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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#025 ニューエイジレクサス

レクサス HS250h 試乗インプレッション(2009.9)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 レクサスに登場した初のハイブリッド専用車。しかしそれは実際のところプリウスなどの既存車とメカニズムを共用する合理的な仕立て。焦点はプリウスとの乗り味や使い心地の違い、高級乗用車としての資質。



 概観

 一言に保守的。ハイブリッドという次世代車のイメージに対してフォルムは今までどおりのスリーボックスサルーン。




 高く丸いボンネットフードはやはり歩行者保護?


 個人的にはもっと先鋭的なものであってもいいと思ったが、そうはしなかったのは、このクルマを欲する層の好みに合わせた結果だろう。価格やサイズ、高級感からいってこのクルマを検討する人はマークXやクラウンを持ちながら、プリウスは欲しいがやや若すぎると思っている、いわばハイブリッド予備軍だ。程好くノーブル。程好く繊細。我を主張しない謙虚さも日本人の美徳。




 初代プリウスのフォルムにも似ている。


 いくら着座位置が高くされているとはいえスカットル(前ガラス下端位置)が高く、ボンネットを視認できない。試乗車にはコーナーポールが立てられていた。



インテリア

 昨今の乗用車は車体断面が正方形に近く、それは間違いなく頭上や足元空間に寄与するが、反面高級車に相応しい個人的な雰囲気を与えることには苦慮する。このクルマも同じことに直面しているようだ。




 マルチビジョンのコントローラーの使い勝手そのものはなかなか。エコモニターもマルチビジョンを利用したこの方式のほうが見やすい。


 ダッシュボードとコンソールになだらかな傾斜を与え、少しでも優美な雰囲気を、と努力している。しかしそれもよくよく機能性と相談をした上にすべきで、つまりこのクルマでは操作パネルが水平に近すぎるゆえ直射日光を受け白く光ってしまうのと、視線に対し垂直に近ければ近いほど見やすいし操作もしやすいという原則にも反している。気持ちはわかるが、ここは機能をより優先したほうが潔い。




 試乗車は黒ファブリック内装。


 シートはプリウスよりずっとしっかりとしていて、プリウスのように真ん中が過度に沈み込むようなところがない。シート全体で身体を受け止める。できればテキスタイル(布)のほうが滑らないし表皮の柔軟性から微妙なサポート性でやや優れる。革は美しい仕上がりだがレクサスの革はいつもちょっと滑る。だがレクサスらしく本革内装のカラーリングバリエーションは豊富で選ぶ楽しさがあり、木目のカラーも併せて選ぶことが出来る。コンソールにチクチクと這うステッチが物言いたげ。




 足元にルーバーがあってそれが気になるがおおむね不満はないリアシート。


 ステアリングホイールにも木目をあしらったものがあるが、個人的には握る位置によって触感が変わることにやや抵抗がある。見た目の美しさはよくよく理解するのだが。電動ムーンルーフ(ソーラーパネルはない)付きでも頭上空間は余裕たっぷり。後席もクッションが厚くバックレストの形状、角度も適切。後席からの前方視界も良い。




 ショールームのあった茶革とアイボリーのコンビ。いつもながら木目の仕上げが美しい。ドアの閉まり具合も「バシッ」と他のレクサス同様、高級車然としている。




 ゴルフバッグ4つOKだそうな。このクルマのターゲット層には重要なコト。



エンジン/トランスミッション

 モーターと組み合わされるエンジンは2.4リッター直列4気筒。1.6tオーバーの車重にも必要充分の動力性能を持っている。他のレクサスのハイブリッドがパワー重視であることに対し、やはりこのクルマは燃費重視。




 久々に見るエキマニの見える車。フルカバーになっていない。


 プリウスとの違いはエンジン音が静かなこと、アクセルレスポンスがやや自然なこと。ゆとりがあること。滑らかに、しっとりと走り、粛々と行く。元来高級、おおいに高級。現代的。




 試乗前にリセットした燃費計、試乗終了時はご覧の値。高速と渋滞含む市街地が半分ずつという内訳。日常的にこの数値が出れば妥当なところだと思う。燃料はレギュラーガソリン。独特のシフトレバーも含めて走行系の使い勝手はプリウスと共通する。



足回り

 しなやかさが前面に出た足さばき。プリウスと同じプラットフォームだがリアサスはダブルウイッシュボーンにアップデート。ややリアの落ち着きが増していることでそれとわかる。残念なのは振動の処理能力の限界がやや低めなことで、少し荒れた路面を通過するだけでフロアがゴロゴロと共振する。上級の18インチ仕様だとさらに悪化しそう。試乗車は標準車で17インチのタイア・ホイール。





まとめ

 プリウスで「こうだったらいいのに」と思えた箇所がことごとく改善されていたり、プリウスよりやや保守的なデザインを採りレクサスならではの質感を備えたりする。それら全体を支配するのは「妥当」という印象。さらに一歩押し進めた攻めのクルマ作りというより、手堅くつくってきたなと思う。トヨタのお家芸。






 しかしよくよく調査をして、トヨタ・レクサスとして売りやすいクルマを作った、ということなのだろう。クラウンやマークXを持つ人は保守的でありながら世の中の動向には目敏い。だから潜在的にハイブリッド・エコカー志向があるというのは想像に難くない。そう考えると機運も高まった今、登場のタイミングは絶妙だし、仕上がりもレクサスの名に恥じないだけのものはあり、クラウンとバッティングする価格も相応。お見事という他ない。



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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