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#052 ロックンロールな街乗りSUV

日産 ジューク 試乗インプレッション(2010.7)
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この試乗記は個人的な印象記です
捉え方や感じ方には個人差があります
ご自身で乗ってお確かめください



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 話題の日産ジューク。目を惹くデザインに新しい技術、また見かけによらずまじめなところもあるらしい。斬新さの中にはいったいどんな乗り味を秘めているのかを確かめてきた。



■ エクステリア



 大胆な造形も効果的にシェイプされシャープさもある。磨きぬかれたアスリートの肉体のようであり、野生動物のような迫力もあり、顔は主前照灯はどれなんだろうと思っていたらやっぱり中段の丸目だったりして、ユニークでもある。最近のカーデザインの文法を否定し、つり目で睨み付けるという表情とは真反対のファニーな表情。カッコいいのに威張っていないのも、じつは凄いこと。




 本当に不思議な魅力を持ったデザイン。捉え方も様々だろうし、だからこそ幅広い層に受け入れられる。一ついえることは、スタイリッシュだが媚びておらず一本筋が通っており、ポリシーがあるということ。モノのわかった大人にも充分に訴えられるものがあるはずだ。実際に聞いた話として、若い人はもちろん、60歳代で長年乗った輸入車から乗り換える人もあったという。そのことがこのクルマの持ち味を示している。




 細かいところまで手抜きがなく行き届いているあたりが日産デザインの魅力。いろんなカラーに塗ってみたい。キューブやマーチのようにカタログ色にない限定車などを出すと面白そう。デミオのスピリテッドグリーンのような色など、個人的にいいなと思う。こうして色々考えさせる楽しささえ秘めているクルマだ。




 リアデザインはヨーロッパの香り。



視界・扱いやすさ



 運転席からボンネットを視認でき、車幅感覚を捉えやすく、小回りも利く。ましてや視点も高めで見晴らしにも優れ、運転がやさしい。若造っぽいナリをしているが実はとっつきやすく、日が浅く不慣れな人のみならず、車幅感覚に自信の無くなり始めた年齢層の方々にも。実に巧み。助手席側アンダーミラーはドアミラー下部にスマートにまとめられ、また同時にこれの機能性が高く、「使える視界」を提供する。路上駐車時などの幅寄せにも有効で、ますます巧い。




 ダッシュボードは柔らかなラインで描かれており、周囲のデザインは凝っているがメーターの文字盤はシンプルで、同時に即読性にも優れ機能的。 



インテリア



 ダッシュボードもいいが、このクルマのインテリアのハイライトはセンタートンネル、コンソールのデザイン。どうということはない、艶のある塗装仕上げでバイクのタンクを連想させるデザインを施したに過ぎないが存在感もあり、大きな特徴になっている。




 シートサイズは平均的だがかけ心地は硬め。それでいて腰から尻にかけての支えがやや甘いところが気になった。硬軟のバランスのとりかたの問題だと思う。後述する足回りの設定から見ても、シートは全体的に柔らかくしてハーシュネスを吸収してくれたほうがいいかなという気もする。キューブやティアナのようにルノーを思わせるしなやかさがあってもいい。空間は適度にタイトでこのクルマがパーソナルユースを目的としていることを意味する。広さはこれでいい。なんでもかんでも広ければいいってもんじゃないのだ。




 後席重視ではないクルマなので、これで充分。やはりファミリーカーというよりパーソナルカー。例えば、これで後席を重視してプロポーションが崩れたりすればそれはいかにも"無粋なまね"である。




 ラゲッジスペースもこの内外デザイン、サイズ、キャラクターからして、これまた妥当、充分。



エンジン・トランスミッション

 HR15エンジンはデュアルインジェクター仕様となり、よりきめ細かなエンジン制御、主にクリーン化、省燃費化、ドライバビリティへの寄与などの進化が遂げられたとされている。以前から静かで滑らか、というより存在感を消して黙々といい仕事をするタイプだったが、それは不変。必要充分だがこのクルマにとってパワフルなまでの馬力は持たない。モアパワーを希望するならそこはそれ秋に追加される直噴ターボ待ち。クルマ全体のキャラクターからしてももっと馬力があっていい気はした。この点同じノンターボなら1.8を積むRVRの方に当然ながら余裕を感じる。




