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前田恵祐は2018年5月18日、闘病の末この世を去りました。 故人の意思を尊重し、ブロクは閉じずにそのまま残すこととしました。 以前からの読者の方、初めてブログに訪れてくださった方もこれまでの記事をご覧にっていただけるとありがたく存じます。(遺族一同) 当ブログのURLリンク、内容、文章等を、他のwebサイト、SNS、掲示板等へ貼り付け拡散する行為、印字して配布する行為は、いかなる場合も禁止事項として固くお断りいたします。

#051 ジャガーにしか出来ない事をやってほしい

ジャガーXJ LUXURY 試乗インプレッション(2010.6)

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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 近代ジャガーを代表する高級サルーン。この最新型は4代目でこの5月に発売開始予定だったがアイスランドの火山噴火による影響で6月19日に延期となった。発売前の貴重なデモカーで最新のXJを確かめてきた。



 エクステリア

 過去と決別する決意を感じさせる新しいいでたち。伸びやかなグリーンハウス(サイドガラス部分)とルーフライン、短いテールなど、これまでが頑なに忠実なセダンであろうとしていたものが、ある角度からはスポーツカーのように、ある角度からはハッチバックのようにも見える。とても都会的で洗練されたデザイン。長い歴史を持つクルマのアイデンティティをどうしていくかは、誰もが直面する問題のようだが、自ら変わるのだという意思を強く感じさせた。




 ライバルは、クワトロポルテ、あるいはパナメーラも視野に入るか。




 とてもモダン。



視界・扱いやすさ


 全長5メートルを超え、全幅1.9メートル、ホイールベースも3メートル以上。非常に大きなクルマだが数値を確認して後から驚くほど実際には大きさを感じない。少しだけボンネットが見えて前端が想像しやすいのが効いている。




 ダッシュボードの形状からも開放感があり、視界が開けている。後方視界は目視では良好とはいえないものの、実質リアウインドウ下端からボディ後端までが短い点で有利。総じて大きい割には扱いやすい。




 そうそう、あのダイアル式シフトセレクター、わたしは気に入りました。以前から続く電気式駐車ブレーキの操作感も含めてスマートでたいへんよろしい。怖いのは故障だけ。



インテリア




 XJのインテリアは元来横方向に広く薄べったい独特の容積だったが、今回は明らかに違って縦横比がやや縦に大きい感じ。ジャガーの高級感の良いところとは、確かに高級な素材や仕立てでありながら、その実あまり”これみよがし”になっていない、まとめのうまさ、適度な抑制が効いているところだったが、このクルマのインテリアはジャガーらしく木と革に囲まれてはいるもののエクステリア同様前衛的でスポーティ。




 前席のサイズはたっぷりしている。全体的に硬めでレザーも滑りにくく仕上げてある。昔はサイズそのものが小さめで繊細な印象があった。ま、それも今や昔。




 後席の広さは充分ではあるがこのサイズにして広大ともいえない。それはこのクルマがあくまでもドライバーズカーでありパーソナルカーであることが大きく作用していると思う。歴代共通している。ヘッドルームは、意外といってはなんだがこう見えて余裕がある。




 そういうわけなので、トランクも、外寸にしてはほどほど。容積重視ではない。



エンジン・トランスミッション


 5リッター直噴V8エンジン。V8は独特の鼓動を発して、それがどうしても低音域のものだから、ジャガーらしい繊細さや上品さからはややかけ離れてしまうのが残念。いちおう滑らかでシャープなレスポンス。このセグメント、皆判で押したように5リッター内外のV8を積んでおり激戦区。




 オートマチックの段数は今は6で、それをさも意味があることのように説明を受けたが、そのうち増えるんじゃないだろうか。といって今このままで走行感覚上の不満はなし。



足廻り


 アルミボディが伝える走行振動や突き上げは角が丸められ、これが独特のアジ。基本的にはガッシリと芯があり、足回りの動作精度も高く確実に路面を捉えるが、重く大きいから、元来の魅力であったスポーティとか軽快だとかの印象は薄いし、同時にあった優しくしなやかな魅力も影を潜める。悪くはないが、ちょっとありてい。




 太いタイアに剛性の高い電子制御サスペンション。その可変機能をもって走行感覚を任意で選択することもできたりするが、といって、これらも皆がやっていること。今の時代であればこそ、元通りコンベンショナルに、あるいはアコースティックに、伝統芸を披露したほうがファンには喜ばれないかしら。伝統芸に聞こえる電子楽器、のようなものでもいい。自ら変わろうとしても変えない部分は変えない、というメリハリも大事。とにかくジャガーにしか出来ないことをやってほしい。



総評


 とても挑戦的なクルマだなとは感じた。あらゆる面でこれまでの殻を破ることを目的としている。それは昨今にわかに活況を呈しているプレステージサルーンのマーケットを睨んでのものであることに疑いの余地はない。しかしマーケットありきではなく、わが道を行く意思の強さもときに人を惹き付けるものである。でなければ、大金をはたいて単にジャガーのブランド名とバッジを買うだけのことになってしまいかねない。




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試乗データ

試乗日:2010年6月10日
試乗車:ジャガーXJ  LUXURY /車両本体価格10,000,000円
年式:平成22年
型式:CBA-J12LA
駆動方式:FR
全長×全幅×全高:5135×1900×1455mm
ホイールベース:3030mm
車両重量:1850kg
トランスミッション:6速AT/パドルシフト付
ボディタイプ:3ボックス4ドアサルーン
タイア:前245/45ZR19[102Y]Extra Load
    後275/40ZR19[105Y]Extra Load
    共にダンロップSP SPORT MAXX GT



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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。










前田恵祐


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