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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#032 強心臓をどう生かす?

マツダスピード・アクセラ 試乗インプレッション(2009.10)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 高い評価を受ける海外では”mazda3”と呼ばれ、そのmazda3はかつて”mazda323”と呼んだ。mazda323はファミリアの輸出名。アクセラはかつての傑作小型車をルーツに持つヨーロッパ的な仕立てのスポーツ(諸元表では”ステーションワゴン”)とセダン。今回試乗したのは迷いに迷って話題のi-STOPではなく”MS”。



 概観

 旧型を下敷きにしている基本的にはキープコンセプトながら、顔の印象がガラッと変わってまるで違う車に見える。口が大きく開き切れ長の瞳。とりあえず今流行の形に整っているが好みは分かれるところ。大振りに見えるが、街中で出会うと意外とファニー。




 全長4510mm×全幅1770mm×全高1465mm・・・決して小さくはない。




 ハイパフォーマンスを外に向かって誇示しすぎないところがいい。ベロシティレッドマイカに塗られた試乗車は一見派手だが違いは細部。もっとも顔のデザインからしてかなり奇抜ではあるから、そこから”MS用”にイメージを変えるのもまた難しいかも。




 灯火部品をキラキラにして目を引くなど、デザインの手法は少々”わかりやすさ”が先行している。また、個人的にテールレンズがクリアというのは保安上の観点からいかがなものかと思う。
スリットが”MS”専用。



インテリア

 視界が開けており、また前席においてはダッシュボードの奥行きも広く、しかもそこを空き地とせずドライブモニタなどを配置し有効活用もしている。居住スペースは実質的広さより視覚的な広さが効いている。しかしこれだけ外寸があればそれも当然。喜びも半分。後席の画像は撮れなかったがこれも充分ではあるがこの大きさのクルマなら妥当というスペース。




 マツダスピード・アクセラの内装は黒をベースに赤のメッシュが入った専用のもの。シートサイドはレザー仕上げ。スポーティで悪くないが、ちょっと常識的にすぎるか。個人的にはフルレザーなど、もっと贅沢な仕様があってもいいと思う。




 カラーも黒系だけでは寂しい。ゴルフにもGTIとGTXがあった。ハイパワー、ハイパフォーマンスはもちろんそれによって機敏に走ることも目的にあるが、ノーマル車に対する馬力の貯金のようなものと捉えることも出来、ラグジュアリーカーのいち要素となりうる。速いからといっていつもスポーツウェアを着込んでいる必要はない。




 スピードメーターは280km/hスケール。色合いは・・・シゲキテキ。過剰演出。




 ラゲッジスペースはスクエア。サイドはもう少し掘ってもいいかな。



エンジン/トランスミッション

 2.3リッター直噴ターボの264馬力と38.7kgのトルクを6段マニュアルで前2輪駆動。車重は1450kgあるが相当なじゃじゃ馬と想像したものの、実際はずっと”わきまえた”エンジン。




 正確にいうとやはりターボカーなのであって、一定のアクセリングではある瞬間から加速度的に馬力が盛り上がり炸裂していく。しかしその性質を飲み込んでしまえば、実際には低回転域でも応答がよくスムーズに静かに走ることが出来るし、力を発揮する領域めがけてアクセルを踏み込めば”お望みどおり”に息長く一直線。ターボゾーンはかなり強烈。この2面性がいい。といってその切り替わりもいわゆるドッカン系ではなくスムーズ。乗りやすい。




 6枚もギアが要るだろうかと思えるくらいエンジンはフレキシブル。ギアレバーはいたずらにショート化されておらず、リズムを取りやすいばかりかレバーやリンケージの剛性、節度感も充分でこのクルマにふさわしい軽快な操作フィーリング。最近のツインクラッチもいいが、やはりマニュアルもいい。




 試乗車の累積燃費は6.7km/Lを表示していた。アイドリングや低速走行が多い試乗車の走行パターンは、街乗りの多いユーザーの走行パターンに近い。



足回り

 18インチホイールを持つ足回り。しかし予想以上に硬さは感じさせずフラットな印象で、足回りからの振動や騒音も低く、同乗者にとってはこのクルマがハイパフォーマンスカーだとは気づきにくいと思う。よく仕上がっている。財務大臣を説得して買おうとしている場合に多少なりとも好要素になるだろう。




 パワーステアリングはただの電動かと思いきや、油圧ポンプを電動で駆動するタイプ。道理でしっとりとした感覚があり、また反力も適度。転舵初期の応答性がことさら引き上げられているのはアクセラの伝統だがこれは好みの領域。サスペンションは伸び側にも余裕があり前が持ち上がるような加速時でもよく追従してタイアが空転しそうな気配はなく、トラクションには余裕がある印象。速いがあぶなげなく、洗練されてもいる。


 ブレーキペダルの踏み応えも最初からカチッとした剛性感があり、足の裏の繊細な感覚によるコントロールにも敏感に反応してくれる。安心感も高い。ペダル、マスターシリンダー、ホース、キャリパーと、いくつもの経路を経る自動車のブレーキは各部の小さな遊びや誤差が増幅されて、踏み応えの甘さとしてドライバーに還ってくる。その点このクルマのブレーキはしっかり作られているとペダルフィーリングから察せられる。



まとめ

 2.3DIGIターボは良く出来ていて、このエンジンが発表された時点ではとてもほめられるべきものだった。しかしそれからある程度の時間を経て世の中の情勢や自動車業界におけるトレンドも変わり、いまや小排気量で大きなパフォーマンスを得る過給エンジンが主流だ。たしかにマツダスピード・アクセラより大排気量のライバルもあるが、ならばそれより小排気量であるこのクルマ、このエンジンは、より一層燃費が良いとか排ガスがクリーンであるとか、何かしらのアドバンテージを示す必要があったのではないだろうか。車体をより小さく、軽く、という別アプローチでのチャレンジだってある。今のままでも常識的で充分良い出来だが、もう少し先読みをきっちりやったほうがいい。ましてやマツダスピード・アクセラを求めるユーザーはクルマに精通していて目が肥えた人たちだから。






 このクルマのルーツとなるファミリアは80年代初頭、オイルショックの逆境をバネに、時代やニーズと真摯に向き合ったクルマ作りが絶大なる支持を受け、モデル末期に至るまで人気を博した。物理的に新しい(年式が新しい)ということより、考え方が新しく攻めの姿勢を貫いたからに他ならない。そうした”魅力”とは、たとえ時を経ようとも色褪せたりはしないものだ。





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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。









前田恵祐


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