 トランスミッションは新しい副変速機付CVT。なにゆえいまさら副変速機なのか。せっかくの無段変速機なのにギアチェンジが起こるのはイマイチ腑に落ちない。事実アクセル開度が大きくなるとキックダウンが起こる。なぜその動作が必要なのかまったく理解できない。元来CVTとは無駄にエンジン回転を上げ下げしないための仕組みなのだ。といって、普通に走ってギクシャクしたり不快ということではなく、これはワタシの頭のなかの疑問。




 ドライブモードコントロールは今流行の仕掛けで、他社でも見かけるものだが、明確に印象が異なるのはECOモードで明らかにアクセルに対する反応は穏やかになる。それ以外の差は小さいと感じた。市街地や山岳路ではNOMALやSPORT、高速や一定速のクルージングならECOで燃費を稼ぐという使い方か。



足廻り



 オプションの17インチタイアを得ている試乗車の乗り心地は引き締まった硬さ。クルマの性格から見てもリーズナブル。スポーティで悪くはないがこのクルマに興味を持っているのが決して若い人ばかりではないと考えるともう少しマイルドでもいいかな。硬いわりにハンドルのレスポンスはあまりシャープでなく、むしろ意外なほど穏やか。路面の情報も積極的に伝えようとする感じではない。元来車体が短いから生まれつきの軽快感はあるがそれでもハンドル単体のダイレクトさはもう少し磨きたい。



結論

 野心的でいて綺麗にまとめ上げて美しく、ファニーでもある。これだけアクが強いのにファン層が広いというのがこのデザインの優秀性の高さだ。しかもデザインが運転のしやすさを考慮してもいて、様々な好みや要求を両得している。




 直噴ターボに乗ってみたいと思わせたり、足回りやハンドルの設定に個人的な注文があったりはするが、それは大した問題ではない。所有することで生活観が一変しそう(実際問題は別として、そういう予感をさせることが重要)な、新しく軽快なキャラクター。カテゴリとしてはコンパクトSUVになるのだろうが、今にあっては希少な、所帯染みたところのない生粋のパーソナルカーであり、このクルマを通じて自分自身を表現したい人、できる人、友達をちょっと驚かせたい人に。また、見る者にとっては乗り手がどんな感覚の人なんだろうとも思わせる、そんな想像力さえかき立てる、魅力あふれる一台だ。



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総合評価/★★★★★




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試乗データ

試乗日:2010年7月1日
試乗車:日産ジューク 15RX 2WD(車両本体価格:1,790,250円、OP別)
型式:DBA-YF15
駆動方式:FF
全長×全幅×全高:4135×1765×1565mm
ホイールベース:2530mm
車両重量:1170kg
トランスミッション:エクストロニックCVT
ボディタイプ:5ドアSUV
ボディ色:サファイアブラック(P)<#B20>
内装色:レッド<R>
装着されていたオプション:
 17インチアルミホイール+215/55R17 94Vタイア(84,000円)
 インテリジェントキー+イモビライザー+エンジンスタータ(63,000円)
 フロントフォグランプ(33,390円)
 センターアームレストコンソール(32,700円)
 フロアカーペット(23,100円)



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メーカーサイト
http://www2.nissan.co.jp/JUKE/


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ご留意ください
この試乗記は貴方の試乗を代行するものではありません。
感じ方や考え方には個人差があります。
また、製品は予告なく改良される場合があり、
文中にある評価がそのまま当てはまらない場合もあります。
購入前にはぜひご自分で試乗をしてよくお確かめください。








前田恵祐


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