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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#006 純和風4ドアサルーン

日産ティアナ 試乗インプレッション(2008.6試乗、2009.6再上梓)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 ライバルはサイズ的にトヨタ・カムリやホンダ・アコードになるが、国内における商品展開はずっと積極的でバリエーションも豊富。エンジンはV6だ。キャラクター作りもはっきりとしている。そのむかしティアナはセフィーロでありさらに辿ればマキシマであった。歴史がそんなに短いわけではないFF、Lクラス・サルーン。



 概観

 ライバルがどちらかというと北米向けの仕立てであることに対し、ティアナはオリエンタルであり、日本や中国をはじめとしたアジア向けである。現行型はより日本的な「和」のテイストを盛り込んでおり、それは色使いや内外装の仕立てによく現れている。一言で言うなら和服が似合うクルマだ。




 サイズは全長4850mm、全幅1800mmに届く。「和」で行くならサイズもそれに合わせてほしいものだ。骨格が北米向けマキシマと共通であるためそこまできめ細かな対応が出来ないのである。せめてあと5cmずつ詰めることが出来たら、と思う。



インテリア

 初代(先代)ティアナのインテリアはとても写真栄えのするもので、カタログや雑誌で見るととてもカッコいいが、実は現物を目の当たりにするとけっこう落胆する。安っぽいのだ。それと比べれば車格相応に質感は高まっている現行型だ。




 デザインはやや平凡になっているがそれは機能性との両立も得ることが出来ていて、さらには目が疲れないように配慮されたフォルムで構成されていることもわかる。




 素晴らしいのはシートのすわり心地で、これもフォルムそのものは平凡になったが、フワリとした柔らかな第一印象の後に体重をかけるとしっかりと受け止めてくれる芯の強さ、同時に不快な振動や突き上げをやわらげてくれるクッション機能の秀逸さなど、本当に素晴らしい。疲労が少ないだろうし、またこの柔らかなすわり心地が心を穏やかにさせてくれる。穏やかな気持ちで余裕ある運転ができる。実はこれも安全性の一端を担っている。




 スペースは充分以上。上下左右、どの座席においても日本人にとっては充分すぎる余裕。後席の足元も広くくつろげる。最近の車にしては窓ガラスの下端が低めのため閉塞感もすくなく見通しも悪くない。



エンジン・トランスミッション

 VQエンジンも長くなるが、その間にターボ付ハイパワーバージョンからダイレクトインジェクターまで多様なバリエーションを持ち、それぞれに高い完成度を誇っていたことは、当初の設計が誤りでなかったことの証だ。今回の試乗車はVQ25DE。今乗って見るともう少しトルクがほしい気がするが充分静かで振動も少なくなめらか。指定燃料はレギュラーガソリン。


 トランスミッションは今回からエクストロニックCVT一本。小型車では充分にマッチングすることを確認していたが、このサイズ、重さ、馬力においてはやや難があるか。微小スロットルにおけるギクシャク感や、これはエンジンのトルク特性もあるが加速時の回転の高まり方がちょっと急であること。変速ショックがない、燃費にやや有利というメリットよりこれらドライブフィールにおけるデメリットのほうが今回は目立った。



足回り

 長くたっぷりとしたストロークを使ってゆったりと穏やかに走る。それでいて微小突起への対応も細やかで基本的にフラットな乗り心地。クルマのキャラクターに合っている。ロールも敢えて遠心力に抗わない、適度に傾く設定。ハンドルは特別シャープでもないが飛ばす車ではないのでこれでいい。上品に、優雅に立ち振る舞う。


 ブレーキがいいのはキューブの項にも記した昨今の日産車に共通するの美点。それには試乗車に標準装備されていた17インチ55タイアの貢献も小さくないかもしれないが、これだとロードノイズ処理がやや手薄になることとの引き換えになる。




 これはXVグレードの17インチ+55タイア。ベストは16インチ+65タイアを履くグレードか。



まとめ

 ライバルに対して、上品で日本的であるという明確な立ち位置を持っているティアナ。このクラスのセダンとしては成功しているほうだろう。上品で日本的なのはスタイルやインテリアデザインだけでなく、例えばシートのすわり心地や足回りの設定、立ち振る舞いや所作など、感覚的な部分においてもそう設えてある。それも今の日産のデザイン力や技術力によってしっかりと作られている。


 クラウンなど、代表的な高級車が皆西洋風になって行く中で、和風、日本的であることが個性、というのも変な話ではある。しかしこのクルマを見ていると、フローリングのワンルームより畳に床の間のほうがやっぱり落ち着くよね、という気分になる。


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。







前田恵祐


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