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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#019 多分に実験的色合い

トヨタ・iQ 試乗インプレッション(2008試乗、2009再上梓)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 無難なクルマ作りで定評のあるトヨタにして、これは多分に実験的なクルマ。いつも80点のクルマ作りではマンネリになってしまうし、なかなか「殻」を破ることも出来ず、結果後退してしまう。だからトヨタは新しい考え方を常に模索するし率先して提唱もする。



 概観

 基本構成は2代目ヴィッツやパッソのものをベースにしているようで、そのことはこのクルマの、短い全長にしては広めの車幅にあらわれているし、前から見たシルエットがどことなくパッソに見えなくもないことなどでも窺い知れる。




 サイズ:2985mm x 1680mm x 1480mm(全長・全幅・全高)/ホイールベース:2000mm


 現在の軽自動車規格を下回る短い全長ともうすこしで5ナンバー枠に達する全幅。本来なら幅をもう少し詰めたかっただろうが、それもベース車に準じたものとなっている。ホイールベースを縮めることより全幅を詰める作業のほうが圧倒的に難易度が上がる。


 「短さ」に圧倒され、そして暫くしてそれが通り過ぎてしまうと、個人的にはあまり印象に残らないデザインだ。小さいのに緊張感や緊密感、凝縮感がやや手薄なのと、小さいのにそんなにキュートではないことなどがその要因だろうか。愛されキャラを狙っているわけではなさそうだ。



インテリア



 インテリアセンスはトヨタにしては野暮でなく、簡素ながら機能を重視し質感も上げている。このクルマは薄利多売が目的ではなく、新世代車の実験だから、売れなかったときのことを考えた値付けであり、それはトヨタが売るこのサイズにしてはやや高めだ。故にか革張りがあったりしてプレミアムであることも旨としている。




 後席は、運転席の真後ろは駄目だが、助手席を例によって前側にスライドしてさえおけばなかなか快適。ピラーに囲まれ視界は優れないが、座ってしまうとまったく不都合は無く、むしろ収まりが良いと感じる。狭いが身体をうまく受け止めるようにスペースを抉ってあり、ストレスを感じないのだ。これなら東京→御殿場(100キロ)はいけそうな気がする。都市生活者にとってミニマムだがそれで充分という内容。



エンジン/トランスミッション



 1リッター3気筒はダイハツ製。長年の3気筒エンジン開発のノウハウからか特有の振動はほぼ気にならないくらいに抑制されており、普通に乗る限り意識させない。むしろ1気筒あたりの爆発面積の大きさが生きて低速から十分以上のトルクを発生し、CVTも低回転を維持し続ける。



足回り

 この短さだから凸凹を越えるとややピッチング(前後の足が交互に伸び縮みを繰り返す動き)するがそれもご愛嬌。むしろよく封じ込めているほうだと思う。ハンドルはしっかりとした手ごたえでクイックに反応するセッティング。だから街中をちょこまか走るのに打ってつけである。


 気になっていて試せていないのは、短いのに背が高いから高速の横風に対してどう反応するかということ。ちょこまかできるということは、理論上、高速でまっすぐ行くことが不得手になるからだ。



まとめ

 既存の材料でうまく仕立ててきた次世代の香りのする、先を見越した小型車である。おそらくこのクルマに対するユーザーの反応を見て、トヨタはさらに改良したり考え方を進化させたりしてより普及するためのもの(別のモデル)を出してくると想像できる。しかし、そうした「お試し版」的な性質でありながら、このクルマがなお充分な完成度を得ていることは高く評価されるべき事実である。



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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