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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#183 やっと出てきた

 
 日産 ノート e-POWER X 試乗インプレッション (2016.11)



この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 個人的にこのタイプのハイブリッド車の登場を待っていた。どう考えたってエンジンは発電に徹したほうが効率が上がる。純粋なEVができるなら、それに小さな発電専用エンジンを積んで、いわゆるレンジエクステンドとすれば、当面、充電スポットを探すよりずっと心配は少ないだろうし、より多くの人にとって現実的な選択になる、ずっとそう考えていた。でも国産ではなかなか実現しなかった。やっと出てきた。



 エクステリア



 現行ノートは、現代のコンピュータデザインにしては「やりすぎていない」、という日産デザイン部OB某筋からの評価あり。たしかにゴテゴテしていなくて、顔つきもやたら攻撃的でもなく、全体的に、今のクルマにしては穏やかな雰囲気かもしれない。




 スペース効率や、もっとわかりやすく言うと、人気を獲得しやすいとか、そういう面で、デザインが平準化していくのはいつものこと。そのなかで小物をイジって差をつけようとか、顔つきを、とか、あれこれ考えすぎていないところがいい。ま、無難な印象。




 しかしそろそろ人々をあっと言わせるようなデザイン革命があってもいい頃なんじゃないだろうか。スケッチを手書きに戻すことをお勧めしておきます。



 運転環境



 ハンドルの下端カットが目新しい運転席。個人的に慣れの問題だと思うので特に操作性の面で申し上げるべきことはない。ハンドルは手動チルト。シフトレバーは「電制」式でリーフとも共通する操作性。駐車ブレーキは画像に写っていないがコンソール設置のハンドレバー式。パワーウインドウは運転席のみワンタッチ。エアコンの操作パネルは慣れを要するが慣れればこれで良し。タッチパネルの押した手応えがないのよりずっとマシ。メーターもごちゃごちゃしていなくて、これも無難だがよろしい。今回の試乗で初めて気になったのは、送風がややスポット的で拡散がちょっと弱いかなと感じたこと。




 依然としてチョット残念なラチェット式運転席シートリフター。座面の高さしか変わらない。シート全体が持ち上がったり下がったりしてくれた方が、調整により腰の位置がズレたりすることもなく、より親切なはず。チラッと見える空気穴はモーター駆動用バッテリーのためのもの。前席下に設置されている。




 ペダル類の操作感も違和感なし。スペース的にも余裕はあるのだから、きちんとしたフットレストを用意してもいいのに。踏ん張りが効くのと効かないのとではだいぶ違う。




 この種のものとしては、Aピラーやダッシュボードのガラスへの映り込みはフツウにあるクルマ。常識的。驚くほど配慮があるとは思わない。ドアミラーは過度になで肩でなく、自車のボディだけでなく見たい領域をちゃんと写せるようになっている。




 ミラーは今流行りの「カメラで撮影したものを表示する」タイプだが、切り替えレバーで、普通のミラーにもなる。画像は普通のミラー状態。個人的にはこちらのほうが違和感がない。カメラ映像はやや画像が荒いと感じた。




 斜め後方目視視界。ゴツイ骨格の中で、適度にくりぬいてあるし、内装材やピラーも邪魔しすぎず、最近のクルマとしてはよく見える方ではないだろうか。運転環境、総じて特にカンゲキはしないが、まずまずのところ。



 インテリア・ラゲッジ



 インテリア調度も特別センスがいいとか、人を驚かすようなところもなく、適度に落ち着いていて無難なチョイス。ま、いっか、と思わされる反面、過度に質感が低いというわけでもなく安っぽいとも思わされることはない。とはいえカラーバリエーションは何種類かあるほうが楽しいと思います。"メダリスト"には合皮を使った色物があるけれど、もう少しポップで若々しいほうがこのクルマには合うような気がする。それにしても今時"メダリスト"というネーミングはなあ・・・と。




 運転席の座り心地は特にカンゲキはしなかったが、かといって頼りないわけでもなく、おそらく多くの人にとって不満の出にくいつくりになっているのだと思う。ややサイズは小さい気がする。見た目は若々しくとも、もう少しゆったりした着座感があってもバチはあたるまい。

前席頭上空間:こぶし1つ半




 後席からの見晴らしや広さもこの種のものとしては常識的。座面の後傾角はもう少し明確にあったほうが腰が落ち着くと思う。ヘッドレストは筆者の座高で後頭部に合わせるとスッポリ抜けるギリギリのところ。ま、そこにも至らない他社製品もある中で、マシな方とはいえる。

後席頭上空間:こぶし2つ
後席膝前空間:こぶし2つ以上




 ラゲッジスペースはご覧のとおり。後席は背もたれが倒れるだけ。それでも充分でしょう。間口が広いのもいい。




 そしてその床下に工具類と並んでエンジン用のバッテリーが収まる。



 エンジン・トランスミッション



 こうして見ると、じつにハイブリッドっぽいレイアウト。個人的にはエンジンはもっと小型化されていていいと思う。なぜ1.2リッターが必要だったのか。せっかく軽自動車用660ccがあるのになぜそれを用いなかったのかなど、疑問が残る。排気量と発電量はイコールではないのではないか。効率よく高回転を可能とする発電機のほうが、よりいいのではないか。ロータリー式発電機とか・・・


 試乗した日は寒く、暖房が温まるまではエンジンは回りっぱなし。しかし、タイアを回すための動力は100%モーターだから、その加速感、走りのなめらかさはEVそのもの。トヨタのハイブリッドのように、微妙にウニウニ、ギクギクしない。そしてとてもパワフル。磁石に吸い寄せられるかのような力強さはまさにリーフ譲りだ。


