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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#047 まだこれを買う人がいる

トヨタ クラウンマジェスタ Cタイプ 試乗インプレッション(2010.5)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 トヨタの製品は日本の階級構造に合わせた製品ラインナップをしていると考えるとわかりやすい。たとえば、ヴィッツは新入社員、マークXは部長クラス、クラウンは役員クラス、そしてマジェスタはそれ以上、まぁどちらかというとオーナードライバーの経営者あたりがターゲットになるだろうか。



 エクステリア



 あえてこれ見よがしにせずとも風格や威厳を表現できるようなデザイン。初代から貫かれているコンセプトだ。本当にエラい人というのは、あえてエラそうな態度はとらなくても、そのオーラこそが最大の説得力になるのと同じこと。




 テールのデザインはこのクルマの代々の特徴。




 クジラのように、デカい。



視界・扱いやすさ

 アムラックス周辺の狭い道を走ってみたが、ボンネットが見えようと見えまいと、これだけのサイズ、まして後述するが運転感覚がハンドルも軽く音も振動も極力遮断するというものだから逆に五感が外界まで届かない気がして、つまり細かい、狭いところには向かない。端的にいうと、注意深くなりにくい、あるいは、運転しているという実感を得にくい。ま、それだけ静寂な室内の証でもあるのだが。




 パーキングブレーキのリリースは今流行のべダル二度踏みではなく、手動リリースレバーが別に備わるタイプ。クラウンの系統はこの方式に統一されているが、これは旧型から代々乗り換えているユーザーを考慮してのものと聞いている。




 左ドアミラー、ちょっと手前過ぎる気がする。意識的に振り向かないと視野に入らない。



インテリア

 都会的、とか、洗練、ということより、威厳、荘厳、格調、などが大事にされている。明らかに高い年齢層を意識した仕立てになっている。たとえばモケットの選び方も、より厚手のものでフカフカした手触り。革もあるがモケットのほうがこのクルマらしいと思う。




 大きく幅のある前席。平社員や部長クラスの坐るイスとは明らかに異なるこの落ち着き。坐っただけでエラい人になった気分になる。肘掛けの高さも絶妙。各部に使用されている木目は本木目でニスは敢えて厚塗りしておらず木の風合いを感じさせる仕上げ。




 運転手つきで使用されることも多いのだろうが、徹頭徹尾後席重視というわけではないと、センチュリーを知るとわかる。あくまでもドライバーが主役なのではないだろうか。クラウン・ロイヤルより75mm拡大されたホイールベースを持つが、居住空間としてマジェスタの後席は飛びぬけて広いわけではない。




 運転席は筆者のポジション。




 奥行きたっぷり。



エンジン・トランスミッション

 4.6リッターV8エンジンはレクサスLSなどと同じもの。しかし元がクラウンであるこのクルマのシャシにレクサスと同じエンジンを載せたところで同じ走りになるかというとそうではないだろう。端的にいうとあちら(レクサスLS)の方が器がずっと大きい感じ。それは剛性の問題もあるだろうし、振動や騒音の対策にしても骨格の部分からお金のかかり方が違うだろうて。




 とはいえエンジン単体はとても良くて、素性の良いV8エンジンらしくよどみなく綺麗に回転が上がる。馬力も有り余るくらいあるからセダンばかりに載せておくのは勿体無い。8段もあるオートマチック、各ギアのステップが小さいからシフトアップ、ダウン時のショックが元来軽く済むとはいえ、切れ目のわかりにくいシームレスな変速動作は見事である。



足廻り

 乗っていて懐かしくなった。静かな室内、ダンピングの効いた柔らかい乗り心地に鷹揚とした立ち振舞い。安楽であることを最重点項目とした仕立て。エアサスではあるが制御技術は進んでおり、昔のように路面の煽りを受けてピッチングを反復するようなこともなく、適度な余韻を残すだけで綺麗に収める。印象を一言で言うと雲の上をいくこころ持ち。しかし、路面から一定以上の入力を受けるとサブフレームがブルンと揺れてそれがハンドルに伝わるのが気になった。察するにブッシュ類のコンプライアンスを大きめに取って振動や音、キックバックを吸収しようという考え方が見て取れるが、"今"のスポーティなクラウンと同じシャシを用いながら味付けの方向性は大きく異なり古典的。




 旧セルシオの抜けた穴は大きいという声が聞かれる中、トヨタブランドの事実上の最上級機種として、走りの味付けもやや前時代的。これでよかったのかな、率直にそう思ったし、でも敢えてこうしているんだろうなとも思える。



総評

 日本の階級社会に沿った商品ラインナップはトヨタのポリシーだからこのクルマを確実に買っていく層があるということ。それにしても、そういう人たちはずいぶんと保守的なんだろうな、と、このクルマを通じて想像できてしまう。内装の仕立てや足回りの設定、走り味、すべてが保守的。これを買う人の次の世代が今のクラウンのような、若々しくスポーティなものを求めているということとのギャップも大きい。それが今の日本なのだろうし、また、今後マジェスタがどういうクルマになっていくのか、"日本"を知る一要素として興味深い。






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試乗データ

試乗日:2010年4月20日
試乗車:クラウン・マジェスタ・Cタイプ
年式:平成21年
型式:DBA-URS206
駆動方式:FR
全長×全幅×全高:4995×1810×1475mm
ホイールベース:2925mm
車両重量:1770kg
トランスミッション:スーパーインテリジェント8速オートマチック "8 Super ECT"
ボディタイプ:3ボックスサルーン
ボディ色:シルバーメタリック
内装色:シェル



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メーカーサイト
http://toyota.jp/crownmajesta/


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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