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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#033 新世代VWの本丸?

VW ポロ 1.4 コンフォートライン (2009.11)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 概観

 明らかにゴルフ6やシロッコ系の顔。サイズは全長で4メートルを切っているものの、幅は1.685メートルある。かつてのゴルフ2と3のあいだくらいのイメージ。でも本当にもっと小さくしようと努力しなくていいのだろうか。ここまで来るとむしろ小さいことが特徴になると思うのだが。



インテリア



 配色は例によって黒系で落ち着いた雰囲気だが、ところどころに「ひかりモノ」を配しているあたり、やはり昨今のフォルクスワーゲンの文法に則っているなと思う。昔はもっとぶっきらぼうで、ザザっと定規で引いたようなラインに必要充分の機能とインフォメーションがあるだけ、しかしそれがむしろ質実剛健な印象でドイツ車然とした部分だったが、いまやデジタル表示の車両情報ディスプレイやセミオートのエアコンも。




 シートはあまり大きくないが例によって硬めの坐り心地で沈まないし変形もごく少なく、そのガッシリとした印象がドイツ車を印象付ける重要な部分。後述する走り味における概ねの印象から比べると、シートの印象だけが突出してドイツ的。


 スペースについては、「広大」というより「適度」であり、かつてのフォルクスワーゲン車全般に言えた「広く見せたいし、実際広くもしたい」という気持ちはあまりないようだ。後席の座面の高さなども絶妙で後席からの眺めも悪くないし、普通に良く出来ているがこのクルマだからと感激するほどではない。




 身長173cmの筆者がドライバーズシートでポジション取り後の後席




 このあたりはVWらしく効果的にスペースをつくりだしている。ちなみに、二段底。



エンジン/トランスミッション

 ひとまず輸入されたのは今話題のTSIではなくふつうの1.4DOHC。過不足ない走りをするがどちらかというと、より回してあげたほうが喜ぶタイプ。ということはレスポンスの良いDSG7速を積極的にマニュアルシフトしてあげたほうがストレスは少ない。




 走行200kmのおろしたて。故にまだまだ本来の力を発揮できる状態にはなかったかもしれない、それをお含み置き願いたい。




 燃費重視と見えて速いテンポでシフトアップするDSGのプログラミングと、生来のものかこれから成長するか知れぬ低速トルクの薄さが重なって、機敏な走りをしにくい。同時にDレンジでは例によってキックダウンスイッチも鈍いから、低回転、高いギアでスロットルを深く踏むという、むしろ燃費によろしくない状況が生まれる。こんなとき、余裕で引っ張ってくれるTSIならストレスもないだろう。Sレンジでなら回転を上げて走れるがこれはどちらかというとスポーツ走行用。自動シフトダウンも軽快だが不釣合い。DとSの間を採ったプログラムがあるといいのに。また、学習機能が備わるなら、走りこむほどに改善していくのかもしれない。




 驚くのは静粛性。エンジンがかなり遠くで動いているような印象。もちろんエンジンが静かなだけではなしえない、静粛性向上を目的とした全体の設計がなければ、例えばロードノイズが目立ったり風切り音が届いたりするが、全般的に低く抑えられている。



足回り

 電動パワーステアリングは軽い操作力で、同時に手応えも路面からのインフォメーションもややマイルド。ドイツ車らしい骨太な手応えやダイレクトな印象から来る信頼感などを求める向きには物足りないのではないだろうか。




 路面の凹凸やうねりなどには鷹揚とした対応を見せ、しなやかでありフラットな乗り心地、足さばき。それはゴルフクラスでもなしえないような大人びた印象。ガタや振動もすくなく高い工作精度を感じさせるだけでなく、それは充分な剛性を確保していればこそなし得るものでもある。


 静かで快適なのは足回りの印象においても同じ。このあたり、とても洗練されている。むしろ洗練されすぎていていいのか、というくらい。ただし場合によってコツンコツンと小さく突き上げるのはやはりドイツ車。またロールスピードはもうすこしゆっくりのほうが山坂道でより安心だろう。



まとめ

 ちょっと気になるのは二世代前あたりまで感じられた、ポロならではのソリッドな凝縮感がこのクルマからは感じられないこと。良く出来ているしソツなく仕上がっていて誰もが一定の満足感を得ると思うが、ゴルフをそのまま濃縮果汁にしたような”濃さ”や骨太さもまた懐かしい。しかしそれを失う(感じさせない)ということは、このクルマの重要な持ち味をも失わせるということになるんではないかな。エンジンとトランスミッションについては、遠からずTSIエンジンが入るだろうから、それを待ってから決めても遅くはないだろう。個人的にもTSIが登場してからもう一度試してみたい。


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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