「さすがはBMW」と思わされた。エンジンの出力特性から音、振動、またトランスミッションや足廻りとのバランスなど、いわゆる「調律」というものに一切妥協がない。敢えてBMWを選ぶ、これに乗る理由の存在する、現代のダウンサイジングカーの中にあっては、なかなか稀有な魅力を持ったクルマではないだろうか。
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■ 10項目採点評価
ポリシー >>> 9
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 10
音・振動の処理 >>> 9
走りの調律度 >>> 9
運転環境と室内空間 >>> 8
ヒトへの優しさ度 >>> 8
卓見度 >>> 9
完成度 >>> 9
バリューフォーマネー >>> 8
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■ 試乗データ
試乗日:2016年6月24日
試乗車:BMW 118i M Sport
車輌本体価格:3,640,000円(オプション含まず)
型式:DBA-1R15
エンジン:1498cc直列3気筒DOHCターボ[B38B15A]
トランスミッション:トルコン式8段オートマチック
駆動方式:FR
全長×全幅×全高:4340×1765×1430mm
ホイールベース:2690mm
車輌重量:1430kg
最小回転半径:5.1m
タイア:前225/40R18、後245/35R18、ともにRFT [ピレリP-ZERO]
JC08モード燃費:18.1Km/L
燃料タンク容量:52L(無鉛プレミアムガソリン)
ボディタイプ:5ドア/5人乗りハッチバック
ボディ色:ブラック・サファイア<475>
内装色/素材:ブラック/ヘキサゴンクロス・アルカンタラ
装着されていたオプション:
ブラック・サファイア・メタリック(77,000円)
パーキングサポートパッケージ(103,000円)
18インチMライト・アロイ・ホイール
・ダブルスポーク・スタイリング461M(91,000円)
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■ メーカーサイト
http://www.bmw.co.jp/ja/all-models/1-series/5-door/2015/at-a-glance.html
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ご留意ください
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要は全くないし、
私はここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」を見つけるのはあなた自身の仕事です。
製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をして、よくお確かめください。
2016.6.24
前田恵祐