 しばらくすると、エンジンは鳴り止み、静けさを取り戻す。そうなると電力が足りなくなったときしかエンジンは回らない。さらにEV感は増す。でもチョーシに乗って強い加速を繰り返していると、加速力とは比例しないエンジン音が、ブイーン、ブイーンと聞こえてくる。これがいかにも、いつものノートのエンジンぽい音なので、ちょっと興ざめだったりもする。




 試乗後の平均燃費表示は最終的に23Km/L台だったが、途中27Km/L台に届くこともあった。ドライブモードも選択することができ、おおむねノーマルモードで走行したが、これがSモードやECOモードになると、特にアクセルOFF時の回生ブレーキが強力になり、フットブレーキを踏まなくてもほぼ停止まで過不足なく減速できてしまったりもする。渋滞時には役に立ちそう。



 足廻り



 現行ノート、思えばすでにデビューから4年が経過している・・・と感じさせるのは足廻り。今回のマイナーチェンジでは大きく手入れがなされた様子はない。今改めて乗ってみると、ライバルはもう少しうまくフラットライドを実現しているし、振動の処理ももう一歩かなと思わされるシーンは少なくなかった。ま、そんなに期待の大きいクルマではないからこれでいい、ということはできるのかもしれないが。



 結論

 ノートというクルマ、ホントに困る。印象が希薄すぎて、無難、とか、これでいい、とか、そういう感想しか思い浮かばないのだ。文屋にとってはこういうクルマ、商品の特徴を拾い上げる作業というのは難儀である。その意味ではこの日産車、少々ならずトヨタ車的だ。


 さて、そうして相変わらずの無難ぶりを披露したマイナーチェンジ版二代目ノート。その大きな目玉としてe-POWERを持ってきたという面もあるだろう。このタイプのパワーユニットとしてアイデアはそんなに目新しいとは感じないし、ハイブリッドとして誰もがまず考えつく仕組みではないかと思う。ずっとシンプルで構成がわかりやすい。だからこそ、なんでもっと早く出てこなかったのだろう、と個人的には不満というか、疑問もある。




 あらゆる面でソツがなく、このe-POWERにしても、商品力としてライバルとなるアクアやフィットHVにようやく対抗できるものが用意できた、といったところ。カタログを見ると「常識を変える」とか「超える」といったフレーズも目につくが、実際に乗ってみると、まあ常識的なクルマである。日産としては主力コンパクトとして、ヘンなものは作れないという事情はあるにせよ、もう少しこの「特徴のなさ」はナントカしないと人心はクルマからどんどん離れていってしまうような気がする。


 せっかく何百万円も支払って購入する商品なのだから、もっとユニークさだとか、個性的な要素、あるいは心くすぐる特徴が織り込まれていてもバチは当たらない、そんな気がするのですが、いかがでしょう。





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 10項目採点評価

ポリシー >>> 7
デザイン >>> 7
エンジン・トランスミッション >>> 8
音・振動の処理 >>> 7
走りの調律 >>> 7
運転環境と室内空間 >>> 7
ヒトへの優しさ >>> 7
先進性 >>> 8
完成度 >>> 8
バリューフォーマネー >>> 8





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 試乗データ

試乗日:2016年11月21日
試乗車:日産・ノート e-POWER X
車輌本体価格:1,959,120円(OP別)
型式:DAA-HE12
発電用エンジン:HR12DE [DOHC水冷直列3気筒・ミラーサイクル]
駆動用モーター:EM57 [交流同期電動機]
トランスミッション:-
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4100×1695×1520mm
ホイールベース:2600mm
車両重量:1210kg
最小回転半径:4.9m
タイア:前後185/70R14 88S (BSエコピアEP150)
JC08モード燃費:34.0Km/L
燃料タンク容量:41L(無鉛レギュラーガソリン)
ボディタイプ:前後4枚のヒンジドアとテールゲートをもつハッチバック
ボディ色:プレミアムコロナオレンジ(PM)<#EBB>(特別塗装色)
内装色/シート素材:ブラック<G>/トリコット
装着されていたオプション:
   特別塗装色(48,600円)
   日産オリジナルナビ取り付けパッケージ(27,000円)
   LEDヘッドランプ(75,600円)
    ・ロービーム
    ・レベライザー付
    ・プロジェクタータイプ
    ・LEDポジションランプ付
   インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物、検知機能付)(97,200円)
    +スマート・ルームミラー
     (インテリジェントアラウンドビューモニター表示機能付)
    +踏み間違い衝突防止アシスト
    +フロント&バックソナー
    +ヒーター付ドアミラー
   日産オリジナルナビゲーションMM516D-W(257,667円)
   e-スタイリングパッケージ(152,000円)
    ・フロントアンダープロテクター
    ・サイドシルプロテクター
    ・リアアンダープロテクター
    ・ルーフスポイラー





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 メーカーサイト

http://www.nissan.co.jp/NOTE/





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ご留意ください。
この試乗記はあなたの試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
あなたと私の感想が一致している必要はありません。
私がここに示しているのは「見解」であり「正解」ではありません。
「正解」はあなた自身が見つけるものです。
また、製品は予告なく改良される場合があります。
時間の経過とともに文中にある仕様や評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前には必ずご自分で試乗をして、よくお確かめの上ご契約ください。





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2016.11.24
前田恵祐

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