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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#042 まっとうに作れば走りも楽しい

ダイハツ・エッセ 試乗インプレッション(2010.1)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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概観



 車両本体価格77万円~と実際に安いだけでなく、安作りであることを旨としており、無駄な装飾類を省き最小限の装備、設えでありながら、むしろこの姿かたちであることに価値を見出せることにこのクルマの最大の魅力がある。他人とくらべてどうこうではなく、クルマというより雑貨、小物然とした雰囲気。




 試乗車は最上級スポーティグレードの"カスタム"で、スポイラーや14インチアルミホイールなどを備えたもの。本来はもっと下位のグレードでより良さを発揮するクルマだろう。



インテリア



 鉄板むき出し、トリムも最小限。平成初期くらいまでの軽自動車はみなこうだった。これで充分だったし、皆一様に豪華主義に走る中こうした設えのものを今所有することは、逆に潔さを感じさせる。あらゆる"もの"をかなぐり捨てた時に得られるすがすがしさが漂う。




 下駄グルマだがシートのつくりは比較的しっかりとしており、このクラスのものとしては不満が少ない。画像はカスタムのシートでヘッドレスト別体フロントシートだが、標準グレードのハイバック(ヘッドレスト一体)シートのゆったりとしたサイズ、かけ心地もまたいい。完璧ではないが安いなりに頑張っている。




 広さはほどほど。




 ラゲッジもホドホド。



エンジン/トランスミッション

 KF-VE58馬力は先日のタント・エグゼとも同じだが、こちらはより車体が軽くオートマもCVTではなく4段ということもあってダイレクト、またさらにきびきびと走り軽快。そのかわり振動と騒音の対策は、安く、軽くのクルマだからやや手薄。しかし3気筒エンジンのブルブルを感じながら信号待ちをするのもいい。心臓が元気に動いている証拠である。




 効率を重視するならCVTなのだろうが、クルマの今の状態、つまりどれくらい余裕があるのか、あるいは苦しがっているのか、を明瞭に意識しながら行くには有段のほうがいい。



走り/足回り

 比較的四角いスタイル、立ったフロントガラスとシート、そしてボンネットをかろうじて視認しながら、今のクルマにとしては抜群に易しい車幅感覚とともに行く。これだけでも運転に不慣れな人にとって大きなアドバンテージ。




 軽く、小さくつくられた結果、足回りの負担が少ない。限られたストロークを頑張って硬めて支える必要がないからバネをやわらかくすることができ、一言でいうとアシがのびのび仕事をしている。結果、まろやかに乗り越える凹凸、ダイレクトなハンドルと身のこなし、自動車としての走りの機能、反応がきわめて自然で無理がない。運転者との息もぴったり合う。だからトバしても楽しい代物にも仕上がっている。この素晴らしいバランス感覚にはかなり慎重な調整作業があったはずだ。



まとめ

 完全な、"外見より中身"グルマ。いや、外見だっていい。例えばダイハツ製の他の銘柄の価値基準で判断するとモーレツにショボいだけのクルマだが、まず乗り物として基本となる扱い安さは運転者との息のぴったり感で満点だし、ボクのようなマニアが乗っても丁寧に調整された足に深く唸らされたりもする。虚飾を排した潔さにはあれもこれもとアクセサリーにまみれた現代の乗用車に何の意味があるのかと考えさせる。エッセ、なかなか深い。






 あらゆる付加価値を与えクルマ本来の論点からズレがちな現代のクルマにあって、その意味では本流、本質を突いた逸品。ダイハツの良識の塊、といったら言い過ぎだろうか。安いものでも、あるいは、であればこそ、真面目に取り組んで作りこんでくる。それはダイハツ自身が軽自動車という商品に高い可能性を見出し、また強い愛着をもっているからにほかならない。



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。











前田恵祐


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