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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#038 こちらで十分です

トヨタ SAI S 試乗インプレッション(2009.12)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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概観

 基本的にレクサスHSと同じクルマで細部が異なる。デザイン上も同様であると考えてよさそうだ。トヨタとしてはこれを高級車として売り出したい節もあるようだが、それにしてはちょっと爽やかすぎで若々しすぎやしないかな。これだけ若々しいのに、この値段?、この車格?、といわれてしまいそうなのが気がかりだったが、乗ってみればそれも杞憂とわかる。




 初代プリウスを大きくしたようなシルエットは目新しい物ではないし、キャビンを大きくし前後を短くしたデザインは、実は不評を買ったビスタ・アルデオと同じアイデア。もうすこし新しいアイデアを示してくれても良かった。機械としての出来が良いだけに損をしていると思う。


 ましてや高級乗用車として、やや高い年齢層を狙うというなら、見えないボンネットは明らかなネガである。短いから気にする必要はない、ポールを立てればいい、というわけにもいかんだろうて。



インテリア

 これも、HSを知っていれば姉妹車とすぐにわかる。ただ、HSの操作系がちょっと煩雑で、特にオーディオ類のスイッチが多すぎるのと、ダッシュボードの傾斜の関係でフロントガラス越しの直射日光を受けて、そのスイッチ類が白光りするネガを感じていたが、SAIでは操作系を簡略化し、オーディオ部分にはフタをつけ、その中身はダッシュボードの傾斜より立たせてあり、視認性、操作性を改善。視野がすっきりしていて好感が持てる。




 広さは充分。珍しく設定のある電動ムーンルーフをつけても頭上空間はたっぷりあるし、窓も大きいから室内は明るい。後席も全方向にゆとりがあり、坐り心地の見劣りしないシートもあいまって実用性充分。トランク内部の画像はないが、HS同様ゴルフバッグを4つ飲み込む。





エンジン/トランスミッション

 プリウスのように、何が何でも電気で走らせるぞ、という気負いが無い分素直にエンジンも協力してくれるし、協調制御もまたスムーズ。乗っていて自然な乗り物になっている。その分血眼になって燃費を追求できてはいないというが、とはいってもガソリン車よりずっといいはずだから筆者は走りがよりスムーズになったことのほうが嬉しい。


 レクサスで4気筒エンジンというのには違和感があったが、トヨタブランドでなら自然に受け容れられるのが不思議(まあ個人的に)。しかし、このドライブフィールを含め、ブランド、条件、価格など、すべて丸く収まっている感じがする。



足回り

 ダブルウィッシュボーンを使ってますから、なめらかです、といわれた。まったくトヨタは商売が巧い。ダブルウィッシュボーンでなくても、左右固定のトーションビームでも滑らかだったりしなやかだったりするアシを筆者は知っている。つまりダブルウィッシュボーンは彼らにとって価格増の言い訳、のようなもの・・・うがった見方だろうか。


 それはさておき、多少のセッティングの違いはあるのだろうが、レクサスHSとほぼ同じ印象の足回り。たしかにスムーズでしなやか、まろやか、静か。フラットであり、なかなか上品な走りだ。落ち着いた気持ちで走れる。もちろん、その印象にはパワーユニットの印象も加味されていることは言うまでも無い。プリウスより上質なハイブリッド車、しかしクラウン・ハイブリッドほど高いクルマではない、という位置づけはこの分野でも達成されている。


 ハンドルのシットリとした操作感もいい。グイグイ曲がっていくタイプではないが、ハンドルに伝わる振動が丁寧に取り除かれていて、筆者はまずそこに「高級だな」と思わされた。文字通り、ハンドルを握って初めてわかる。そのかわり、路面が縮緬状に荒れたところを通過するとフロアがピリピリと小さくではあるが震えて、そこでベースがカローラクラスだなと知れる。もう一歩、頑張れるといいのだが。



まとめ

 例えばドアの開閉音にしても、すべてレクサス前提で仕立てられていることがわかる。それがトヨタに降りてくれば、やはりどう考えたってこちらのほうがお買い得だよね、となる。事実値段も安い。たしかに本木目やセミアニリン本革シート、あるいはそのカラーリングなどは選べないが、より身近で、それでいて充分に高級で、仕立ての良いクルマであるという点で、このクルマに好感を抱くユーザーは少なくないはずだ。筆者もその一人である。


 価格的にもちょうどカムリやマークXとバッティングするところにいるが、機械の出来やその先進性などからいって、商品力はどう考えたってこちらのほうが上。トヨタのようなフルラインメーカーにとって、こうして新しい技術や新しい考え方のものを世に問う瞬間というのは、既存の物を一気に古臭くさせてしまうリスクがある。しかしそんなことを言っていられない世の中、トヨタ自動車の飽くなき前進とその意思の表れ、と解釈したい。





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メーカーサイト
http://toyota.jp/sai/


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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