スバル・レガシィ・ツーリングワゴン 2.5i L Package 試乗インプレッション(2009.9)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください
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1989年の誕生から5代目になる最新型。いつ見てもレガシィ、いつ乗ってもレガシィといえるだけの個性があり、メカニズムや運転にこだわりのあるクルマ好きのみならず幅広く一定の支持を得てきた。5代目のハイライトはサイズアップとそれに伴う車格のアップ。今度はどんなふうにまとめてきたのかを楽しみに試乗した。
■ 概観
おおむね一回りのサイズアップ。キャビンを取り巻くようにウインドウ周辺をブラックアウトしサッシュレスドアを採用してきた歴代のアイデンティティを捨てた。太くしっかりとしたCピラー。よく観察すると車両横方向の断面形状は上下の絞りを緩めてあり、正方形により近い形状。これの目的は言うまでもなく室内空間の確保に他ならない。今まではスペースよりアイデンティティ優先だったが、今回は実用上の正論に近づけた。
■ サイズ
4代目
全長:4680mm/全幅:1730mm/全高:1470mm
ホイールベース 2670mm
5代目
全長:4775mm/全幅:1780mm/全高:1535mm
ホイールベース 2750mm
寸法取りで新しいチャレンジをしているが、デザイン的には保守的で今までのレガシィの範囲を出ていない。アウディの真似をしろとは言わないが、しかしアウディのようにクールなルックスだったらなぁ、と思うことしきり。ツリ目のフロントデザインにはそろそろ飽きた。
■ インテリア
概観でも触れたがサイズアップと、より効率的にスペースを稼ぎ出すような間取りをしたおかげで余裕たっぷり。上述のとおり上下の絞りが緩くなり、頭の周り、足元の横方向などの広々感でその効果を感じる。デザインは、これまた保守的だが常識的でもあり、いたずらにデザインに凝っておらずむしろ安心して運転したり操作したりができるだろう。筆者の体型と姿勢では運転席からボンネットを視認できた。
操作性で新しいのは駐車ブレーキが電気式になったことで、ジャガーなどのように駐車ブレーキはスイッチによる操作。これには解除忘れ防止機能もあって、そのまま発進しようとすると感知して自動解除してくれる。ただ、操作スイッチの位置がハンドルの右側下にあり、通常左手で操作することの多い日本のユーザーにとってはやや違和感があるか。
シートのサイズは充分ですわり心地に大きな特徴はないが確かに気になる部分もない。これは日々飽きることなく付き合い続けるのに大事なこと。後席はエクシーガがそうであるように着座位置を一段高めてある。おかげで見晴らしがよく後席にいながらドライブへの参加度が高い。これも縦方向のスペースに余裕があるからできた芸当だ。
クセのないすわり心地。
後席も広々。効果的にスペースを稼いでいる。
後席のアイポイントは一段高く、見晴らしが良い。エクシーガ同様。
ドアアームレストはソフトパッド。丁寧なステッチ仕上げのレザー(ビニールでしょう)張り。
ドア内装とダッシュボードのシボの質感が異なる。細かいことですが。ダッシュボードはトヨタ車のそれに近い。提携の影響?質感そのものはそんなに低いとは感じなかった。
ラゲッジルームは広さと同時に使いやすさも重視。
■ エンジン/トランスミッション
この項目の焦点は新しいCVT「リニアトロニック」。耐久性に考慮してチェーンを用いていることが新しい。しっかり感があり、無駄に回転を上げたりしない。それでいて充分に静かで滑らか。
2.5NAフラット4エンジン。
元来高回転型のスバル水平対抗エンジンだが、2.5リッターまで拡大されるとさすがに余裕があって、CVTがつとめて低回転を維持しようとしてもストレスなく粛々と行く。振動が少ない。といって、少し深めにアクセルを踏み込んで中高速域を試しても伸びやかに追随して気持ちが良い。刺激性は低いが実用的なエンジンとしてよいバランスだと感じた。
一言、マニュアルで乗ってみたい。注文生産で対応してくれてもいいのに。そんな出来。もう一言加えるなら、このエンジンとミッションをエクシーガにも・・・
お得意のSI-ドライブ。以前より各モードの違いがはっきり感じられた。
■ 足回り
決して硬くはないのにピタリとフラットで余計な動きをしないことにも気がつくはずだ。いい仕事をしている。路面状況にかかわらず無用な振動はカットされており静粛。充分に高級車の乗り心地。足腰の剛性がかなり引き上げられているのか華奢な印象がなく足取りがしっかりとしている。このあたりの雰囲気は欧州のライバルにも引けを取らない。
ハンドルは素直だが、好みの範囲としてやや復元力が強すぎるように思う。今まではこのキャスターアクションはあまり出さなかったレガシィと記憶しているが、この点がちょっと意外。身のこなしはお世辞にも軽快とはいえないが、むしろしなやかだったりなめらかだったり、時としてAWDならではのしたたかさアリと、風味や彩りも豊か。楽しみ味わうべき領域も上級移行している。
■ まとめ
サイズアップし、上級移行したが中身も伴っていると感じた。このクラスは決して安くはないし、かといって中庸なクルマ作りでは埋もれてしまう。熟成された水平対抗エンジンのすっきりとした回し味や注意深く仕上げられた足回り、クセがないのにしたたかでもあるAWDの駆動力、また常識的だが同時に効率的で飽きの来ないインテリアなど、このクルマならではという要素がふんだんにある。
目立つ要素より一つ一つの仕上げを丁寧に積み重ねた結果、満足の行く完成度を得ているという印象もまたレガシィらしい。ニューレガシィは、レガシィ以外の何者でもなかった。
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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。
前田恵祐
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